生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1283.【ハル視点】最高の朝食

 普段からたまに思う事なんだが…ラスの料理には、一体どれだけの種類が存在しているんだろうな?

 もし街中にある普通の食堂に入ってサンドイッチを食べようとしたら、その種類はおそらく多くても三種類ほどだろう。少なければ一種類のみなんて事も、普通にあり得る話だ。

 その地域ごとに、サンドイッチの味が変わるというのなら俺にも理解はできる。

 それはあくまでも地域によって手に入りやすい肉や魚を使っているとか、特産品である香草を多く入れているとかそういう違いによるものだからな。

 それなのに、目の前には本当に驚くほどの種類が並んでいる。

 それこそ王家主催の立食形式の晩餐会でなら、この種類の豊富さにも違和感は無いだろう。

 だがこれはあくまでも、ラスの孫?であるアキトと、その伴侶候補である俺のために、作ってくれた部屋で食べるための朝食だ。

 どれも美味いからもちろん文句は無いんだが、一体どれだけアキトの事を気に入っているんだろう。

 サンドイッチのひとつを摘まんで口の放り込んだアキトは、もぐもぐと口を動かした後嬉しそうに目を輝かせた。

「ハル、これ美味しいよ!」

 いや、今更だな。ラスはアキトを気に入っているし、アキトもラスを慕っている。それで良いか。

「これ?」
「そう、それ!中の野菜が美味しいんだけど、名前は分からない!」
「ちょっと待って、俺も食べてみるよ」

 そう言って笑いながら食べてみて食材の名前を教えてみたり、俺が美味しいと思ったものをアキトにお勧めしたりもしてみた。

「あ…このサンドイッチのソースって、アキトが昨日作ってくれたやつかな?」
「ん、たしかに、これはそうかも!マルックスにも合うね」

 おそらくこれは、香草で香り付けをしたマルックスをただ焼いたものだ。こんなに簡単な調理方法でも、このソースだとこれほど美味くなるんだな。驚いた。

「サンドイッチにも合うんだな…」
「ね、野菜にも合うから…もしかしてサラダにも合う?」
「うん、合いそうだね」
「今度サラダにもかけてみよっか」
「そうしよう」

 そんな風にラスから教わったソースの可能性に驚いたり、何故かいつもより美味しく淹れられた花茶をアキトに飲んでもらったりもした。

「いつものも美味しいけど、今日のは確かにすっごく美味しいね!」
「そうだよね…でも、なんでだろう?」

 完全に母に教わった通りの手順で淹れたので、一体何が違うのかが分からない。まあ味はすごく美味いんだが。

 ブツブツと分析しつつも花茶を飲んでいる姿に、アキトは楽し気に笑ってくれた。



 サンドイッチを食べ終えた後は、デザート代わりの果物へと手を伸ばした。

 別に相談した訳でもないのに、お互いに違う果物を手に取ったのは笑ってしまった。

 アキトが選んだのはナクルコだった。あまりアキト好みでは無いだろうなと思うぐらい、派手な色合いの皮に包まれた果物だ。

「へぇ、ナクルコか」
「うん、食料保存箱に置いてくれてたやつなんだ」
「そうなんだ。それにしても…アキトは器用に剥くね」

 普通はナイフで切って皮はついたまま食べるのにと感心していれば、アキトはふふと懐かしそうな笑みを浮かべた。

「元の世界でよく食べてたみかんっていう果物があってねーこういう剥き方で食べるんだよね」

 そんな事を説明してくれながらも、手は器用に皮を剥いていく。

「へぇ、似てる果物があったんだね」
「まあ、みかんの皮はこんなに派手な色じゃなかったけどね」

 困り顔で呟いたアキトの表情に、俺は思わず声をあげて笑ってしまった。

「そっか、本物のみかんは、アキト好みの落ち着いた色合いの皮だったって事だね?」
「そうそう。色で言うと…そうだなー夕陽みたいな色かな」

 アキトは穏やかにそう説明してくれる。夕陽のような色の皮をした果物か。それは美味しそうだな。

 アキトが器用にナクルコを剥いてくれている間に、俺は腕輪から取り出した調理用のナイフで皮ごと食べられる果物をどんどん切り分けていく。

 折角なら皿に盛り付けるかと、切り方を少しずつ変えて盛り付けていく。

 なかなかにうまくいったかもしれないなと満足して視線をあげると、いつの間にか作業を終えていたアキトがキラキラと目を輝かせていた。

「ハル、すごい!美味しそうだね」
「アキトが選んだ果物が良かったんだよ。色合いが綺麗だから」

 果肉が赤いものもあれば真っ白なものもある、黄色や淡いピンクなど彩りが綺麗だ。

 「いやいやハルの腕前でしょう?」

 二人でじっと見つめ合ってから、どちらからともなく笑い合う。なんでお互いにお互いのおかげだって言い合ってるんだろうな、俺達は。

 色々な種類を用意した果物は、お互いに食べさせ合いつつのんびりと堪能する事になった。
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