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1280.【ハル視点】クレットへの言葉
「あー、ハルに来てもらって良かったよ。とりあえず今気になる事は、何とかなりそうだねー後は明日考えれば良いや」
ホッとした様子でへらりと笑ってみせるウィル兄に、俺も笑顔で口を開く。
「役に立てて良かったよ」
「本当にありがとう、すっごく助かった」
笑顔でお礼を言ってくれたという事は、どうやら話も終わりのようだ。この感じなら、そろそろ退室したいと切り出しても良さそう…かな?
俺は今眠っているアキトを、一人で部屋に置いてきてしまっているわけだからな。警備の厳しい領主城内だから、一人でいると危険だとかは無い。無いんだが、ただ俺がアキトと一緒にいたいんだよな。
できる事なら、今すぐにでも自室に帰りたい。そしてアキトの眠るベッドに潜り込んで一緒に眠りたい。
ここにいるのはウィル兄とクレットだけだし、色々と考えずにそのままそう言うか。そう決意した俺が口を開くよりも前に、ウィル兄が笑って口を開いた。
「ハル、早く帰りたいーって顔してるね」
「ああ、まあね」
「もちろん帰って良いんだけど、その前にもうひとつだけ!」
まだ何か用があったのかと思ったが、ウィル兄の視線は俺ではなくクレットがいる辺りに向けられていた。さっき俺が視線を向けていた場所を、しっかり覚えていたんだな。
「クレットは明日の報告会には、参加しなくて良いからねー」
ああ、そうか。家族だけなら俺が会話の橋渡しをできたかもしれないが、明日はジーラルとネルバ、それにダンも参加する。さらにその上、冒険者ギルドの関係者や魔道具技師まで来るなら、手信号でこっそり会話をするのも難しいだろう。
「俺が会話の橋渡しをできないからか?」
「うん、まあそうだね。ジーラルとネルバとダンだけなら、もしハルの手信号を見られても黙って飲み込んでくれると思うんだけど…ちょっと人が増えそうだからねー」
「なるほど」
「せっかく来てもらっても、俺達が反応できないのはクレットに申し訳ないからさー」
それにそうなると、ジルはクレットの事を気にしながら参加する事になるでしょ?と続けたウィル兄に、俺は思わず笑ってしまった。
もちろんクレットに申し訳ないという気持ちも確かにあるんだろうが、何よりも伴侶であるジルさんのためじゃないか。少し呆れてしまった俺と違い、クレットはそれは大問題ですねと真面目な顔で答えている。
そんな扱いで良いのか。
「それは大問題ですねって言ってるよ」
「さすがクレット、分かってくれてるねー」
「ウィリアム隊長の、私への気づかいに心から感謝します。今回の報告会には不参加とさせて頂きますね」
クレットの丁寧な言葉を伝えれば、ウィル兄はにっこりと笑みを浮かべた。
「報告会で方針が決まったらハルに伝言を頼むから、明日か明後日ぐらいには一度ハルの所に行ってくれるー?」
「もちろんです。では明日の夕方頃には、一度ハロルド様とアキト様の部屋の前に向かいますね」
「もちろんですって言ってるよ。ああ、夕方に俺達の部屋の前だな」
約束を取り付けた後は、俺はさっそく帰る事に決めた。部屋を出ようと歩き出すと、背後からウィル兄のおやすみーという間延びした声が追いかけてくる。
「ウィル兄もおやすみ。クレットも良い夜を」
「ありがとうございます、おやすみなさい」
部屋の前にいた侍従に声をかけて、俺はそのまま来た道を戻り始めた。さっき挨拶を済ませた警備しか立っていないから、帰り道は静かなものだ。
スタスタと早足で歩き続ければ、部屋まではあっという間だった。
物音で起こさないようにとそーっとドアを開けば、アキトは俺が出ていった時と全く変わらない体勢でスヤスヤと眠っていた。
手紙にも触れた様子は無いから一度も目は覚めていなさそうだな。そんな事を考えながら俺は魔力を練り上げた。口の中でボソボソと呟いて、全身に浄化魔法をかける。
これもすっかり習慣になったな。ここまで小まめに浄化魔法をかけるなんて昔なら考えられなかったが、アキトのおかげで俺も当たり前のようにやるようになっている。
ただそれだけの事で、胸の中が温かくなるような気がするんだから不思議なものだ。
ふふと思わず微笑みながら、俺はアキトを起こさないように細心の注意を払ってベッドの中に潜り込んだ。
ホッとした様子でへらりと笑ってみせるウィル兄に、俺も笑顔で口を開く。
「役に立てて良かったよ」
「本当にありがとう、すっごく助かった」
笑顔でお礼を言ってくれたという事は、どうやら話も終わりのようだ。この感じなら、そろそろ退室したいと切り出しても良さそう…かな?
俺は今眠っているアキトを、一人で部屋に置いてきてしまっているわけだからな。警備の厳しい領主城内だから、一人でいると危険だとかは無い。無いんだが、ただ俺がアキトと一緒にいたいんだよな。
できる事なら、今すぐにでも自室に帰りたい。そしてアキトの眠るベッドに潜り込んで一緒に眠りたい。
ここにいるのはウィル兄とクレットだけだし、色々と考えずにそのままそう言うか。そう決意した俺が口を開くよりも前に、ウィル兄が笑って口を開いた。
「ハル、早く帰りたいーって顔してるね」
「ああ、まあね」
「もちろん帰って良いんだけど、その前にもうひとつだけ!」
まだ何か用があったのかと思ったが、ウィル兄の視線は俺ではなくクレットがいる辺りに向けられていた。さっき俺が視線を向けていた場所を、しっかり覚えていたんだな。
「クレットは明日の報告会には、参加しなくて良いからねー」
ああ、そうか。家族だけなら俺が会話の橋渡しをできたかもしれないが、明日はジーラルとネルバ、それにダンも参加する。さらにその上、冒険者ギルドの関係者や魔道具技師まで来るなら、手信号でこっそり会話をするのも難しいだろう。
「俺が会話の橋渡しをできないからか?」
「うん、まあそうだね。ジーラルとネルバとダンだけなら、もしハルの手信号を見られても黙って飲み込んでくれると思うんだけど…ちょっと人が増えそうだからねー」
「なるほど」
「せっかく来てもらっても、俺達が反応できないのはクレットに申し訳ないからさー」
それにそうなると、ジルはクレットの事を気にしながら参加する事になるでしょ?と続けたウィル兄に、俺は思わず笑ってしまった。
もちろんクレットに申し訳ないという気持ちも確かにあるんだろうが、何よりも伴侶であるジルさんのためじゃないか。少し呆れてしまった俺と違い、クレットはそれは大問題ですねと真面目な顔で答えている。
そんな扱いで良いのか。
「それは大問題ですねって言ってるよ」
「さすがクレット、分かってくれてるねー」
「ウィリアム隊長の、私への気づかいに心から感謝します。今回の報告会には不参加とさせて頂きますね」
クレットの丁寧な言葉を伝えれば、ウィル兄はにっこりと笑みを浮かべた。
「報告会で方針が決まったらハルに伝言を頼むから、明日か明後日ぐらいには一度ハルの所に行ってくれるー?」
「もちろんです。では明日の夕方頃には、一度ハロルド様とアキト様の部屋の前に向かいますね」
「もちろんですって言ってるよ。ああ、夕方に俺達の部屋の前だな」
約束を取り付けた後は、俺はさっそく帰る事に決めた。部屋を出ようと歩き出すと、背後からウィル兄のおやすみーという間延びした声が追いかけてくる。
「ウィル兄もおやすみ。クレットも良い夜を」
「ありがとうございます、おやすみなさい」
部屋の前にいた侍従に声をかけて、俺はそのまま来た道を戻り始めた。さっき挨拶を済ませた警備しか立っていないから、帰り道は静かなものだ。
スタスタと早足で歩き続ければ、部屋まではあっという間だった。
物音で起こさないようにとそーっとドアを開けば、アキトは俺が出ていった時と全く変わらない体勢でスヤスヤと眠っていた。
手紙にも触れた様子は無いから一度も目は覚めていなさそうだな。そんな事を考えながら俺は魔力を練り上げた。口の中でボソボソと呟いて、全身に浄化魔法をかける。
これもすっかり習慣になったな。ここまで小まめに浄化魔法をかけるなんて昔なら考えられなかったが、アキトのおかげで俺も当たり前のようにやるようになっている。
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ふふと思わず微笑みながら、俺はアキトを起こさないように細心の注意を払ってベッドの中に潜り込んだ。
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