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1285.【ハル視点】全力疾走
自室を後にした俺は、足早に表の廊下をひたすらに突き進んでいく。
「ハロルド様、おはようございます」
「ああ、おはよう」
すれ違う警備や使用人に挨拶を返しながらも、足の速度だけは落とさない。
思った以上に時間が無いからな。もしできる事なら、このままこの廊下を全速力で駆け抜けてしまいたいぐらいだ。
だが表の廊下に関しては、緊急時以外に全力疾走なんてしてしまうとさすがに使用人に咎められるだろう。
しかも使用人から連絡が入る先は、あの執事長とメイド長だ。あの二人に二人がかりで怒られる事は、まず間違いない。さすがにこの年齢で、それだけは絶対に嫌だ。
そんな事を考えつつも階段を下りきった俺は、すぐに彫像の保管に使われている部屋へと足を踏み入れた。
この部屋の一番奥にある彫像の裏手には、知らなければ絶対に気付けないだろうと思うぐらい分かり難い隠し扉がある。
そしてその奥は、使用人たちが使う裏の廊下へと繋がっている。裏の廊下へと入った俺は、一気に速度をあげて駆け出した。
もちろん人とぶつからないように万全の注意と気配探知は必須になるが、裏の廊下は全力疾走をしても問題にならない。
「ハロルド様、おはようございます!」
「おはよう、すこし通らせてもらうよ!」
「ああ、報告会ですか!」
「そうなんだ!」
笑顔でそう声をかけてくれる使用人たちは、いきなり全力で駆けてくる俺を見ても特に驚いた様子も無い。
これはおそらく俺が近づいて来る前に、気配探知でしっかりと気づいているからだろう。
他の領ではまずあり得ない事だが、領主城のほぼ全ての使用人は気配探知を使う事ができる。例外となるのは、まだ見習いで現在勉強中である人だけだ。
つまり気配探知が出来なければ、一人前の使用人にはなれない。
そう聞くと条件が厳しいと思われるかもしれないが、見習いからすれば周りに気配探知を使える人や教えてくれる人がゴロゴロといる状況なわけだ。
苦手だ無理だと言ってていた人でも、問題なく使えるようになる。
だからここでは例え駆け抜けているのが俺でなくとも、急いでいる人がいればドアの中へ退避してくれたり道を譲ってくれたりするんだよな。
「間に合うと良いですなー!」
「ハロルド様、頑張ってください!」
「きっと間に合いますよ!」
そんな気安い応援の声も、あちこちからかけられる。
使用人たちも裏の廊下にいる時は、いつもよりもほんの少しだけ自然体で声をかけてくれるんだよな。それが嬉しくて、幼い頃からこの裏の廊下に入り浸っていたような気がする。
ありがとうと声援に答えつつ、俺は走り続ける。
「まだ領主様は到着されていませんよー!」
「ジーラルは寝坊したと慌ててたらしいです!」
どこで入手したのかそんな情報を教えてくれる侍従もいたりするので、一々お礼を言いながら駆けぬけた。
俺の組み立てた裏の廊下を使った道順の最終出口は、たくさんの酒が保管されている倉庫の中だ。
ここにあるのは特に高級品というわけでは無いが味が良く、保管されている量がとにかく莫大だ。
これは祭りなどの際に、市民たちに対して無料で振る舞われるものだ。
まあ全て魔導収納のつけられた木箱の中や棚の中にしまい込まれているから、見た目だけではここに酒があるとは分からないだろうが。
整然と並ぶ棚の間を抜けて、俺は部屋のドアを開いた。近くで警備に立っていた侍従が驚いた様子でこちらを見ている。ここから人が出てくるとは思わなかったんだろうな。
「おはようございます、ハロルド様」
「ああ、おはよう」
ここまで駆け抜けてきたとは気づかれないように笑顔でそつなく答えつつ、俺は今度はゆったりと歩き続けた。
予想していたよりも、裏の廊下で時間を短縮できたからな。これなら間違いなく間に合うから、急ぐ必要がなくなった。
もし息を切らしながら部屋に入っていけば、外部の人はともかく家族には遅れかけたんだとバレるからな。確実に揶揄われる。まあ後で使用人に聞かれてしまえば、口止めしたわけでもないし全力疾走していた事もバレるわけだが。
「ハロルド様、おはようございます」
「ああ、おはよう」
すれ違う警備や使用人に挨拶を返しながらも、足の速度だけは落とさない。
思った以上に時間が無いからな。もしできる事なら、このままこの廊下を全速力で駆け抜けてしまいたいぐらいだ。
だが表の廊下に関しては、緊急時以外に全力疾走なんてしてしまうとさすがに使用人に咎められるだろう。
しかも使用人から連絡が入る先は、あの執事長とメイド長だ。あの二人に二人がかりで怒られる事は、まず間違いない。さすがにこの年齢で、それだけは絶対に嫌だ。
そんな事を考えつつも階段を下りきった俺は、すぐに彫像の保管に使われている部屋へと足を踏み入れた。
この部屋の一番奥にある彫像の裏手には、知らなければ絶対に気付けないだろうと思うぐらい分かり難い隠し扉がある。
そしてその奥は、使用人たちが使う裏の廊下へと繋がっている。裏の廊下へと入った俺は、一気に速度をあげて駆け出した。
もちろん人とぶつからないように万全の注意と気配探知は必須になるが、裏の廊下は全力疾走をしても問題にならない。
「ハロルド様、おはようございます!」
「おはよう、すこし通らせてもらうよ!」
「ああ、報告会ですか!」
「そうなんだ!」
笑顔でそう声をかけてくれる使用人たちは、いきなり全力で駆けてくる俺を見ても特に驚いた様子も無い。
これはおそらく俺が近づいて来る前に、気配探知でしっかりと気づいているからだろう。
他の領ではまずあり得ない事だが、領主城のほぼ全ての使用人は気配探知を使う事ができる。例外となるのは、まだ見習いで現在勉強中である人だけだ。
つまり気配探知が出来なければ、一人前の使用人にはなれない。
そう聞くと条件が厳しいと思われるかもしれないが、見習いからすれば周りに気配探知を使える人や教えてくれる人がゴロゴロといる状況なわけだ。
苦手だ無理だと言ってていた人でも、問題なく使えるようになる。
だからここでは例え駆け抜けているのが俺でなくとも、急いでいる人がいればドアの中へ退避してくれたり道を譲ってくれたりするんだよな。
「間に合うと良いですなー!」
「ハロルド様、頑張ってください!」
「きっと間に合いますよ!」
そんな気安い応援の声も、あちこちからかけられる。
使用人たちも裏の廊下にいる時は、いつもよりもほんの少しだけ自然体で声をかけてくれるんだよな。それが嬉しくて、幼い頃からこの裏の廊下に入り浸っていたような気がする。
ありがとうと声援に答えつつ、俺は走り続ける。
「まだ領主様は到着されていませんよー!」
「ジーラルは寝坊したと慌ててたらしいです!」
どこで入手したのかそんな情報を教えてくれる侍従もいたりするので、一々お礼を言いながら駆けぬけた。
俺の組み立てた裏の廊下を使った道順の最終出口は、たくさんの酒が保管されている倉庫の中だ。
ここにあるのは特に高級品というわけでは無いが味が良く、保管されている量がとにかく莫大だ。
これは祭りなどの際に、市民たちに対して無料で振る舞われるものだ。
まあ全て魔導収納のつけられた木箱の中や棚の中にしまい込まれているから、見た目だけではここに酒があるとは分からないだろうが。
整然と並ぶ棚の間を抜けて、俺は部屋のドアを開いた。近くで警備に立っていた侍従が驚いた様子でこちらを見ている。ここから人が出てくるとは思わなかったんだろうな。
「おはようございます、ハロルド様」
「ああ、おはよう」
ここまで駆け抜けてきたとは気づかれないように笑顔でそつなく答えつつ、俺は今度はゆったりと歩き続けた。
予想していたよりも、裏の廊下で時間を短縮できたからな。これなら間違いなく間に合うから、急ぐ必要がなくなった。
もし息を切らしながら部屋に入っていけば、外部の人はともかく家族には遅れかけたんだとバレるからな。確実に揶揄われる。まあ後で使用人に聞かれてしまえば、口止めしたわけでもないし全力疾走していた事もバレるわけだが。
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