生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1298.【ハル視点】ウィル兄の説明

 キースとアキトの無事を知った客人たちが安心した所で、ボルトはおもむろに口を開いた。

「では、みなさま。説明を続けさせて頂きますね」

 元々特に冷たかったというわけではないんだが、声が優しくなった気がするのは気のせいだろうか。いや気のせいでは無いな。これはきっと、客人たちのさっきの態度が影響しているんだろう。

「ああ、頼む」

 父さんに向かってひとつ頷いたボルトの説明は、どこまでも簡潔で分かりやすかった。

 まず騎士と衛兵、使用人の混合部隊をつくり、演習を装い街を出てアジトに向かった事を説明し、そこで盗賊たちを捕縛して攫われた二人を保護して帰ってきた事を告げた。

 どうやらリヤンとルピカさんは、演習に行ったという話については聞いていたらしく、あれはそういう意味があったのかと何度も頷いていた。コーデリアさんとマルクさんは、知らなかったと呆然としていたが、別にあれは知らなくても問題ないと思うぞ。

 そのあたりまでは良い作戦だなと笑って聞いてくれていたんだが、そこから後があまりにも衝撃的な話が続くんだよな。

 ボルトの怒涛の説明に、客人である四人の口は、ぽかんと開きっぱなしになってしまった。

 だがまあ、驚くのも無理は無い。

 『盗賊団のアジトに隠すように設置されていた魔道具が、すごく珍しい転移のできる魔道具だった』と言われたんだからな

 その時点で、なぜそれが転移の魔道具だと分かったのかとか、盗賊団が何故そんな価値のあるものを売らずに使用していたのかとか、聞きたい事は色々とあっただろう。

 それでも四人は、何も尋ねずにぐっと我慢してくれたようだ。もしかしたら最後まで説明を聞いてから、改めて尋ねるつもりだったのかもしれない。

 そんな状況で付け加えられる追加の情報が、『その魔道具の転移先は既に先行部隊で確認したが、ムレングダンジョンの中に繋がっている』というものだ。

 正直に言えば、俺も自分の目で見ずに話だけを誰かから聞いたなら、そうそう信じられないだろうなと思うような話だ。

 何なら寝ぼけて夢でも見たんじゃないかと、普通に相手に尋ねそうなレベルの話だからな。

「ここまでが前提となります。続いて先行部隊のリーダーを務めていたウィリアム様より、先行部隊が得た情報についてお話し頂きます」

 話を振られたウィル兄は、はーいと手をあげた。いつでも自分のペースを守るウィル兄らしい緩い返事に、リヤン以外の客人はすこし驚いているようだ。

「じゃあ話すねー転移の魔法陣のその先には、盗賊団の隠れ家がある可能性が高い。そう考えた俺達は、ひとまず騎士の恰好で行くのはまずいと考えたんだ」
「ああ、なるほど」
「騎士が動いたと知れば、すぐさま盗賊たちが逃げてしまうし、何なら被害も拡大する可能性があったからねー」

 そう説明するウィル兄に、みんなはうんうんと頷いている。話し方はやっぱりすこし緩いけれど、ウィル兄は順序立てて説明するのが得意だからな。

「それで…リヤンには怒られるかもしれないけど…冒険者風の恰好をしてその魔道具に潜ってみたんだよねー」

 ちらりと顔色を伺ったウィル兄に、リヤンは別に怒らねぇよと苦笑を洩らした。

「それこそもし盗賊が冒険者の恰好をしているとかなら、俺だって怒るし全力を出してでも潰しにかかる。だが犯罪に関わらないなら特に問題はないな。ただ服装がそれっぽかっただけ…だろ?」

 リヤンはニヤリと笑ってそう言いきった。冒険者ギルドのギルマスがそれを言って良いのかとは思うが、ありがたいから文句は無い。

「それに、先行部隊にはハルもいたんだろ?」
「ああ、参加してたよ」
「現役の冒険者に案内されてダンジョンに入ってみた冒険者風装備の奴なんて、数えるのも馬鹿らしいぐらいいるから気にするな」
「そっか、ありがと、リヤン」
「礼を言われるほどの事でもないんだよな…」

 苦笑しているリヤンに、ウィル兄はそれでもお礼は言っておくねーとマイペースに返した。

「それで…その魔道具の転移先が、ボルトさんの言ってたムレングダンジョンだったって事か?」
「うん、そう。ムレングダンジョンの中だったよ」

 ウィル兄は鉱石や素材の話も織り交ぜつつ、ムレングダンジョンで間違いない事を説明した。

「後は、何階かが知りたいんだが」
「99階だったよー」
「…それはまた、なんで分かったんだ?」
「親切な冒険者を助けたら、教えてくれたんだよねー。ね、ハル」
「ああ、そうだな。気の良い冒険者達だったよ」

 そう答えれば、リヤンは大きく目を見開いた。
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