生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1265.視線

 ギュームさんの馬好きっぷりを知ってる人なら、誰もが納得できてしまう理由だな。

 ちらりと視線を向けたキースくんもなるほどって頷いてるし、シュリくんはギュームらしいよねと楽しそうだ。俺もさすがギュームさんとは思ったけど、すぐに納得できちゃったもんな。

 そんな事を考えていると、不意にハルが口を開いた。

「さっきからずっと気になっていたんだが…シュリ」
「ん?なに?」
「さっきからずっとクレットの話した事を、キースに伝えてくれてたよな?」

 ああ、そうだった。さっきからずっとシュリくんが通訳をしてくれてたんだよね。誰も何も言ってないのに、ハルはそれにしっかり気付いていたみたいだ。

「シュリも、俺やアキトと同じように幽霊の声が聞こえるのか?」
「うん、きこえるし…クレットのすがたもみえてるよ」

 あっさりとそう答えたシュリくんに、ハルはやっぱりそうなのかとぼそりと呟いた。

 シュリくんは、ハルのためだけに、さっき俺達にもしてくれた説明を繰り返してくれた。人の言葉が話せる話せないには関係なく、馬のなかにはそういう馬もいるんだと。

「へぇ、幽霊の姿が見えて声が聞こえるウマもいるんだな」

 さすがのハルも、この話には驚いたようで大きく目を見開いている。本気で驚いてる顔はちょっと珍しいな。ハルは物知りだから、そうそう驚かないんだよね。

「…そういえば、もの言いたげに一点を見つめているウマがいたな…」

 どうやらトライプール騎士団で世話をしているウマの中に、思い当るウマがいたみたいだ。

 騎手の指示にはすぐに従ってくれるウマなのに、ある時だけはじっと近くの木を見つめて動かなかったんだと教えてくれた。

「それはたぶんみえてたんだろうね」
「シュリもそう思うか?」
「うん、きっとそうだよ」
「あの頃は俺も幽霊が見えていなかったから、魔物の気配でもしたのかと思ってそのまま流したんだ」
「それはしかたないよ」
 見えない人は気付けないから、それで良いんだよとシュリくんは優しくハルに答えた。

「俺が幽霊の時は騎士団の厩舎には行かなかったからな。クレットは、どうだ?ウマからの視線を感じると思った事はあったか?」

 興味深そうにそう尋ねたハルに、クレットさんはええとすぐに頷いた。

「厩舎にはあまり来た事がなかったんですが、そう言われれば森の中で野生のウマにじーっと見つめられた事はありましたね。あの時はただの偶然だろうと思っていましたが」

 まあ、人に見えない幽霊の姿が、一部のウマには見えてるとはそうそう想像できないよね。

「俺も見られていた覚えはない…いや、アキトに懐いていた馬車のウマにはじとっと見られた事があったような…あれはそういう?」

 え、馬車の馬ってことは何度か撫でさせてもらった白馬のヨウの事だよね。

 あー…そういえば、ハルの方をじっと見てた事があったような気がするな。

「そのヨウってうまもみえてそうだね」
「それは予想外だなー見えてるのって聞いてみたくなる」
「きいてみたらいいよ」

 返事はできなくてもひとの言葉は理解してるから、動きで答えてくれると思うよとシュリくんは教えてくれた。

 ああ、なるほど。ヨウならたしかに、そうやって答えてくれそうな気がする。賢くて綺麗なウマだから。トライプールに帰ったらヨウに会いに行くのも良いな。

 そう思いながらちらりとハルを見れば、ハルは笑って口を開いた。

「トライプールに帰ったら、二人でヨウに会いに行ってみようか」
「うん、そうしたいな」

 視線だけで気づいてくれたハルに、俺は笑顔で頷いた。



「ハロルド様、報告会は問題なく終わりましたか?」

 話が途切れた所で、クレットさんがそう尋ねた。自分は参加しなくて良いと言われていたとはいえ、やっぱり気にはなっていたんだろうな。

「ああ、報告会自体は何の問題も無く終わったよ。ただ…」
「ただ…?」

 促すように声をかければ、すぐにハルは言葉を続けてくれた。

「急な話だが、明後日には本隊が出発する事になった」
「え、明後日!?」
「そうなんだ。もう本隊の準備もある程度出来ているらしい。それならできるだけ早い方が良いという判断だそうだ」

 焦った盗賊団が何をするか分からないからと言われれば、確かに納得だ。

「明後日の出発ですね。私も同行するという案に変更はありませんか?」
「ああ、変更は無い。クレットにもよろしく頼むとウィル兄からの伝言を預かっている」

 クレットさんはハルの言葉に、綺麗な敬礼を返してみせた。
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