生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1301.【ハル視点】魔道具技師

「そう言われると確かにそうだな」

 ルピカさんの意見を噛み締めるようにしばらく考えた後、ファーガス兄さんはぽつりとそう呟いた。

「えーでもさー…もし移設が可能なら街の近くに隠して設置とかしておけばー緊急時には役立つかもしれないよね?」

 そうすればダンジョンで何か問題があったってなっても、すぐに動けるでしょとウィル兄は続けた。

 その意見にも、確かに一理あるな。

 まあ危険が一切無いとは言いきれないからさすがに領主城の中には設置できないが、それならどこか設置する場所を決めて警備を強化すれば良い。

 いや、もしくは何かしらの理由をつけて、壁の外にそれ専用の建物を建てるというのもありかもしれない。

「今までならダンジョンまで移動してから転移していたのが、街の近くからいきなり99階層に飛べる…か…。確かにそれは役立つだろうな」

 父さんはうんと一つ頷いてみせた。

「移設が不可能で誰かに悪用される恐れがあるなら、最終的には壊すのも選択肢には入れておきたいな」
「ああ、そうだな」
「それで良いんじゃないか?」
「ここで相談しても結論は出ないだろうからな」

 とりあえずの方向性が決まった所で、父さんが口を開いた。

「マルクさん、魔道具の専門家としての意見を聞かせて貰えるか?」
「実物を見てみないと…何とも言えませんね、魔道具の中には一度設置してしまえば二度と動かす事はできないものもあれば、何度でも移設できるものもありますから…」

 はっきりとお答えできなくてすみませんと口にしたマルクさんに、父さんは謝罪は必要無いと慌てて答えている。

「こんな少しの情報で、絶対にこうだと言いきれる方がおかしい」
「ご理解ありがとうございます」
「魔道具でダンジョン内に転移できるというのは、今までに聞いた事はあるか?」
「いえ、ありませんね。森から森へ、川から海へという例は聞いた事がありますが…ダンジョン内とは初めて聞きました」
「そうなのか、やはり今回は異例だと思った方が良いんだな」
「間違いなくそうだと思います」

 父さんとマルクさんの会話は、ぽんぽんとテンポよく進んでいく。

 そんな二人のやり取りを見守っていた俺は、マルクさんの堂々とした態度に密かに感心していた。

 ついさっき初対面を済ませたばかりの領主からの質問に、ここまで堂々と答えられる領民がいったい何人いるだろうか。

 しかもその領主は、英雄と言われて本にまでなっているような有名人だ。

 勝手に萎縮して、喋る事すらできないなんて人も見た事がある。周りからは同情の視線が向けられていたのをよく覚えている。

「マルクさん、情報に感謝する」
「いえ、そんな…」
「もう一つ尋ねたいんだが…ムレングダンジョンまで一緒に来てくれるような…腕の良い魔道具技師の心あたりはあるかな」

 ストファー魔道具店なら、魔道具技師の知り合いも多いだろう?そう続けた父さんに、マルクさんは悩む様子もみせずにすぐさま答えた。

「それなら、私がみなさまと一緒に潜らせて頂きます」
「それは…良いのか?今回マルクさんを呼んだのは、魔道具の情報を聞くためで本隊に参加させるためでは無いんだが」

 無理をしていないかとまっすぐに目を見つめながら尋ねた父さんに、マルクさんは無理はしていませんと笑顔で頷いた。

「マルクさんは、ムレングダンジョンに潜った事はあるのか?」

 ファーガス兄さんは、明らかに心配そうな表情で横から尋ねた。そうだな。どう見てもマルクさんは強いようには見えないからな。

「護衛をきっちりと雇った上で、浅い階層にしか潜った事はありません。戦闘は…得意では無いですね…私では足を引っ張る事になりますか?」

 元冒険者の魔道具技師もいますがと、マルクさんは続けた。

「でも魔道具技師としての腕前はマルクさんの方が上なんだろう?」

 思わず横からそう声をかければ、マルクさんはにっこりと笑ってもちろんですと言いきった。そういう所は職人らしいな。

「正直強さよりも、魔道具技師としての腕前の方が大事だよね?」
「たしかにそうだな」

 軽くそう尋ねてみれば、父さんはすぐに頷いた。強さだけなら周りを強い人たちで固めれば良いだけだからな。

「分かった。もし来てくれるなら、もちろん護衛の騎士達を付けるけど…絶対に危険が無いとは言いきれないんだーそれでも、参加してくれる?」

 最終確認であるウィル兄からの質問に、マルクさんはすぐに答える。

「はい、ぜひ」

 意思の強いその目も、クリスに似ているな。ウィル兄が護衛を付けると言っていたけれど、俺もマルクさんの事はきちんと気にかける事にしよう。
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