生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1263.三人と一頭の会話

 ギュームさんは勢いよく飛び出して行ってしまったわけだけど、俺達はその後もそのままこの部屋でのんびりと話しを続ける事にした。

 キースくんももっとシュリくんと話したいと言ってたし、クレットさんも微笑ましそうに二人のやりとりを見てたからね。俺も一人でハルの帰りを待つより、みんなでいた方が楽しい。

 厩舎にはシュリくんに魔力をあげに頻繁に来てるからね。厩舎内では自由に過ごしてもらって問題ないですって、はっきり言われてるんだよね。だから堂々とこの部屋にいれるってのもある。

 そこまで考えた所で、俺は今日の分の魔力をまだ渡してない事に気が付いた。

「シュリくん、魔力はいる?」

 かなり唐突な質問だったけど、シュリくんはすぐに答えてくれた。

「あ、ほしいなーちょっとお腹空いてる」
「分かった、ちょっとだけ待ってね」

 いそいそと魔力を練って用意をしていく俺の姿を、キースくんは慣れた様子で、クレットさんは興味深そうに眺めている。

「はい、どうぞ」
「ありがと」

 シュリくんはお礼を言うと、嬉しそうに俺の魔力を吸収し始めた。毎日やってる事だから、お互いに慣れたものだ。

「アキト様の魔力はすごいですね」

 感心した様子のクレットさんに、不意打ちでそう褒められてしまった。

 なんでも騎士団にも馬に魔力を与えるのが得意だという騎士さんが一人いたらしいけど、その人はもっとずっと時間をかけて練り上げないと吸収してもらえなかったそうだ。

 んー、それは単純に吸収する馬の好みの問題とかじゃないかな?

 俺がすごいんじゃなくて、シュリくんが好き嫌いが少ない良い子なだけじゃない?その馬がすっごくグルメで魔力にこだわりがあったとか。

 そう思って尋ねてみたけど、シュリくんにそれは違うと言われてしまった。

「うまはみんな、まりょくのこさにもうるさいんだよ?」
「濃さ?」
「うん、うすいまりょくはあじがぼやけるんだー」

 だから濃いのが好きなのと、シュリくんは教えてくれる。

「ああ、なるほど、だからあいつの魔力はしっかり練り上げないと吸収して貰えなかったのか…」

 クレットさんはそれだけの説明で、納得したようで頷いている。

「つまりアキト様は、時間をかけて練ったのと同じぐらいの魔力をさっきの一瞬で練り上げているって事ですから、すごいですよ。魔力操作が上手いんですね」

 キラキラした目をしながら笑顔を浮かべたクレットさんに手放しで褒められた俺は、あ、ありがとうと答えた。というかそれ以外に何も言えなかったよね。ここまで真正面から褒められる事って…ハル以外にはあんまり無いからさ。

 嬉しいけど、ちょっと照れる。

「ありがと、アキト、ほんとうにおいしかったよ」
「そう?それなら良かったよ」



 俺達の会話は穏やかに、けれど絶えず続いていった。

 最初はクレットさんに話しかけて良いのかなって感じだったキースくんも、気づけば普通に俺やシュリくんを間に挟んであれこれと話し込んでいる。

 シュリくんはクレットはおもしろいねと何度も言ってたから、どうやらクレットさんをかなり気に入ったみたいだ。

 話題は庭に植えられている珍しい植物だったり、最近見かけた鳥や動物だったり、ダンジョン内で取れる素材の話たったりと色々だった。

 夢中になって話し込んでいると、不意にドアがノックされた。

 来た人が誰かまでは分からないけれど、人の言葉を話せる事を今もギュームさん以外には隠しているシュリくんはそっと口を閉じた。

 少しだけ緊張しながらみんなでドアを注視していると、そこからひょこっと顔を出したのはハルだった。

「あ、ハル兄!」

 キースくんの声に、おじゃましますと答えたハルはすぐに中に入ってドアを閉めた。

「やっぱりここにいたんだな、アキト」
「ハル。おかえり」
「ああ、ただいま」

 座っている俺に静かに近づいてきたハルは、愛おしそうに目を細めながら優しく俺の頭を撫でた。

 みんなが見てる前で頭を撫でられるのは、ちょっとだけ…いやかなり恥ずかしい。でもそれ以上に嬉しい事だから、やめてとは言わないんだけどさ。
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