生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1303.【ハル視点】進捗確認

「頼りになる参加者が増えたな」

 満足そうにそう口にした父さんは、手元に用意していた書類に視線を落とした。

「これで魔道具と隠し部屋への対策は良しとして…あとは…本隊が出発する日程の決定がまだだな」

 父さんはそう言いながら、ちらりとファーガス兄さんに視線を向けた。

「本隊に参加予定の騎士たちと衛兵たちには、報告会に来る前に明日以降一週間以内に出発予定だと既に通達を出してきた。今頃はいつ出発になっても良いようにと、それぞれが準備を進めてくれているはずだ」

 衛兵の方にも信頼できる伝令を出してあると、ファーガス兄さんは淀みなく流れるように答えた。

「そうか、機転を効かせてくれて助かった。参加者の一覧は、後でもう一度確認させてくれ」
「分かった、後ほど執務室に持っていく」

 あっさりとそう答えたファーガス兄さんの言葉にひとつ頷いた父さんは、今度は部屋の隅に座っているジルさんに視線を向けた。

「ジルさん、物資の準備については進み具合はどうだろう?」

 静かに報告会の記録を取ってくれていたジルさんは、声をかけられるとパッと顔をあげて立ち上がった。

「物資の準備は順調です。さすがに全ての準備が既に終わっているわけではありませんが…例え明日出発すると言われても、十分に対応が可能な程度です」
「さすが、ジルだねー」

 父さんが返事をするよりも前に、ニコニコ笑顔のウィル兄さんが横からそう声をかけた。

 ジルさんは何故このタイミングでと言いたげに一瞬だけ眉を寄せたが、周りの目を考えてか文句を口にはせずにじとっとウィル兄さんを見つめた。

 何を言っているんですか?今は外部からの客人もいる報告会の途中なんですから、しっかりしてください、ウィリアム隊長。

 視線だけでもそう言いたいのが、伝わってくるな。ウィル兄もジルに怒られちゃったと、嬉しそうにニコニコしているからそう的外れでも無いだろう。

 全く堪えていないウィル兄の様子をみたジルさんが口を開きかけた時、父さんが声をかけた。

「ウィルではないが、私もさすがジルさんだと思うよ」

 まさか父さんにもそう言われるとは思っていなかったのか、ジルさんはビクッと体を揺らしてから答えた。

「いえ、マティさんを始め、騎士、衛兵、それに使用人たちがそれぞれ率先して動いてくれましたので…お誉めの言葉はそちらにお願いします」
「えーでもジルが頑張ってるから手伝ってくれたんでしょー?俺が指揮してたら、そこまで率先して動いてくれないって」

 あっさりとそう言って笑ったウィル兄を見て、ジルさんはむっと顔色を変えた。

 こういう場でそういう事を言うなとついに怒られるんだろうなと思って見守っていたんだが、ジルさんの口から飛び出したのは予想外の一言だった。

「いいえ、ウィリアム隊長が指揮しても、みんな喜んで動いてくれます!自分自身の力とみなさんの能力をきちんと信じてください!」
「…ごめんなさい、ジル」

 すこしふざけただけだったんだろうが、ウィル兄は肩を落としてそう謝った。

「いえ、私も…熱くなってすみませんでした」
「ううん、ありがとう」
「…その…みなさまも…お騒がせしてしまい申し訳ありません」
「俺もごめんなさい」
「気にしなくて良い。伴侶のためを思って怒れるのは、むしろ良い事だと思うよ」

 父さんは微笑ましそうに笑いながら、一連の二人のやりとりを見守っていたからな。伴侶愛が深いジルさんを見て、良かったなウィルなんて思っていそうだ。

 ちなみに俺たちのちょうど向かい側に座っているリヤンは、朗らかに笑っている。

「いやーやっぱりお前らは仲が良くて良いよなー」
「どうぞお気になさらずに」

 すぐさまそう答えたのは、ルピカさんだ。その隣のコーデリアさんはといえば、良い伴侶関係なのねと余裕の表情で微笑んでいる。うん、自分は大人だと言うだけあって大人の対応だな。

 一番動揺していたのはマルクさんだ。はたして今のやりとりを自分が見て良かったのかと言いたげに、うろうろと視線を彷徨わせていた。どうやらこういう場面には慣れていないようだ。それでもジルさんの方を見ながら、何とか大丈夫ですという言葉を搾り出していた。

 ダンとジーラルとネルバは、慣れた様子で楽しそうに二人を見つめていた。さすが隊長と副隊長なんて声も聞こえてきたが、あれはジーラルだろうな。すかさずネルバに足を蹴られていたのには、少しだけ笑ってしまった。
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