生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1286.【ハル視点】二つの会議室

 今日の報告会で使う予定の部屋は、普段から会議に使っているいつもの部屋では無い。

 位置的には、ちょうどその向かい側にあたる部屋だ。

 領主城には二つの会議室が存在している。

 普段から使っている部屋も今日の部屋も、どちらも会議や報告会で使うために作られた専用の部屋である事に違いは無い。うろ覚えではあるが、中の広さもほぼ同じぐらいだったはずだ。

 違っているのは、部屋の内装や設置されている家具の品質ぐらいか。

 普段使いの会議室の方は、装飾も少なければ家具もそれほど高価なものでは無い。とはいえ安物というわけでも無いんだが。細かい彫刻などはされていないし、絵などの美術品も何ひとつ飾られていない。

 一方で今日使う会議室の方は、装飾も多いし家具もかなりの高級品だ。家具はもちろん窓枠や扉に至るまで全てのものに細やかな彫刻が施されているし、室内には絵や花瓶などの美術品がそこかしこに品よく配置されている。

 うちの家族だけで会議を行う時や、騎士や衛兵、使用人を加えた領内の身内だけで行う時は、そのほとんどが簡素な方を使っている。

 その方が便利だし落ち着くからという、領主である父さんの意向だ。いや、正しくはあっちは派手すぎて口調が崩しずらいと母さんが言うから…なのかもしれないが。

 まあ、古株の使用人に聞いた話だと、うちの領主一家は代々そんな感じらしいけどな。つまり代々簡素な方の会議室を、愛用しているという事だ。

 ただ今回は少し話が違う。急遽決まった外部からの客人が、何人も参加するからな。

 きちんと歓迎しているという姿勢を見せるためにも、こういう時は華やかな方を使用する事になっている。

 それは俺も最初から分かっていたから、使う会議室がそちらになるだろうとは考えていた。

 だが、廊下を曲がると目に飛び込んできた光景には、少しだけ驚いてしまった。

 そこにいたのは、式典用の美しい鎧をきっちりと身にまとった騎士団員たちだった。騎士団員たちは使用する会議室までの廊下に、一定間隔を置いて並んでいる。

 普段なら警備役の侍従が立っている位置だ。おそらくこれも、歓迎しているという姿勢を見せるためだろう。

 近づいていくと、左右に立つ騎士たちは無言のまますっと敬礼をする。俺も同じく無言のまま敬礼を返しつつ、ゆっくりと廊下を歩いていく。

 歓迎のためだとしても、これは慣れていないとむしろ威圧感が無いか?大丈夫なのかと考えつつ部屋の前まで辿り着けば、そこには執事長であるボルトの姿があった。

「おはようございます、ハロルド様」
「ああ、おはよう…俺が最後か?」

 一応念のためにとそう尋ねてみれば、ボルトはふわりと笑って答えた。

「いいえ、ハロルド様が最後ではありません。それにお客様も、まだ誰も来られていませんのでご安心下さい」
「そうか、それは良かった」

 裏路地を全力で走り抜けてきた努力が報われたな。

「どうぞ、中へお入りになってお待ちください」
「ありがとう」

 ボルトは軽くノックをすると、答えを待たずにすぐにドアを開いてくれた。

 既に室内にいたのは、ウィル兄とジルさん、それにダンとネルバの四人だけだった。思ったよりも早く着けたようだ。

「おはよーハルー」
「ハル様、おはようございます」

 ウィル兄とジルさんは、覗き込んでいた書類から顔をあげるとすぐにそう声をかけてくれた。

「ああ、おはようウィル兄、ジルさん」
「ハル、遅刻しなかったねー?」

 楽し気に尋ねてくるウィル兄さんに、俺は笑ってまあなと返しておいた。まだ裏廊下を走っていたという情報が届いているわけでもないだろうに…何故バレたんだろうか。

 まあ別に隠している訳でもないから良いか。

「おはようございます、ハロルド様」
「おはようございます」

 ダンとネルバは俺が入室した時点でさっと立ち上がっていたんだが、挨拶が終わるのを待ってくれていたようだ。

「ああ、ダンとネルバもおはよう」

 挨拶を返しつつ、もう一度部屋の中を見回してみる。相変わらずの派手な室内にはやっぱり俺以外には四人の姿しかない。

 使用人から聞いたジーラルが寝坊したという話は、どうやら本当みたいだな。間に合うと良いんだがと考えていると、背後でバンッと音を立ててドアが開いた。

「間に合ったー!」
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