生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1291.【ハル視点】弾む会話

 他の客の到着を待つ間、俺とファーガス兄さんとウィル兄さん、そしてジルさんの四人はマルクさんと歓談する事になった。

 クリスという共通の話題が見つかった事で、マルクさんの緊張も良い感じに解けてきたようだ。

 魔道具技師でありながら店長もしているというだけあって、マルクさんは緊張さえしていなければ社交性の高い人だった。

 物怖じせずに話してくれるマルクさんに、自然と会話も弾んでくる。

 ちなみにダンとジーラルとネルバの三人は、わざわざ少し距離を取った場所に移動して腰を下ろしている。

 今も小声であれこれと話しているようだが、その会話の内容は俺達の座っている場所にまでは聞こえて来なかった。

 おそらくそのために、あえて少し距離を取って座ったんだろうな。

 俺達のためというよりは、たくさんの初対面の人に囲まれるマルクのための配慮だろう。

「おお、あの本を読んだという人には初めて会いました」
「私もです!」
「それでは…あの…エリトスという魔道具技師によって書かれた魔道具の説明書という本は読まれましたか?」
「もちろんです。あれは素晴らしい本ですね。魔道具に詳しくない私でも最後までしっかりと楽しく読めましたから」
「あれはたしかに素晴らしいですよね!詳しい構造も惜しみなく説明しつつも、性能についても詳しく載っていて」
「そうなんです。あの本のおかげで魔道具の原理を知る事ができましたから」

 わいわいと本の感想で盛り上がっているのは、マルクさんとジルさんだ。どうやらこの二人は、読む本の趣味や傾向が似ているらしい。

 魔道具の説明書というその本は、読書会の時に棚に置かれていたのをぼんやりと覚えてはいるんだが、俺は読んだ事の無い本だ。

「あの本を読んでからダンジョンと魔道具の本を読み直すと、新しい発見があるんですよ」
「それは良い事を聞きました。もう一度読み直してみますね」
「ぜひぜひ、絶対に損はしないと思います」

 わーっと一気に盛り上がっている二人のやりとりを、ウィル兄はニコニコ笑顔で見つめている。ほんの少しだけ意外だったんだが、どうやらウィル兄はマルクさんに対しては特に嫉妬はしないようだ。あの距離感で騒いでいれば、妬く事もあるんだけどな。

「気が合いそうな人とお知り合いになれて良かったねー、ジル」

 そう言いながらもウィル兄さんは微笑ましそうに二人を見守っている。マルクさんは下心が無さそうだから――だろうか。謎は謎のままだが、揉めるよりは良かったのかもしれないな。

 本の話題がひと段落したところで、ウィル兄が不意に口を開いた。

「あ、魔道具と言えばさーこないだダンジョンから入手した用途不明の魔道具があるんだよねー」
「そうなんですか…その魔道具の鑑定はされましたか?」
「うん、一応商業ギルドにしてもらったんだけど、詳しい事までは分からなくてねーそういう事ってあるの?」

 商業ギルドの鑑定士で分からないのか…それはかなり厄介だな。

「ええ、鑑定士に魔道具の知識が無い場合は、例え鑑定スキルがあっても分からないという事はたまにありますね」
「あーやっぱりそうなんだ?」
「絶対にとは言いきれませんが、もしよろしければ私に見せて頂ければ鑑定いたしますよ?」
「あーじゃあ後で頼もうかなージル、良いよね?」
「もちろんです。正式に仕事として依頼させて頂きますね」
「見るだけなら依頼じゃなくても大丈夫ですよ?」
「それは駄目です。せっかくの縁をそういう利用の仕方はしたくないですから」

 はっきりとそう言いきったジルさんに、マルクさんは目を何度かパチパチとしてからふわりと笑った。

「ではそれは仕事として受けさせてもらいますね」
「うん、そうしてー」

 そんな風に和やかに会話を楽しんでいると、またしても部屋のドアがノックされた。

 ボルトのお客様が到着されましたという声かけに、俺達は全員揃ってすっと立ち上がった。

 マルクは招かれた客人側だからそのまま座っていても特に問題は無いんだが、どうやら俺達と一緒に立って待つつもりのようだ。

「冒険者ギルドの皆様です」

 そんな声かけと共に室内に入ってきたのは、明らかに強そうな頑強な肉体を持つ前衛らしき男と、細身ながら筋肉が綺麗についた後衛らしき青年、そして小柄でまるでこどものように見える一人の女性だった。
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