生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1260.シュリくんの力

 ギュームさんも納得して落ち着いた事だしと、俺はずっと気になってた事を尋ねる事にした。

「シュリくんはさ、クレットさんが…見えてたんだよね?」
「うん、ずっとみえてたし、こえもきこえてるよ」

 あっさりと頷きつつ答えてくれたシュリくんに、クレットさんはハッとした顔で口を開いた。

「こちらを見ている気がするとは思っていましたが、私の声も聞こえているんですね。ご挨拶が遅れてすみません。はじめまして。ここの領の元騎士、クレットと申します」
「はじめまして。クレットはアキトがくるまでは、しゃべってなかったからね。ぼくはシュリだよ」
「よろしくお願いします」
「うたがってごめんね。こちらこそよろしく」
「いえ、お気になさらずに」

 俺が通訳に入らなくても普通にクレットさんと話せてるみたいだし、本当にシュリくんも見えるし聞こえるんだ。

 俺は感心しながらクレットさんとシュリくんの会話を見てたんだけど、ギュームさんとキースくんは不思議そうな表情でシュリくんを見つめている。

 そっか、二人から見ると、シュリくんが突然話しだしたように見えるんだよね。俺は慌てて、いまクレットさんが自己紹介をしてたんだよと教えておいた。

「それにしても、まさかシュリくんが俺と同じように見えて聞こえる人だとは思わなかったよ」
「アキトがそうだとは、ぼくもおもわなかったよ」

 普通は相手も幽霊が見えて聞こえる人なのかも――なんて考えないもんね。

 俺がそれもそうだなと頷いていると、ギュームさんが答えられるならで良いのですがと前置きをしてから尋ねた。

「シュリ様のように人の言葉が話せるウマ様には、みんなそういう能力があるんですか?」
「ううん。ひとのことばがはなせるかは、かんけいないよ。うまのなかにはね、たまにそういうちからがあるこが、うまれるんだ」

 ただ幽霊が見えるだけって馬もいれば、幽霊の姿が見えて声まで聞こえるという馬もいるらしい。シュリくんは後者だね。

 でもそっか、そういう馬も普通にいるんだ。何だか、勝手に親近感が湧いちゃうな。余計に馬の事を好きになりそうだ。

「しかもシュリくんは人の言葉が話せるから、幽霊ともお話できるって事だよね?」

 ワクワクした様子のキースくんの質問に、シュリくんはうんと頷いた。

「はなせるけど、じつはあんまりはなしたことはないんだ」
「え、そうなの?すごい力なのに」
「うん、クレットみたいなおちついたひとならいいけど、かいわにならないひともいるから」

 あー…うん。ひたすらブツブツ何かを言ってるだけの幽霊とか、一方的にずーっと話し続けてる幽霊とかもいるもんね。思わず分かると頷いてしまった。

「そもそもおうきゅうには、あんまりいないんだけどね」

 ああ、そうか。攫われてくるまでは、シュリくんの世界はその王宮だけだったんだもんね。そう言われると納得だ。

「シュリ様、教えてくださりありがとうございます。この事は誰にも言いませんので」
「うん、ギュームの事はしんじてるからだいじょうぶ」

 シュリくんの中で、いつの間にかギュームさんの株が急上昇してるね。あれだけ気配りをしてくれる相手だから無理も無いか。

 キースくんはと視線を向けてみれば、ニコニコ笑顔を浮かべていた。

「クレットの事は、僕もちゃんと覚えてるよ。目が合うとにっこり笑ってくれてね。優しくて良い人だった」

 なるほど。目が合うと笑ってくれるっていうのは、俺も何度かしてもらったから分かる。クレットさんは生粋の騎士って感じの格好良い人なのに、笑うと雰囲気が柔らかくなるんだよね。

「まさかキース様まで覚えていて下さるとは…とても光栄です」

 感極まった様子のクレットさんの言葉を伝えると、キースくんは僕の事も覚えててくれてありがとうと笑顔をみせた。

 ううん、キースくんの可愛さが留まる所を知らない。

 クレットさんも俺と同意見だったのか幸せそうに笑みを浮かべていたし、ギュームさんは微笑ましそうにキースくんを見ていた。

「あ、そういえば、クレットはなんでここにきたの?」
「庭の花を楽しんでいたら、キース様が楽しそうにぴょんぴょんと跳ねるようにして厩舎に向かっていたので…気になってつい」

 少し申し訳なさそうな表情でそう答えたクレットさんだったけど、シュリくんはそれはついていきたくもなるよねと真剣な声で同意を返した。

 もしかして何か楽しい事でもあるのかなって思うから、自分なら絶対についていく。

 そう力強く断言するシュリくんのあまりの可愛さに、ついつい笑ってしまった。
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