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1264.魔法が得意な
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「ハルも座って?」
なでなでがひと段落した所で、俺はギュームさんが座っていた空いた席をハルに勧めた。うーん、人前だから恥ずかしいけど嬉しいって思ってるの、たぶんハルにはバレてるよね。すごく微笑ましそうに目を細めて笑われてしまった。
「ハル兄、こっちだよ」
キースくんの声かけのおかげで、ハルもすぐに移動してくれたんだけどね。
「アキトもキースもありがとう。じゃあ、座らせてもらうよ」
すっと腰を下ろしたハルは、室内をぐるりと見ましてから口を開いた。
「あれ、そういえば…ギュームは?てっきりここにいると思ってたんだけど…」
「えっと、一時間ぐらい前までは、たしかにギュームさんもいたんだけどね」
「何か急用でも入った?」
ハルの何気ない調子の質問に、最初に答えたのはシュリくんだった。
「ぼくいがいにも、とうぞくにつかまってたうまはいたんだけど…。みんなはもりににげたっておしえたんだ」
シュリくんがそうしたらと言葉を続けるよりも前に、ハルが苦笑しながら答える。
「あー…なるほど。それでそのウマたちを保護したいって、飛び出して行ったんだな?」
「よくわかったね」
「まあ、ギュームだからな。森に行く準備はきちんとしてから行ったんだろうか…?」
心配そうに呟いたハルの表情から、普段のギュームさんの行動を察してしまったよね。
「えっと、クレットさんが、きっちり持ち物を用意してからいけって言ってくれたから、ここで荷物をチェックして自室に寄ってから行くって言ってたよ」
「それなら安心か、さすがクレットだな」
「いえ、あのギュームですからね」
うんうんと頷き合う二人の表情はかなり真剣だ。ギュームさんは、二人に好かれてるんだな。俺もギュームさんの事は、同じ馬好き仲間としても人としても好きだけどね。
「…あ、荷物はそれで良いとして、まさか…一人で森に向かったわけじゃないよな?」
どうやらハルは、次は単独行動がどうかが、気になってきたらしい。
何というかハルの行動が、ちょっと弟の心配をする兄っぽいな。ギュームさんの方がハルよりも年上だと思うんだけどさ。
「それは大丈夫です。アキト様が一人での行動はやめるように止めてくれましたし、キース様も一人で行くのは危ないと言って説得してくれましたから」
クレットさんの説明に、ハルはそうなのかとぽそりと呟いた。
「いますぐ飛び出していきそうに思えたからね」
「二人が言ってなかったら、そのまま一人で飛び出してただろうな。まあギュームの魔法の腕は信頼できるんだが…」
「ハルが信頼できるっていうぐらいすごいんだ?」
シュリくんが見つめる先にいるのは、姿を隠した侵入者かもしれない。そう思ったギュームさんがとった、あの一瞬の行動は今思えばたしかにすごかったけどね。
俺が思った通り、あれはやっぱり魔法を放つための姿勢だったんだな。
「ああ。本当なら魔法を使える騎士だけを集めた隊に配属されるはずだった人だからね、ギュームは」
「え、そうなの?」
驚きの声をあげたのは俺じゃなくて、キースくんだ。
騎士団の隊の構成には、俺は特に詳しくないからね。せいぜいが、へー魔法を使える騎士だけを集めた隊なんてものがあるんだ――って思ったぐらいだ。
「あのね、アキトくん。そこの隊って、魔法が得意な騎士ならみんな入隊を希望するってぐらい人気のある隊なんだよ?」
「へーそうなんだ!教えてくれてありがとう、キースくん」
俺が理解できてない事に一瞬で気付いてきちんと説明してくれるとか、キースくんはやっぱり優しい子だ。
「あ…えっと…どういたしまして」
照れくさそうに笑ったキースくんは、ハルに視線を戻すと尋ねた。
「ハル兄、ぼくはギュームから魔法が得意だなんて聞いた事がないんだけど…本当に?」
「まあ、自分で誰かに言って回ってはいないだろうな」
「ええ、知ってる人だけが知ってるって感じですからね」
「なんでギュームは、その隊に配属されなかったの?」
不思議そうに首を傾げたキースくんは、直球でそう尋ねた。俺も理由は気になるとじっと見つめて答えを待つ。
「あー…なんで…か…」
「えー…何故と言われると…」
そこで言葉を詰まらせたハルとクレットさんは、二人で視線を合わせると苦笑いを浮かべた。
「ギュームがウマ好きすぎて、厩舎の使用人になりたいって主張したからだな」
「あの時は、驚きましたね」
「結局、領主城にいざという時に戦える人がいるのは良い事だと、認められて使用人になったんだけどな」
理由は馬のためだったらしい。ギュームさんはどこまでもぶれない人だな。
なでなでがひと段落した所で、俺はギュームさんが座っていた空いた席をハルに勧めた。うーん、人前だから恥ずかしいけど嬉しいって思ってるの、たぶんハルにはバレてるよね。すごく微笑ましそうに目を細めて笑われてしまった。
「ハル兄、こっちだよ」
キースくんの声かけのおかげで、ハルもすぐに移動してくれたんだけどね。
「アキトもキースもありがとう。じゃあ、座らせてもらうよ」
すっと腰を下ろしたハルは、室内をぐるりと見ましてから口を開いた。
「あれ、そういえば…ギュームは?てっきりここにいると思ってたんだけど…」
「えっと、一時間ぐらい前までは、たしかにギュームさんもいたんだけどね」
「何か急用でも入った?」
ハルの何気ない調子の質問に、最初に答えたのはシュリくんだった。
「ぼくいがいにも、とうぞくにつかまってたうまはいたんだけど…。みんなはもりににげたっておしえたんだ」
シュリくんがそうしたらと言葉を続けるよりも前に、ハルが苦笑しながら答える。
「あー…なるほど。それでそのウマたちを保護したいって、飛び出して行ったんだな?」
「よくわかったね」
「まあ、ギュームだからな。森に行く準備はきちんとしてから行ったんだろうか…?」
心配そうに呟いたハルの表情から、普段のギュームさんの行動を察してしまったよね。
「えっと、クレットさんが、きっちり持ち物を用意してからいけって言ってくれたから、ここで荷物をチェックして自室に寄ってから行くって言ってたよ」
「それなら安心か、さすがクレットだな」
「いえ、あのギュームですからね」
うんうんと頷き合う二人の表情はかなり真剣だ。ギュームさんは、二人に好かれてるんだな。俺もギュームさんの事は、同じ馬好き仲間としても人としても好きだけどね。
「…あ、荷物はそれで良いとして、まさか…一人で森に向かったわけじゃないよな?」
どうやらハルは、次は単独行動がどうかが、気になってきたらしい。
何というかハルの行動が、ちょっと弟の心配をする兄っぽいな。ギュームさんの方がハルよりも年上だと思うんだけどさ。
「それは大丈夫です。アキト様が一人での行動はやめるように止めてくれましたし、キース様も一人で行くのは危ないと言って説得してくれましたから」
クレットさんの説明に、ハルはそうなのかとぽそりと呟いた。
「いますぐ飛び出していきそうに思えたからね」
「二人が言ってなかったら、そのまま一人で飛び出してただろうな。まあギュームの魔法の腕は信頼できるんだが…」
「ハルが信頼できるっていうぐらいすごいんだ?」
シュリくんが見つめる先にいるのは、姿を隠した侵入者かもしれない。そう思ったギュームさんがとった、あの一瞬の行動は今思えばたしかにすごかったけどね。
俺が思った通り、あれはやっぱり魔法を放つための姿勢だったんだな。
「ああ。本当なら魔法を使える騎士だけを集めた隊に配属されるはずだった人だからね、ギュームは」
「え、そうなの?」
驚きの声をあげたのは俺じゃなくて、キースくんだ。
騎士団の隊の構成には、俺は特に詳しくないからね。せいぜいが、へー魔法を使える騎士だけを集めた隊なんてものがあるんだ――って思ったぐらいだ。
「あのね、アキトくん。そこの隊って、魔法が得意な騎士ならみんな入隊を希望するってぐらい人気のある隊なんだよ?」
「へーそうなんだ!教えてくれてありがとう、キースくん」
俺が理解できてない事に一瞬で気付いてきちんと説明してくれるとか、キースくんはやっぱり優しい子だ。
「あ…えっと…どういたしまして」
照れくさそうに笑ったキースくんは、ハルに視線を戻すと尋ねた。
「ハル兄、ぼくはギュームから魔法が得意だなんて聞いた事がないんだけど…本当に?」
「まあ、自分で誰かに言って回ってはいないだろうな」
「ええ、知ってる人だけが知ってるって感じですからね」
「なんでギュームは、その隊に配属されなかったの?」
不思議そうに首を傾げたキースくんは、直球でそう尋ねた。俺も理由は気になるとじっと見つめて答えを待つ。
「あー…なんで…か…」
「えー…何故と言われると…」
そこで言葉を詰まらせたハルとクレットさんは、二人で視線を合わせると苦笑いを浮かべた。
「ギュームがウマ好きすぎて、厩舎の使用人になりたいって主張したからだな」
「あの時は、驚きましたね」
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