生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
1,301 / 1,561

1300.【ハル視点】問題点

「これはそのシーランたちのパーティーが気づいた事なんだが…」

 まずはそう前置きをしてから、俺はムレングダンジョンの99階層の広さが以前よりも狭くなっているらしいと報告をした。

「それは…確かなのか?」

 真剣な表情でそう尋ねてきた父さんに、俺はすぐに確かだと答えた。

「アデンとハレンが書いた地図を見せてもらったんだが、間違いなく以前よりも狭くなっていたよ」
「リヤン、そのアデンとハレンという冒険者の地図の腕前は、どの程度だ?」

 あの精密な地図を、自分の目で見たわけでは無いからな。父さんがそこを気にかけるのは、当然と言えば当然だろう。リヤンは父さんからの質問に、すぐさま口を開いた。

「あの二人の書いた地図なら、信頼度は冒険者ギルドの冒険者たちの中でもトップクラスだ。誤差はとにかく少ないし、細かい情報の書き込みも多いからな」

 滅多に人には見せないが、ギルドには定期的に報告をあげてくれている良い奴らだとリヤンはどこか誇らしげに続けた。

 あの時あの地図を見せてくれたのは、やっぱりリーダーのシーランを助けた事へのお礼だったんだな。

「そうか。現時点では盗賊団のものとは断定できないが、つまりムレングダンジョンの99階層に謎の隠れ家があるという事だな」
「そうだな。シーランたちはポズナーラもその隠れ家の持ち主たちが仕組んでいるんじゃないかと疑っていた」
「罠にポズナーラを使う…か…厄介というか…そいつら全員ぶちのめしてぇな」

 低い声でぼそりと呟いたリヤンは、明らかに殺意の滲む鋭い目をしていた。この調子だと、盗賊団をぶちのめすために自分もダンジョンに潜ると言い出しそうだな。まあリヤンは間違いなく戦力になるから、俺たちはもちろん歓迎だが。

「99階層に本隊を向かわせるのは確定だな」
「うん、それは確定で良いんだけど…一つだけ問題があるんだよねー」

 ウィル兄さんは言い難そうにしながらも口を開いた。

「問題?」
「聞かせてくれ」
「うん、俺は70階層までしか潜った事がなくて、ハルも50階層までしか潜った事が無かったんだよねーこの意味分かる?」

 ウィル兄の言葉に、事前に話を聞いていた俺以外の全員がえっと声をあげた。

「そんな俺のムレングダンジョンの手帳型魔道具の記録がこちらでーす」

 ふざけたような言葉と共に、ウィル兄はさっと取り出した手帳をパッと開いてみせつけた。そこには99階層の文字がきっちりと刻まれている。これは俺のも見せるべきだろうな。腕輪から取り出した手帳を、俺も見やすいようにと開いてみせた。

「俺のはこれだ」
「…つまり、その盗賊団の魔道具で転移すれば、いきなり99階層に直接潜れると…?」
「うん、そういう事になるよねー」

 あっさりとそう言うと、ウィル兄はダンとジーラル、ネルバに順番に視線を向けた。

「みんなはさ、あの時よりも前に99階層は超えてたのー?」
「私は既に超えていました」

 ダンは階層までは口にはしなかったが、すぐさまそう答えた。陰護衛の関係でムレングダンジョンに潜る事もあるのかもしれないな。

「私も110階層までは」
「同じく110階層でした」

 休日に騎士仲間たちと一緒にムレングダンジョンに潜っていたらしく、ジーラルとネルバはちょうど同じ階層だったらしい。

「それはたしかに問題…だな…」

 父さんは重々しくそう呟いた。

「その魔道具の存在を一般には完全に隠し通すか、もしくは何か規則を作って99階層までは楽に潜れると広く公開するか…か?」

 ダンジョンに詳しいファーガス兄さんは、指を下りながらそう呟いた。

「あとは、魔道具の移設がもし可能なら、どこかに移動させてこっそり利用するという手もあるよー」

 ウィル兄さんの提案も、確かに理にかなったものだ。

 それに、もうひとつ選択肢があるよな。誰も言わないなら俺が言うかと、口を開く。

「…揉めるぐらいなら、存在が広まる前にいっそ壊すという手もある」
「ハル、それは…」
「さすがにもったいなくないー?」

 ファーガス兄さんとウィル兄からは、本気かと言いたげな視線を向けられた。だが意外にもそれも良いかもしれないなと同意したのは、父さんとリヤン、そしてルピカさんだった。

「ルピカさんも同意するんだな?」
「ああ、99階層にいきなり放り込まれて、生き残れる人ばかりとは限らないからな」

 冒険者の人命を優先すると、ルピカさんはあっさりとそう言い放った。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。