1,287 / 1,561
1286.【ハル視点】二つの会議室
今日の報告会で使う予定の部屋は、普段から会議に使っているいつもの部屋では無い。
位置的には、ちょうどその向かい側にあたる部屋だ。
領主城には二つの会議室が存在している。
普段から使っている部屋も今日の部屋も、どちらも会議や報告会で使うために作られた専用の部屋である事に違いは無い。うろ覚えではあるが、中の広さもほぼ同じぐらいだったはずだ。
違っているのは、部屋の内装や設置されている家具の品質ぐらいか。
普段使いの会議室の方は、装飾も少なければ家具もそれほど高価なものでは無い。とはいえ安物というわけでも無いんだが。細かい彫刻などはされていないし、絵などの美術品も何ひとつ飾られていない。
一方で今日使う会議室の方は、装飾も多いし家具もかなりの高級品だ。家具はもちろん窓枠や扉に至るまで全てのものに細やかな彫刻が施されているし、室内には絵や花瓶などの美術品がそこかしこに品よく配置されている。
うちの家族だけで会議を行う時や、騎士や衛兵、使用人を加えた領内の身内だけで行う時は、そのほとんどが簡素な方を使っている。
その方が便利だし落ち着くからという、領主である父さんの意向だ。いや、正しくはあっちは派手すぎて口調が崩しずらいと母さんが言うから…なのかもしれないが。
まあ、古株の使用人に聞いた話だと、うちの領主一家は代々そんな感じらしいけどな。つまり代々簡素な方の会議室を、愛用しているという事だ。
ただ今回は少し話が違う。急遽決まった外部からの客人が、何人も参加するからな。
きちんと歓迎しているという姿勢を見せるためにも、こういう時は華やかな方を使用する事になっている。
それは俺も最初から分かっていたから、使う会議室がそちらになるだろうとは考えていた。
だが、廊下を曲がると目に飛び込んできた光景には、少しだけ驚いてしまった。
そこにいたのは、式典用の美しい鎧をきっちりと身にまとった騎士団員たちだった。騎士団員たちは使用する会議室までの廊下に、一定間隔を置いて並んでいる。
普段なら警備役の侍従が立っている位置だ。おそらくこれも、歓迎しているという姿勢を見せるためだろう。
近づいていくと、左右に立つ騎士たちは無言のまますっと敬礼をする。俺も同じく無言のまま敬礼を返しつつ、ゆっくりと廊下を歩いていく。
歓迎のためだとしても、これは慣れていないとむしろ威圧感が無いか?大丈夫なのかと考えつつ部屋の前まで辿り着けば、そこには執事長であるボルトの姿があった。
「おはようございます、ハロルド様」
「ああ、おはよう…俺が最後か?」
一応念のためにとそう尋ねてみれば、ボルトはふわりと笑って答えた。
「いいえ、ハロルド様が最後ではありません。それにお客様も、まだ誰も来られていませんのでご安心下さい」
「そうか、それは良かった」
裏路地を全力で走り抜けてきた努力が報われたな。
「どうぞ、中へお入りになってお待ちください」
「ありがとう」
ボルトは軽くノックをすると、答えを待たずにすぐにドアを開いてくれた。
既に室内にいたのは、ウィル兄とジルさん、それにダンとネルバの四人だけだった。思ったよりも早く着けたようだ。
「おはよーハルー」
「ハル様、おはようございます」
ウィル兄とジルさんは、覗き込んでいた書類から顔をあげるとすぐにそう声をかけてくれた。
「ああ、おはようウィル兄、ジルさん」
「ハル、遅刻しなかったねー?」
楽し気に尋ねてくるウィル兄さんに、俺は笑ってまあなと返しておいた。まだ裏廊下を走っていたという情報が届いているわけでもないだろうに…何故バレたんだろうか。
まあ別に隠している訳でもないから良いか。
「おはようございます、ハロルド様」
「おはようございます」
ダンとネルバは俺が入室した時点でさっと立ち上がっていたんだが、挨拶が終わるのを待ってくれていたようだ。
「ああ、ダンとネルバもおはよう」
挨拶を返しつつ、もう一度部屋の中を見回してみる。相変わらずの派手な室内にはやっぱり俺以外には四人の姿しかない。
使用人から聞いたジーラルが寝坊したという話は、どうやら本当みたいだな。間に合うと良いんだがと考えていると、背後でバンッと音を立ててドアが開いた。
「間に合ったー!」
位置的には、ちょうどその向かい側にあたる部屋だ。
領主城には二つの会議室が存在している。
普段から使っている部屋も今日の部屋も、どちらも会議や報告会で使うために作られた専用の部屋である事に違いは無い。うろ覚えではあるが、中の広さもほぼ同じぐらいだったはずだ。
違っているのは、部屋の内装や設置されている家具の品質ぐらいか。
普段使いの会議室の方は、装飾も少なければ家具もそれほど高価なものでは無い。とはいえ安物というわけでも無いんだが。細かい彫刻などはされていないし、絵などの美術品も何ひとつ飾られていない。
一方で今日使う会議室の方は、装飾も多いし家具もかなりの高級品だ。家具はもちろん窓枠や扉に至るまで全てのものに細やかな彫刻が施されているし、室内には絵や花瓶などの美術品がそこかしこに品よく配置されている。
うちの家族だけで会議を行う時や、騎士や衛兵、使用人を加えた領内の身内だけで行う時は、そのほとんどが簡素な方を使っている。
その方が便利だし落ち着くからという、領主である父さんの意向だ。いや、正しくはあっちは派手すぎて口調が崩しずらいと母さんが言うから…なのかもしれないが。
まあ、古株の使用人に聞いた話だと、うちの領主一家は代々そんな感じらしいけどな。つまり代々簡素な方の会議室を、愛用しているという事だ。
ただ今回は少し話が違う。急遽決まった外部からの客人が、何人も参加するからな。
きちんと歓迎しているという姿勢を見せるためにも、こういう時は華やかな方を使用する事になっている。
それは俺も最初から分かっていたから、使う会議室がそちらになるだろうとは考えていた。
だが、廊下を曲がると目に飛び込んできた光景には、少しだけ驚いてしまった。
そこにいたのは、式典用の美しい鎧をきっちりと身にまとった騎士団員たちだった。騎士団員たちは使用する会議室までの廊下に、一定間隔を置いて並んでいる。
普段なら警備役の侍従が立っている位置だ。おそらくこれも、歓迎しているという姿勢を見せるためだろう。
近づいていくと、左右に立つ騎士たちは無言のまますっと敬礼をする。俺も同じく無言のまま敬礼を返しつつ、ゆっくりと廊下を歩いていく。
歓迎のためだとしても、これは慣れていないとむしろ威圧感が無いか?大丈夫なのかと考えつつ部屋の前まで辿り着けば、そこには執事長であるボルトの姿があった。
「おはようございます、ハロルド様」
「ああ、おはよう…俺が最後か?」
一応念のためにとそう尋ねてみれば、ボルトはふわりと笑って答えた。
「いいえ、ハロルド様が最後ではありません。それにお客様も、まだ誰も来られていませんのでご安心下さい」
「そうか、それは良かった」
裏路地を全力で走り抜けてきた努力が報われたな。
「どうぞ、中へお入りになってお待ちください」
「ありがとう」
ボルトは軽くノックをすると、答えを待たずにすぐにドアを開いてくれた。
既に室内にいたのは、ウィル兄とジルさん、それにダンとネルバの四人だけだった。思ったよりも早く着けたようだ。
「おはよーハルー」
「ハル様、おはようございます」
ウィル兄とジルさんは、覗き込んでいた書類から顔をあげるとすぐにそう声をかけてくれた。
「ああ、おはようウィル兄、ジルさん」
「ハル、遅刻しなかったねー?」
楽し気に尋ねてくるウィル兄さんに、俺は笑ってまあなと返しておいた。まだ裏廊下を走っていたという情報が届いているわけでもないだろうに…何故バレたんだろうか。
まあ別に隠している訳でもないから良いか。
「おはようございます、ハロルド様」
「おはようございます」
ダンとネルバは俺が入室した時点でさっと立ち上がっていたんだが、挨拶が終わるのを待ってくれていたようだ。
「ああ、ダンとネルバもおはよう」
挨拶を返しつつ、もう一度部屋の中を見回してみる。相変わらずの派手な室内にはやっぱり俺以外には四人の姿しかない。
使用人から聞いたジーラルが寝坊したという話は、どうやら本当みたいだな。間に合うと良いんだがと考えていると、背後でバンッと音を立ててドアが開いた。
「間に合ったー!」
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。