生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1288.【ハル視点】待機時間

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 静かな部屋に響き渡ったネルバの言葉は、どうやらしっかりとジーラルの耳にも届いたらしい。

 バッと声のした方へと視線を向けたジーラルは、まだ立ったままのネルバにすぐさま駆け寄ると口を開いた。

「あー、ネルバ!お前!!一緒の場所に来るって分かってたんだから、起こしてくれよ!」
「えー、僕はちゃんと言われてた時間に起こしたよ。でも起きたって言ってから二度寝したのはジーラルだろ?そこまで面倒は見れないって」
「ひどっ!それはひどいだろっ!」

 大げさに体を揺らしながら嘆いているジーラルに、ネルバは冷たい目で答えた。

「ひどくないって、一回起こしてあげただけでも、感謝して欲しいぐらいだよ」
「それは…うん、ありがとう」
「…えーっと…どういたしまして。ちゃんとお礼は言うんだね」

 大きく目を見開いたままぽつりと呟いたネルバの声に、部屋の中にいた全員が思わず噴き出してしまった。

「ああ、当たり前だろ!」

 何故か笑顔でそう返したジーラルに、皆がクスクスと笑い出す。

 かく言う俺も、ネルバと同じくちゃんとお礼は言うんだなと驚いたんだけどな。そういう所も、ジーラルらしいといえばジーラルらしいか。分かりやすくてまっすぐな性格だからな。

 何故笑われてるんだろうと不思議そうに部屋の中を見回したジーラルは、ハッと背筋を伸ばすなり口を開いた。

「遅くなりましたが、みなさまおはようございます。お騒がせして申し訳ありません」

 ああ、ここにいるのがネルバとダンだけじゃないと、今気づいたのか。もしかしたら少し寝ぼけていたのかもしれないな。

「ああ、おはよー騒がしいのは今はまだ気にしなくて良いんだけど、ボルトのお説教からは逃げない方が良いよー?」
「に、逃げません!…そんな恐ろしい事…」

 よほどボルトが怖かったのか、少し震えながら答えたジーラルにウィル兄は重々しく頷いた。

「その方が良いね。小さい頃に逃げた事があるんだけどね…逃げない方が絶対に被害が少ないからね。素直に怒られる事をお勧めするよー」
「ああ、そうだな…その方が良い」

 昔を思い出しながら遠い目をした俺とウィル兄の姿を交互に見たジーラルは、ご忠告に感謝しますと神妙な声で答えた。

 現役の騎士すら怯えさせる執事長なんて普通に考えてあり得ないと思うんだが、ボルトはその例外だからな。

 それにしてもジーラルは報告会が終わったら、すぐにボルトの説教になるって事か。可哀想だとは思うが、頑張れ。



 俺達は部屋の中の椅子に座って、のんびりと他の参加者を待つ事になった。外部の客人が来るとはいえ、ボルトがノックで知らせてくれるからな。音がしたらすぐに立ち上がれば問題無い。

「後は父さんと、ファーガス兄さんと、マティさんか?」

 指折り数えながら尋ねれば、ジルさんがすぐに首を振った。

「いえ、マチルダさんは今回はこちらには不参加です」
「そうなのか?」
「はい。今日は私の代わりに、本隊の荷物の手配を指揮して頂いていますから」

 ああ、なるほど。今回の報告会は、単純な報告が終わってもそのまま終了とはならないだろう。まず間違いなく、そのまま会議にもつれこむ。その上どんな発言をするか予想のできない、外部の客人が何人も来るからな。

 正確な会議の記録を作成して残す必要があるからこそ、ジルさんがこちらに来れるようにと配慮してくれたんだろう。

 俺も記録を取る役をやった事はあるが、ジルさんほどの速さと丁寧さでは無理だからな。

「そっか、マティ姉さんには、後でちゃんとお礼言っておかないとなー」
「ええ、私からももちろん言いましたが…ぜひ後でウィリアム隊長からも言ってください」
「…ジル、まだ隊長呼びじゃなくても良くないー?」
「いえ、いつお客様が来られるか分からないんですから」

 ジルさんにそう言われたウィル兄は、そっかーと寂し気に呟いている。

 いつも通りの二人のやり取りを眺めていると、ノックの音が響いた。俺達は全員がすっと立ち上がり、入ってくる人を出迎えるための体勢になった。

「おはよう、みんな」

 堂々と室内へと入ってきたのは、ファーガス兄さんだった。

「うん、全員揃っているな」

 ファーガス兄さんは満足そうに薄っすらと笑みを浮かべた。
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