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1268.【ハル視点】不審な動き
ウィル兄からの解散の声かけに、出迎えに来ていた使用人たちもすぐに持ち場へと帰っていった。それぞれの仕事を抜けてここに来てくれているんだから、当然だ。
ジーラルとネルバ、ダンも既に騎士団本部へと向かったし、もうここにいるのはアキトと俺、それにウィル兄とボルトの四人だけだ。
ちらりと見てみれば、まだウィル兄とボルトの話は続いている。今日のような伝達速度を出すためにはどうすれば良いかを、いまは話し合っているようだ。
これは…もう我慢しなくても良いんじゃないか?俺はそっと手を伸ばすと、控え目にアキトの手を握りしめた。
まだ近くにウィル兄やボルトがいるのに、恥ずかしいと嫌がられるだろうか?そう思いながらの行動だったが、アキトは嫌がるどころかパッと俺を見上げると嬉しそうな笑みを浮かべてくれた。
そのまま、まるで俺がきちんと帰ってきたのを確かめるかのように、きゅっきゅっと何度も何度も握り返してくれる。
ああ、可愛いな。
俺からも何度も握り返していると、不意にウィル兄さんが俺たちの方をちらっと見た。
「ハルとアキトくんは…」
「ウィリアム様」
何かを言いかけたウィル兄の言葉を遮るかのように、ボルトが声をかけた。
このタイミングで声を出すボルトなんて、初めて見たかもしれない。領主一家の誰であろうとその言葉を遮るなんて真似を、ボルトが意味もなくするはずが無いからな。
一体何事だと緊張しながら見つめていると、ボルトはウィル兄さんにそっと顔を近づけて耳元で何かを囁いた。俺たちには何を言ったのかまでは聞き取れなかったが、ウィル兄さんはなるほどとひとつ呟いた。
「…ウィル兄?」
どうしたんだ?と尋ねる意味を込めて名前を呼んだが、ウィル兄さんはただにっこりと笑っただけだった。
「いや、なんでもないよ。俺はこれからジルの所に行くからー二人はのんびりしてねー」
あ、明日の報告会にはハルも参加してねと言い置いて、ウィル兄はボルトと一緒にすぐに歩き出した。廊下を進んで行く二人の背中を、何もできずに呆然と見送る。
今さっきのウィル兄のもの言いたげな視線から判断して、おそらくボルトから何かを告げられたんだろうと予想はできる。
でも内容については全く想像ができない。てっきりいつも通り食事に誘ってくるものだとばかり思っていたのに、何故それをしなかったんだ?俺はゆるりと首を傾げた。
「いつもは食事に誘ってくるのに…今日は誘わないんだな?アキトと二人きりになれるなら文句は無いけど――珍しいな」
思わずこぼれた俺の呟きが聞こえたのか、アキトはハッとした顔をしてからうろうろと視線を彷徨わせた。もしかして何か言いたい事でもあるんだろうか。
気にはなったけれど、俺は何も言わずにじっとアキトの動きを待った。急かすような真似はしたくないからな。
何も言わずにじっと見つめていると、不意にアキトは俺の手をくいっと引っ張った。
「ハル、お腹空いてる?」
「ああ、そうだな。だいぶ空いてるね」
森の入り口で軽く食べた後は何も食べてないとすぐに答えれば、アキトは小さな声で続けた。
「えっと…ラスさんに教えてもらいながら、俺が一人で作った料理があるんだ。作り方はきっちり守ったから、きっとちゃんと美味しいと思うんだけど…でも、ラスさんが作るのほど美味しいとは思えなくて…」
アキトの手料理?
「でも、よければハルの事を考えながら作ったから、ハルに食べて欲しい!」
俺の事を考えながら作ってくれてアキトの手料理。
両目をきつく瞑って誘ってくれたアキトに、申し訳ないが俺は何も答えられなかった。
あまりにその言葉が衝撃的すぎて、どうしても言葉が出てこなかったんだ。俺は額に手を当てて、そっと天井を見上げた。
まさかここでアキトの手料理が出迎えてくれるなんて、思ってもみなかった。もしかしてこれは夢か?俺は既に自室で眠ってるんじゃないか?
「…ハル?」
「あ、ごめん。えっと…感動してた」
「感動?」
どういう事?と首を傾げているアキトに、俺はにっこりと笑いかける。きっと今の俺の顔を見たら、家族はみんな信じられないと大騒ぎするんだろうな。
きっとそうなるだろうなと自分でも考えてしまうぐらい、制御できない嬉しさのせいで笑顔が溢れてしまう。きっと今の俺は、締まりのないだらしない顔をしているだろう。
「出迎えに来てくれたのがすごく嬉しかったし、人目も気にせずに抱きしめてくれてさらに幸せでだった。手を繋いでもニコニコ笑顔を返してくれたよね」
「う、うん」
アキトは恥ずかしそうにしながらも、同意の言葉を返してくれた。
「さらに俺がいない間に、俺の事を考えて俺のために料理を作ってくれてたなんて…嬉しいに決まってるでしょう?」
ジーラルとネルバ、ダンも既に騎士団本部へと向かったし、もうここにいるのはアキトと俺、それにウィル兄とボルトの四人だけだ。
ちらりと見てみれば、まだウィル兄とボルトの話は続いている。今日のような伝達速度を出すためにはどうすれば良いかを、いまは話し合っているようだ。
これは…もう我慢しなくても良いんじゃないか?俺はそっと手を伸ばすと、控え目にアキトの手を握りしめた。
まだ近くにウィル兄やボルトがいるのに、恥ずかしいと嫌がられるだろうか?そう思いながらの行動だったが、アキトは嫌がるどころかパッと俺を見上げると嬉しそうな笑みを浮かべてくれた。
そのまま、まるで俺がきちんと帰ってきたのを確かめるかのように、きゅっきゅっと何度も何度も握り返してくれる。
ああ、可愛いな。
俺からも何度も握り返していると、不意にウィル兄さんが俺たちの方をちらっと見た。
「ハルとアキトくんは…」
「ウィリアム様」
何かを言いかけたウィル兄の言葉を遮るかのように、ボルトが声をかけた。
このタイミングで声を出すボルトなんて、初めて見たかもしれない。領主一家の誰であろうとその言葉を遮るなんて真似を、ボルトが意味もなくするはずが無いからな。
一体何事だと緊張しながら見つめていると、ボルトはウィル兄さんにそっと顔を近づけて耳元で何かを囁いた。俺たちには何を言ったのかまでは聞き取れなかったが、ウィル兄さんはなるほどとひとつ呟いた。
「…ウィル兄?」
どうしたんだ?と尋ねる意味を込めて名前を呼んだが、ウィル兄さんはただにっこりと笑っただけだった。
「いや、なんでもないよ。俺はこれからジルの所に行くからー二人はのんびりしてねー」
あ、明日の報告会にはハルも参加してねと言い置いて、ウィル兄はボルトと一緒にすぐに歩き出した。廊下を進んで行く二人の背中を、何もできずに呆然と見送る。
今さっきのウィル兄のもの言いたげな視線から判断して、おそらくボルトから何かを告げられたんだろうと予想はできる。
でも内容については全く想像ができない。てっきりいつも通り食事に誘ってくるものだとばかり思っていたのに、何故それをしなかったんだ?俺はゆるりと首を傾げた。
「いつもは食事に誘ってくるのに…今日は誘わないんだな?アキトと二人きりになれるなら文句は無いけど――珍しいな」
思わずこぼれた俺の呟きが聞こえたのか、アキトはハッとした顔をしてからうろうろと視線を彷徨わせた。もしかして何か言いたい事でもあるんだろうか。
気にはなったけれど、俺は何も言わずにじっとアキトの動きを待った。急かすような真似はしたくないからな。
何も言わずにじっと見つめていると、不意にアキトは俺の手をくいっと引っ張った。
「ハル、お腹空いてる?」
「ああ、そうだな。だいぶ空いてるね」
森の入り口で軽く食べた後は何も食べてないとすぐに答えれば、アキトは小さな声で続けた。
「えっと…ラスさんに教えてもらいながら、俺が一人で作った料理があるんだ。作り方はきっちり守ったから、きっとちゃんと美味しいと思うんだけど…でも、ラスさんが作るのほど美味しいとは思えなくて…」
アキトの手料理?
「でも、よければハルの事を考えながら作ったから、ハルに食べて欲しい!」
俺の事を考えながら作ってくれてアキトの手料理。
両目をきつく瞑って誘ってくれたアキトに、申し訳ないが俺は何も答えられなかった。
あまりにその言葉が衝撃的すぎて、どうしても言葉が出てこなかったんだ。俺は額に手を当てて、そっと天井を見上げた。
まさかここでアキトの手料理が出迎えてくれるなんて、思ってもみなかった。もしかしてこれは夢か?俺は既に自室で眠ってるんじゃないか?
「…ハル?」
「あ、ごめん。えっと…感動してた」
「感動?」
どういう事?と首を傾げているアキトに、俺はにっこりと笑いかける。きっと今の俺の顔を見たら、家族はみんな信じられないと大騒ぎするんだろうな。
きっとそうなるだろうなと自分でも考えてしまうぐらい、制御できない嬉しさのせいで笑顔が溢れてしまう。きっと今の俺は、締まりのないだらしない顔をしているだろう。
「出迎えに来てくれたのがすごく嬉しかったし、人目も気にせずに抱きしめてくれてさらに幸せでだった。手を繋いでもニコニコ笑顔を返してくれたよね」
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