生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1299.【ハル視点】シーランたちの話

「もしその冒険者の名前やパーティー名が分かるのなら、教えてもらう事はできないだろうか?」

 もちろん無理にとは言わないがと、リヤンは控え目にそう付け加えつつ尋ねてきた。

「ハル、どう思う?」

 ウィル兄は名前を呼ぶなり、ちらりとこちらを見た。シーランたちの事を話しても大丈夫かと、冒険者のやり方に慣れている俺に確認したかったんだろう。

 答えを返す前に、俺は俺の判断を待っているリヤンに視線を向けた。

「リヤンが確認したいのは、その冒険者達が信頼できる相手かどうかなんだろう?」
「ああ、そうだ。99階層を活動階層にしている冒険者パーティーはいないはずだからな」

 なるほど。リヤンはそれが気になっていたのか。それにしてもムレングダンジョンに潜っている冒険者パーティーはかなり多いはずなんだが、ちゃんとどこの階層を活動階層にしているかを把握してるんだな。

「先に言っておくが、彼らとは対等の取引をした。ここで俺達が名前を言う事で、あの冒険者パーティーに不利益は起きないとリヤンが断言してくれるなら、名前を言っても良いんだが…」

 念のためにとあえて持ち出した面倒な条件に、リヤンは考える間もなくすぐさま頷いた。

「もちろんだ。俺の名前と剣、それに役職にかけて誓おう」

 しかもあっさりと誓いの言葉まで口にするとは。

「ルピカ、コーデリア、それにマルクさんも、ここで知った冒険者名については他言無用で頼みたい」

 リヤンの声かけに、名前を呼ばれた三人はすぐさま頷いた。

 よし、これで準備は終わったな。

「ウィル兄、話して大丈夫だ」
「えー、一番あの冒険者たちと話したのはハルでしょー?ハルが説明した方が良くない?」

 あ、なるほど。そう言われるとそれもそうだな。

「分かった。では俺から説明させてもらおうかな。俺達が出逢った冒険者パーティーのリーダーは、シーランと名乗った」
「シーラン!?シーランが99階層にいたのか?」

 リヤンは明らかに驚いた様子だし、ルピカさんも大きく目を見開いている。

「他のパーティーメンバーの名前は分かるか?」
「副リーダーのラオ、双子のアデンとハレン…それから交渉担当のエールだな」

 ここまでくれば隠す必要もない。俺はゆっくりと指を折り曲げながら、名前を上げていった。

「あー…それは…シーランのパーティーだな」
「何故99階層にいたんだ…?」

 ルピカさんは不思議そうに、ぽつりとそう呟いた。別に質問などでは無くただこぼれた独り言のような言葉だったが、それにリヤンさんが答えた。

「それも気になるが…正直、俺はエールが交渉担当だと知っている事の方が気になる…」

 ああ、そうか。リーダーのシーランが元気なら、エールが交渉担当だと気付く事すら無いのか。

 実際にエールを可愛がっているパーティーメンバーの様子しか見ていなかったら、俺は交渉担当のエールではなく最年少のエールと言っていただろう。

「ハル、シーランは…無事なんだな?」

 確かめるように尋ねてきたリヤンに、俺はこくりと頷いた。

「ああ、無事だよ」
「…くわしく教えて欲しいというのは…無茶だろうか?」
「んー…いや、大丈夫じゃないかな。たぶんシーランは、きちんとリヤンに報告をあげるだろうから。そもそも俺達が別口で調査の依頼を受けてると思ってて、それでも色々と教えてくれたぐらいだから隠すつもりは無いと思う」

 むしろわざわざ言わなくても良い事まできっちりと説明してくれたのは、俺達からどこかに報告があがると期待していた可能性が高い。

「そうか…では頼む」
「俺達が出逢った時は、シーランはポズナーラの毒を浴びていたんだ。毒消しポーションは使い切ってしまったからと、偶然出会った俺達に取引を持ちかけてきた」
「99階層にいてポズナーラに襲われた…だと?」
「ああ、天敵がいるのにあり得ないと、双子もそう言っていたよ」
「だろうな」
「俺達と取引した毒消しポーションで毒は完治したし、倦怠感も無いと喜んでいた」
「そうか…予備分も取引したのか?」
「ああ、使った分以外の二本は取引したし、最後にウィル兄がお礼に三本渡してたから、五本は持ってる状態だったよ」
「五本もあれば、あいつらなら無事に帰ってくるな…本当にありがとう」

 ホッとした様子のリヤンに、俺達は笑って情報の対価だから気にするなと答えた。
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