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1277.【ハル視点】律儀な男
もしこれが侵入者なのだとしたら、部屋の中にいる人に見つかるようにわざわざ手を振る理由がない。つまり外にいるのは、すくなくとも侵入者では無いんだろう。不審者ではあるがな。
そんな事を頭では考えながらも、俺は警戒は解除せずに気配を消して窓へと近づいていく。そうすると、窓の外にいる男の姿がはっきりと見えた。
俺はふうと小さく息を吐くと、構えていた短剣をすぐに腕輪にしまった。どうやらこれは必要なさそうだ。
俺の視線の先にいるのは、思い切り首を曲げた上にぎゅっと両目をつむっているクレットだ。しかもこちらを一切見ないようにしながら、未だにふるふると手を振っている。
そういえばクレットには以前、俺とアキトの自室には入らないようにしてたから挨拶が遅くなったと言われた事があったな。あれは庭園であった時だったか?
伴侶や伴侶候補と一緒の部屋には、無遠慮に踏み込まないようにしてるんです。そう言っていたクレットだから、おそらく今首を曲げているのも両目をつむっているのも俺とアキトへの配慮なんだろう。
不思議な体勢の理由にはすぐに思い当ったが、二人で自室にいるのを分かった上でわざわざここに来たその理由が気になった。
いったい何の用なら、クレットがこんな時間に来るんだ?と不思議に思いつつ、俺はそっと窓の木枠を軽く叩いて音を出した。もちろんアキトを起こさない程度の小さな音になるように、細心の注意を払ったよ。
俺の立てた小さな音にすぐに気づいたクレットは、ハッとした顔でこちらを見た。
どうかしたのか?
手信号で尋ねれば、クレットもすぐさま手を動かした。
おくつろぎのところお邪魔をしてしまい申し訳ありません。もし可能であればウィリアム隊長の執務室に来て貰えないかと、隊長からの伝言を預かってきました。
幽霊が見えないウィル兄が、クレット経由で俺に伝言だと?いったいどういう事だ?思わず首を傾げてしまったが、クレットの手はまだ止まらない。
もし良ければ、アキト様もご一緒にどうぞと言っていました。
手が止まったのを見て、今度は俺が苦笑しながら手を動かす。
アキトはもう寝たよ。俺は今からすぐにウィル兄の執務室に向かう事にする。
そうパパパッと手を動かして返せば、では執務室への途中で合流しますと返ってきた。
幸せそうにすうすうと寝息を立てながら眠るアキトの姿を、ちらりと横目で見る。
このまま隣に潜りこんで眠りたいな。でもどうやら幸せに浸りながら眠るのは、もう少し後の事になりそうだ。
うん、よく眠ってるな。
これなら急に眼が覚めて俺がいないと慌てる事もなさそうだ。そう思いつつも、俺はウィル兄の執務室に行ってくると書いた紙を用意して、そっとテーブルの上へと置いた。
「ハロルド様、おかえりなさいませ」
「ああ、ただいま」
「ご無事で何よりです」
「ありがとう」
俺が食事を楽しんでいる間に、警備の交代の時間を過ぎたようだ。律儀にそう声をかけてくれる警備に答えつつ、俺はウィル兄の執務室を目指して一人で歩き続けた。
後はこの廊下をまっすぐ進めば執務室に着くという所で、クレットは俺を待っていた。来ないと思ったら、ここで合流するつもりだったのか。
「ハロルド様、部屋まで押しかけてしまって申し訳ありません」
そう声をかけてくれたクレットに、俺は手だけで気にするなと返した。
執務室の周辺というのは、当然ではあるが城の中でも重要な区画だ。だからこそ、あちこちに警備が立っている。今も前方に立っている警備が、こちらを見ているからな。ここで普通に言葉で返事をするわけにはいかない。
クレットは気にした様子もなく、返事は無くて大丈夫ですよと笑ってくれた。
ありがとうと目線だけで返してから歩きだせば、クレットもすぐ後ろについてきてくれた。
執務室の前にいたウィル兄の専属侍従は、俺に気が付くと驚いた顔でこちらを見た。
「ハロルド様、ウィリアム様にご用でしょうか?」
約束もしていないのにこんな時間にいきなり来たから、驚かせてしまったようだ。クレットに呼ばれたとは、言えないからな。
「ああ、言い忘れた事があったと、急に思い出してね」
しばらくお待ちくださいと言い置いた侍従が中に尋ねれば、当然ではあるがすぐに許可が下りた。
部屋に入ってすぐに、ドアを後ろ手にしっかりと閉める。素早く視線を巡らせて部屋の中に他の人がいない事を確認し、同時に気配探知もきっちり行った。
よし、ウィル兄とクレット、それに俺しかいないな。
「呼んだか、ウィル兄?」
そんな事を頭では考えながらも、俺は警戒は解除せずに気配を消して窓へと近づいていく。そうすると、窓の外にいる男の姿がはっきりと見えた。
俺はふうと小さく息を吐くと、構えていた短剣をすぐに腕輪にしまった。どうやらこれは必要なさそうだ。
俺の視線の先にいるのは、思い切り首を曲げた上にぎゅっと両目をつむっているクレットだ。しかもこちらを一切見ないようにしながら、未だにふるふると手を振っている。
そういえばクレットには以前、俺とアキトの自室には入らないようにしてたから挨拶が遅くなったと言われた事があったな。あれは庭園であった時だったか?
伴侶や伴侶候補と一緒の部屋には、無遠慮に踏み込まないようにしてるんです。そう言っていたクレットだから、おそらく今首を曲げているのも両目をつむっているのも俺とアキトへの配慮なんだろう。
不思議な体勢の理由にはすぐに思い当ったが、二人で自室にいるのを分かった上でわざわざここに来たその理由が気になった。
いったい何の用なら、クレットがこんな時間に来るんだ?と不思議に思いつつ、俺はそっと窓の木枠を軽く叩いて音を出した。もちろんアキトを起こさない程度の小さな音になるように、細心の注意を払ったよ。
俺の立てた小さな音にすぐに気づいたクレットは、ハッとした顔でこちらを見た。
どうかしたのか?
手信号で尋ねれば、クレットもすぐさま手を動かした。
おくつろぎのところお邪魔をしてしまい申し訳ありません。もし可能であればウィリアム隊長の執務室に来て貰えないかと、隊長からの伝言を預かってきました。
幽霊が見えないウィル兄が、クレット経由で俺に伝言だと?いったいどういう事だ?思わず首を傾げてしまったが、クレットの手はまだ止まらない。
もし良ければ、アキト様もご一緒にどうぞと言っていました。
手が止まったのを見て、今度は俺が苦笑しながら手を動かす。
アキトはもう寝たよ。俺は今からすぐにウィル兄の執務室に向かう事にする。
そうパパパッと手を動かして返せば、では執務室への途中で合流しますと返ってきた。
幸せそうにすうすうと寝息を立てながら眠るアキトの姿を、ちらりと横目で見る。
このまま隣に潜りこんで眠りたいな。でもどうやら幸せに浸りながら眠るのは、もう少し後の事になりそうだ。
うん、よく眠ってるな。
これなら急に眼が覚めて俺がいないと慌てる事もなさそうだ。そう思いつつも、俺はウィル兄の執務室に行ってくると書いた紙を用意して、そっとテーブルの上へと置いた。
「ハロルド様、おかえりなさいませ」
「ああ、ただいま」
「ご無事で何よりです」
「ありがとう」
俺が食事を楽しんでいる間に、警備の交代の時間を過ぎたようだ。律儀にそう声をかけてくれる警備に答えつつ、俺はウィル兄の執務室を目指して一人で歩き続けた。
後はこの廊下をまっすぐ進めば執務室に着くという所で、クレットは俺を待っていた。来ないと思ったら、ここで合流するつもりだったのか。
「ハロルド様、部屋まで押しかけてしまって申し訳ありません」
そう声をかけてくれたクレットに、俺は手だけで気にするなと返した。
執務室の周辺というのは、当然ではあるが城の中でも重要な区画だ。だからこそ、あちこちに警備が立っている。今も前方に立っている警備が、こちらを見ているからな。ここで普通に言葉で返事をするわけにはいかない。
クレットは気にした様子もなく、返事は無くて大丈夫ですよと笑ってくれた。
ありがとうと目線だけで返してから歩きだせば、クレットもすぐ後ろについてきてくれた。
執務室の前にいたウィル兄の専属侍従は、俺に気が付くと驚いた顔でこちらを見た。
「ハロルド様、ウィリアム様にご用でしょうか?」
約束もしていないのにこんな時間にいきなり来たから、驚かせてしまったようだ。クレットに呼ばれたとは、言えないからな。
「ああ、言い忘れた事があったと、急に思い出してね」
しばらくお待ちくださいと言い置いた侍従が中に尋ねれば、当然ではあるがすぐに許可が下りた。
部屋に入ってすぐに、ドアを後ろ手にしっかりと閉める。素早く視線を巡らせて部屋の中に他の人がいない事を確認し、同時に気配探知もきっちり行った。
よし、ウィル兄とクレット、それに俺しかいないな。
「呼んだか、ウィル兄?」
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