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1270.【ハル視点】メイドたちの提案
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以前にも何度か、アキトと二人きりで食事がしたいと伝えた事はあった。
他の家ではどうか知らないが少なくともうちの家では、そう珍しい事でも無い。父と母も二人だけで食事がしたいと言い出す事もあるし、二人の兄も伴侶と食事をすると言い出す事もある。
だがそういう時は、こちらの希望が無ければ基本的に自室に用意される事が多い。
使っていない部屋はたくさんあるが、一番くつろげる自室で人目を気にせずにのんびりとしたいだろう。そういう使用人たちの優しさから自室にされるんだと思う。
だが今回は珍しい事に、メイドたちから控え目に尋ねられた。
「お二人さえよろしければ、隣室にご用意をするのはいかがでしょう?」
なるほど。特別な料理なら、特別な支度をした上でと言いたいんだな。
俺達が今使っているこの部屋は、本来なら大事な来客のために用意されている部屋だ。その隣室には、泊っている来客とあれこれと秘密の会談をするための部屋となっている。
うん、あの部屋なら何の問題も無いな。
「それで頼む」
「かしこまりました。用意が済みましたら呼びに参ります」
「自室でおくつろぎになってお待ちくださいませ」
メイドたちはそう言うと、鍵を開けて隣の部屋へと入って行った。
二人で自室に入り、後ろ手に部屋の鍵を閉める。途端にパッと振り返ったアキトは、そのままぎゅーっと俺に抱き着いてきた。
可愛い事をしてくれるな。そう思っている間に、アキトはそっと背伸びをして俺に口づけた。軽く触れるだけの口づけをしたアキトは、ふわりと幸せそうに笑って口を開いた。
「おかえり」
「ああ、ただいま」
あまりの愛おしさにたまらなくなった俺が、深く深く口づけてしまったのも仕方がない事だろう。
むしろメイドが呼びに来るんだからと理性を働かせ、そのまま押し倒さなかっただけ頑張ったほうだと思う。あんな可愛い姿を不意打ちで見せられたんだからな。
だが、このままくっついていると色々とまずいな。
俺はアキトからそっと距離を取ると、荷物を置き装備を外し始めた。取り出した普段着に手早く着替えていると、アキトがさらりと浄化魔法をかけてくれた。
相変わらず見事な発動の速さだな。
「いつもありがとう」
「どういたしまして」
いつも通りのやり取りに思わず笑い合ってから、俺達は部屋の片隅にあるソファへと移動した。
これは元々この部屋にはなかった。ある日突然ウィル兄さんから、伴侶と二人で並んで座るソファが必要だろうと贈られてきたものだ。
あの時のアキトは一度座ってみるなり、顔色を悪くしてたな。こんなに高級なもの受け取れないよと、大慌てだった。
まあ一緒に座ってみていた俺も、これはかなりの高級品だな…奮発したなと感心はしていたんだが。
だがこれは、おそらくウィル兄からのあの時の詫びの品だ。そう分かってしまっただけに、受け取らないわけにはいかなかった。
船の上で再会した時にアキトの前で抱き着いて誤解させてしまった事を、ウィル兄からは何度か謝罪されていた。伴侶候補になってもらうきっかけになったという事ももちろんしっかり説明はしたんだが、それでも何かの時に詫びの品を贈ると言われていた。
おそらくその品がこれだろう。アキトにもそう説明して何とか受け取ってもらう事ができた。
受け取る時には色々とあったソファだが、座ると自然と寄り添うようになるのもあって今では二人のお気に入りだ。
トライプールに帰るときには持って帰りたいぐらいだ。
「危ない事は無かった?」
「ああ、そこまで強い魔物も出なかったからね」
一緒に行ったメンバーは想像以上に強かったよと、俺は笑顔でそう答えた。
「ハル、もし話せない事だったらそう言って欲しいんだけど…ひとつ聞いても良い?」
「もちろんだよ。なぁに?」
今回はアキトに答えられない事なんて特に何も無いんだが、その気づかいは嬉しい。
「あの…クレットさんが教えてくれた隠されてた魔道具って、本当にムレングダンジョンに繋がってたの?」
「ああ、それか。もう父さんまで報告は上がってるだろうし、別にアキトに隠さないといけないような事じゃないから大丈夫だよ」
「本当に?無理してない?」
真意を探るかのように、隣に座ったアキトがじっと俺の目を見つめて尋ねてくる。
「してないよ、大丈夫。結論から言うと、たしかにムレングダンジョンに繋がってたね。ムレングの99階層だったよ」
「え…よく階層まで分かったね?」
驚いた様子のアキトに、俺は偶然出会ったあの冒険者たちの話をする事にした。
ダンジョン内で毒消しポーションが足りなくて困っていた事。代金を安くした代わりに情報を求めたら、想像以上に良い情報をくれた事。そのパーティーが99階層だと言って地図を見せてくれた事。
「気持ちの良い性格の人ばかりだったよ」
アキトは良かったねと、明るい笑顔を浮かべた。
他の家ではどうか知らないが少なくともうちの家では、そう珍しい事でも無い。父と母も二人だけで食事がしたいと言い出す事もあるし、二人の兄も伴侶と食事をすると言い出す事もある。
だがそういう時は、こちらの希望が無ければ基本的に自室に用意される事が多い。
使っていない部屋はたくさんあるが、一番くつろげる自室で人目を気にせずにのんびりとしたいだろう。そういう使用人たちの優しさから自室にされるんだと思う。
だが今回は珍しい事に、メイドたちから控え目に尋ねられた。
「お二人さえよろしければ、隣室にご用意をするのはいかがでしょう?」
なるほど。特別な料理なら、特別な支度をした上でと言いたいんだな。
俺達が今使っているこの部屋は、本来なら大事な来客のために用意されている部屋だ。その隣室には、泊っている来客とあれこれと秘密の会談をするための部屋となっている。
うん、あの部屋なら何の問題も無いな。
「それで頼む」
「かしこまりました。用意が済みましたら呼びに参ります」
「自室でおくつろぎになってお待ちくださいませ」
メイドたちはそう言うと、鍵を開けて隣の部屋へと入って行った。
二人で自室に入り、後ろ手に部屋の鍵を閉める。途端にパッと振り返ったアキトは、そのままぎゅーっと俺に抱き着いてきた。
可愛い事をしてくれるな。そう思っている間に、アキトはそっと背伸びをして俺に口づけた。軽く触れるだけの口づけをしたアキトは、ふわりと幸せそうに笑って口を開いた。
「おかえり」
「ああ、ただいま」
あまりの愛おしさにたまらなくなった俺が、深く深く口づけてしまったのも仕方がない事だろう。
むしろメイドが呼びに来るんだからと理性を働かせ、そのまま押し倒さなかっただけ頑張ったほうだと思う。あんな可愛い姿を不意打ちで見せられたんだからな。
だが、このままくっついていると色々とまずいな。
俺はアキトからそっと距離を取ると、荷物を置き装備を外し始めた。取り出した普段着に手早く着替えていると、アキトがさらりと浄化魔法をかけてくれた。
相変わらず見事な発動の速さだな。
「いつもありがとう」
「どういたしまして」
いつも通りのやり取りに思わず笑い合ってから、俺達は部屋の片隅にあるソファへと移動した。
これは元々この部屋にはなかった。ある日突然ウィル兄さんから、伴侶と二人で並んで座るソファが必要だろうと贈られてきたものだ。
あの時のアキトは一度座ってみるなり、顔色を悪くしてたな。こんなに高級なもの受け取れないよと、大慌てだった。
まあ一緒に座ってみていた俺も、これはかなりの高級品だな…奮発したなと感心はしていたんだが。
だがこれは、おそらくウィル兄からのあの時の詫びの品だ。そう分かってしまっただけに、受け取らないわけにはいかなかった。
船の上で再会した時にアキトの前で抱き着いて誤解させてしまった事を、ウィル兄からは何度か謝罪されていた。伴侶候補になってもらうきっかけになったという事ももちろんしっかり説明はしたんだが、それでも何かの時に詫びの品を贈ると言われていた。
おそらくその品がこれだろう。アキトにもそう説明して何とか受け取ってもらう事ができた。
受け取る時には色々とあったソファだが、座ると自然と寄り添うようになるのもあって今では二人のお気に入りだ。
トライプールに帰るときには持って帰りたいぐらいだ。
「危ない事は無かった?」
「ああ、そこまで強い魔物も出なかったからね」
一緒に行ったメンバーは想像以上に強かったよと、俺は笑顔でそう答えた。
「ハル、もし話せない事だったらそう言って欲しいんだけど…ひとつ聞いても良い?」
「もちろんだよ。なぁに?」
今回はアキトに答えられない事なんて特に何も無いんだが、その気づかいは嬉しい。
「あの…クレットさんが教えてくれた隠されてた魔道具って、本当にムレングダンジョンに繋がってたの?」
「ああ、それか。もう父さんまで報告は上がってるだろうし、別にアキトに隠さないといけないような事じゃないから大丈夫だよ」
「本当に?無理してない?」
真意を探るかのように、隣に座ったアキトがじっと俺の目を見つめて尋ねてくる。
「してないよ、大丈夫。結論から言うと、たしかにムレングダンジョンに繋がってたね。ムレングの99階層だったよ」
「え…よく階層まで分かったね?」
驚いた様子のアキトに、俺は偶然出会ったあの冒険者たちの話をする事にした。
ダンジョン内で毒消しポーションが足りなくて困っていた事。代金を安くした代わりに情報を求めたら、想像以上に良い情報をくれた事。そのパーティーが99階層だと言って地図を見せてくれた事。
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アキトは良かったねと、明るい笑顔を浮かべた。
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