生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1272.【ハル視点】手料理は

 テーブルの上に並んだ料理を、俺はまじまじと観察した。どこかに何か目印でも無いかと、考えてしまった。

 色とりどりの野菜をたっぷりと使っているらしいスープは、保温の魔道具の機能を備えた美しい皿に入れられている。温かさを保つためのこの皿は、普段の食事では滅多に使われないぐらい珍しいものだ。パッと見ただけで食欲をそそる見た目だな。

 その横に並んでいるウカを使っているのだろう肉料理は、赤身の部分が見えるようにとすこしずつずらして並べられている。

 これは絶対に美味しいと思ってしまうぐらい艶やかな肉の横には、一緒に食べると美味しい相性の良い野菜がいくつか添えられている。味付けを変えるための果汁やソースなどの調味料も、小さな器に入れられていた。

 その隣にあるのは、クラッカーと果物やチーズの盛り合わせのようだ。これにもジャムやバターらしきものが添えられている。

「美味しそうだね」

 思わずそう告げれば、アキトはそうだねと答えてくれた。俺は別に何とも思わなかったが、アキトは自分の作った料理が美味しそうだと同意してしまった事に慌てたようだ。

「あの、盛り付けは俺がやったわけじゃないから!美味しそうだなって!」

 別に盛り付けを誰がやっていても問題は無いんだが、俺はアキトを安心させるためにそういう意味だったんだねと返しておいた。

「まずは座ろうか?」
「そうだね」

 向かい合わせの椅子に腰を下ろして、俺達は自然と笑みを浮かべた。手に飲み物を持って、どちらからともなく杯を掲げる。

「ハル、改めておかえり。約束通り、無事に帰ってきてくれて良かった」
「改めてただいま、アキト。まさか手料理なんて嬉しい驚きが待ってくれているとは、想像もしてなかったよ」

 そう、これは本当に予想外の、だがとっても嬉しい驚きだった。

「喜んでくれて良かった。食べよ」
「「いただきます」」

 ぴったりと声を重ねた俺達は、そっと飲み物に口をつけた。

 ん?これは…珍しいな。果実水に少しだけ酒が混ぜられていそうだ。

 アキトは酒に強いし、俺もアキトほどでは無いがそれなりには飲める。だが今日は食事を楽しめるようにとあえて酒ではなく、こういう飲み物にしてくれたようだ。

 これはきっとラスが分量を考えて混ぜたんだろうな。

「これ、美味しい!」
「すこしだけ酒が入ってそうだね」
「うん、酔わない程度だけどね」
「ああ、でもこれは良いな」

 すっきりしていて飲みやすいと言えば、アキトはうんうんと頷いてくれた。

「さて…」

 そう呟いた俺は、笑顔でそっと料理に視線を向けた。

「アキトが作ってくれた料理は、どれかな?折角だし今夜はまずはそれから食べたいんだけど…」

 ぜひ教えて欲しいなと声をかければ、アキトは一瞬だけぽかんとした後、ハッとした顔で口を開いた。

「このテーブルの上に並んでるのは、全部俺が作ったやつだよ」

 あまりにも予想外の言葉に、俺は思わずもう一度テーブルの上に視線を戻した。

「え…この具だくさんで美味しそうなスープも?」
「うん」
「この歯ごたえがあって美味しそうなクラッカーも?」
「うん」
「この最高に美味しそうな肉料理も?」

 大好きな肉料理に、最高に美味しそうなと付けてしまったのは、別にわざとでは無かった。本当に心から美味しそうに見えたからそう言っただけだったが、アキトはクスクスと声をあげて笑いだした。

「うん。ちなみにそこの肉料理用のソースも俺が作ったよ」

 アキトは悪戯っぽく笑いながら、そう教えてくれた。

 情けない事に大きく目を見開き口も開いたまま、俺はじっとアキトを見つめてしまった。あまりに衝撃的すぎたんだ。

 少しだけ固まってしまったが、俺は慌てて口を開く。

「…まさかこれが全部手料理だとは、思っていなかったよ。すごいな。頑張ってくれてありがとう」

 心からの感謝の言葉を告げれば、アキトはどういたしましてと言いながら照れくさそうに笑ってくれた。
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