1,274 / 1,561
1273.【ハル視点】アキトの料理は
何から食べようかと考えるまでもなく、ほぼ無意識のまま最初に手を伸ばしたのは肉料理だった。これだけ美味しそうな肉に誘惑されたら、抗う事はできない。
俺は薄く切りわけられた肉を、くるりとフォークとナイフで巻いて取り皿に移動させた。
アキト自ら作ってくれたというソースも気になるし、これだけ美しい肉なら絶対に野菜と食べても美味いだろう。だが、最初の一口はやっぱりそのままの味を味わいたいな。
アキトの視線を感じながら、俺はそっと肉を口に運んだ。
まず驚いたのは一噛みするだけで、ぶわりと口の中いっぱいに肉の旨味が広がった事だった。驚きながらもどんどん食べ進めていけば、今度はしっかりとつけられているらしい下味の風味を感じた。
これはソースをつけなくて正解だったかもしれない。上質なウカの肉の味をじっくりと感じられるし、下味だけでも驚くほどに美味い。
あまりの美味しさに、自然と笑顔がこぼれてしまう。
ごくりと肉を飲み込んでから、俺は思わずほうっとひとつ息を吐いた。
「アキト。この肉料理、最高に美味しいよ」
感想を待っていてくれたアキトに、俺は笑顔でそう声をかけた。
「ハルが気に入ってくれて良かった」
気に入ったなんてものじゃないよ、アキト。
正直アキトが作ってくれたというだけでも美味しいと感じるとは思うんだが、そういう感情を全て抜きにしても最高に美味い肉料理だった。
特に気になったのは、この焼き加減だ。
「味付けも美味しいんだけど、特に肉の焼き加減がね。すっごく俺好みだ。アキトがこだわってくれたんだろう?」
「あ、本当?それなら良かった。ハルはこれぐらいが好きだろうなと思ったんだ」
ふわっと笑ったアキトは、次いで不思議そうに首を傾げた。
「でも、よく俺のこだわりだって気づいたね?」
「うん、ラスはもっとしっかり火を通すからね。俺の好みはもちろん知ってるだろうけど、この料理はラスの中ではしっかり焼いた方が美味しいという自信があるんだと思う」
実際にラスが作った肉料理は、いつだって俺の好みなんて全く関係なく、毎回美味いと思わされるんだよな。
それがラスの料理のすごい所だと思う。
「もちろんそれも美味しいんだけどね。ラスの料理に文句は無いんだ」
むしろいつも美味しい料理をありがとうと、感謝しているぐらいだ。
「でもこの料理は特別だった。料理をしている間、アキトが俺の事をいっぱい考えてくれたんだなって伝わってきたよ」
しかもアキトの好みなら、もう少し焼いてある肉の方が好きだろう。それなのに俺が好きな焼き加減を優先してくれたって事なんだよな。
「ラスさんもね、大事な人を待つ時は料理をして待つんだって」
アキトはぽつりとそう教えてくれた。どうやらラスにそう言われて、料理を作って待ってくれていたらしい。
「作った料理を喜んで食べてくれるところを想像しながら作れば、待ってる間の寂しさが和らぐんだって教えてくれたんだ」
「そうなのか」
「だからそれを作ってる間も、ずっとハルの事を考えてたよ」
そんな事を聞くと、目の前の料理がさらに特別に思えてくるな。
「俺は幸せ者だな」
自然とこぼれた笑みに、アキトは慌てながら口を開いた。これはおそらく照れ隠しだな。
「せっかくだからそのソースもかけて食べてみて?」
「これだね?アキトが作ったって言うソース」
「そうそう」
アキトに勧められるままにソースをかけて食べてみたんだが、これがまたすごかった。思わずぐっと声が漏れたぐらいだ。
「そのままも美味しかったけど、このソースをかけるとさらにやばいね」
アキトが美味しいものを食べた時に言葉が出なくなると言っていたが、まさにそれだ。
うなりながら、俺はもう一枚の肉をソースと共にそっと口に運ぶ。
「ああ、このソースがあれば、野営地での食事も質が上がりそうだなって考えてしまうぐらい美味しいよ」
ただの串焼きでも豪華になりそうだと苦笑すれば、アキトは少し自慢げな笑顔で答えた。
「それなら野営するような依頼の前にも、作って持っていこっか。ラスさんから作り方をしっかり教わって書き残しておいたから、これからはいつでも作れるからね」
なんとアキトは料理を教わっただけではなく、きっちりその作り方も細かく書き留め、更にラスから誰に食べさせても良いという許可まで得てきたらしい。
このソースを、いつでも食べられるなんて信じられない。串焼き肉以外にも使い道は色々とあるだろう。そう考えるだけでワクワクしてくる。
「ありがとう、アキト。このソースはぜひ次回の野営の時にも作って欲しい――いや、俺も一緒に作りたい!」
「それも良いね。今度ラスさんに許可をもらっておくね」
俺は薄く切りわけられた肉を、くるりとフォークとナイフで巻いて取り皿に移動させた。
アキト自ら作ってくれたというソースも気になるし、これだけ美しい肉なら絶対に野菜と食べても美味いだろう。だが、最初の一口はやっぱりそのままの味を味わいたいな。
アキトの視線を感じながら、俺はそっと肉を口に運んだ。
まず驚いたのは一噛みするだけで、ぶわりと口の中いっぱいに肉の旨味が広がった事だった。驚きながらもどんどん食べ進めていけば、今度はしっかりとつけられているらしい下味の風味を感じた。
これはソースをつけなくて正解だったかもしれない。上質なウカの肉の味をじっくりと感じられるし、下味だけでも驚くほどに美味い。
あまりの美味しさに、自然と笑顔がこぼれてしまう。
ごくりと肉を飲み込んでから、俺は思わずほうっとひとつ息を吐いた。
「アキト。この肉料理、最高に美味しいよ」
感想を待っていてくれたアキトに、俺は笑顔でそう声をかけた。
「ハルが気に入ってくれて良かった」
気に入ったなんてものじゃないよ、アキト。
正直アキトが作ってくれたというだけでも美味しいと感じるとは思うんだが、そういう感情を全て抜きにしても最高に美味い肉料理だった。
特に気になったのは、この焼き加減だ。
「味付けも美味しいんだけど、特に肉の焼き加減がね。すっごく俺好みだ。アキトがこだわってくれたんだろう?」
「あ、本当?それなら良かった。ハルはこれぐらいが好きだろうなと思ったんだ」
ふわっと笑ったアキトは、次いで不思議そうに首を傾げた。
「でも、よく俺のこだわりだって気づいたね?」
「うん、ラスはもっとしっかり火を通すからね。俺の好みはもちろん知ってるだろうけど、この料理はラスの中ではしっかり焼いた方が美味しいという自信があるんだと思う」
実際にラスが作った肉料理は、いつだって俺の好みなんて全く関係なく、毎回美味いと思わされるんだよな。
それがラスの料理のすごい所だと思う。
「もちろんそれも美味しいんだけどね。ラスの料理に文句は無いんだ」
むしろいつも美味しい料理をありがとうと、感謝しているぐらいだ。
「でもこの料理は特別だった。料理をしている間、アキトが俺の事をいっぱい考えてくれたんだなって伝わってきたよ」
しかもアキトの好みなら、もう少し焼いてある肉の方が好きだろう。それなのに俺が好きな焼き加減を優先してくれたって事なんだよな。
「ラスさんもね、大事な人を待つ時は料理をして待つんだって」
アキトはぽつりとそう教えてくれた。どうやらラスにそう言われて、料理を作って待ってくれていたらしい。
「作った料理を喜んで食べてくれるところを想像しながら作れば、待ってる間の寂しさが和らぐんだって教えてくれたんだ」
「そうなのか」
「だからそれを作ってる間も、ずっとハルの事を考えてたよ」
そんな事を聞くと、目の前の料理がさらに特別に思えてくるな。
「俺は幸せ者だな」
自然とこぼれた笑みに、アキトは慌てながら口を開いた。これはおそらく照れ隠しだな。
「せっかくだからそのソースもかけて食べてみて?」
「これだね?アキトが作ったって言うソース」
「そうそう」
アキトに勧められるままにソースをかけて食べてみたんだが、これがまたすごかった。思わずぐっと声が漏れたぐらいだ。
「そのままも美味しかったけど、このソースをかけるとさらにやばいね」
アキトが美味しいものを食べた時に言葉が出なくなると言っていたが、まさにそれだ。
うなりながら、俺はもう一枚の肉をソースと共にそっと口に運ぶ。
「ああ、このソースがあれば、野営地での食事も質が上がりそうだなって考えてしまうぐらい美味しいよ」
ただの串焼きでも豪華になりそうだと苦笑すれば、アキトは少し自慢げな笑顔で答えた。
「それなら野営するような依頼の前にも、作って持っていこっか。ラスさんから作り方をしっかり教わって書き残しておいたから、これからはいつでも作れるからね」
なんとアキトは料理を教わっただけではなく、きっちりその作り方も細かく書き留め、更にラスから誰に食べさせても良いという許可まで得てきたらしい。
このソースを、いつでも食べられるなんて信じられない。串焼き肉以外にも使い道は色々とあるだろう。そう考えるだけでワクワクしてくる。
「ありがとう、アキト。このソースはぜひ次回の野営の時にも作って欲しい――いや、俺も一緒に作りたい!」
「それも良いね。今度ラスさんに許可をもらっておくね」
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。