生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1308.【ハル視点】ウマの話

 ギュームのウマ好き具合をもちろん知っているキースも、俺たちの説明に納得した様子で頷いてくれた。

「ギュームらしいよね」

 楽しそうに弾む声で、シュリもそう同意してくれた。その言葉にアキトもうんうんと頷いているから、たったあれだけの説明で全員が納得してくれたらしい。

 こんなに早く理解して貰えるとは、思ってなかったな。

「用意もせずに一人で飛び出して行ったわけじゃないなら、良かったよ」
「はい、安心してください。騎士にも声をかけると言っていましたから」

 俺に向かって笑顔で答えたクレットの言葉を、シュリは隣のキースに伝えている。うん、さっきから気になってはいたんだが、やっぱり気のせいじゃなさそうだな。

「さっきからずっと気になっていたんだが…シュリ」
「ん?なに?」
「さっきからずっとクレットの話した事を、キースに伝えてくれてたよな?…シュリも、俺やアキトと同じように幽霊の声が聞こえるのか?」
「うん、きこえるし…クレットのすがたもみえてるよ」

 隠すでもなく、シュリはあっさりとそう教えてくれた。

「やっぱりそうなのか」
「えっとねー」

 シュリは淡々と、けれど分かりやすく、自分の能力について教えてくれた。

 説明を聞いている最初のうちは、その能力はシュリのような人の言葉を理解するウマだけのものだと思っていた。だがどうやらそうでも無いみたいだ。

 普通のウマのなかにも、そういうウマもいるんだと言われた時には正直に言って驚いた。

「へぇ、幽霊の姿が見えて声が聞こえるウマもいるんだな」

 だが少し考えてみると、思い当るウマも普通にいるな。

「…そういえば、もの言いたげに一点を見つめているウマがいたな…」
「え、そうなの?」
「ああ、トライプール騎士団で世話をしているウマの中に、思い当るウマがいるよ」

 騎手の指示にはすぐに従ってくれる優秀なウマなのに、ある時だけはじっと近くの木を見つめて動かなかった事があった。

 もしかしたらあれはと思い出しながら話してみれば、シュリはすぐに頷いた。

「それはたぶんみえてたんだろうね」
「シュリもそう思うか?」
「うん、きっとそうだよ」
「あの頃は俺も幽霊が見えていなかったから、魔物の気配でもしたのかと思ってそのまま流したんだ」
「それはしかたないよ」

 見えない人は気付けないから、それで良いんだよとシュリは穏やかに続ける。

「俺が幽霊の時は騎士団の厩舎には行かなかったからな。クレットは、どうだ?ウマからの視線を感じると思った事はあったか?」

 クレットはええとすぐに頷いた。

「厩舎にはあまり来た事がなかったんですが、そう言われれば森の中で野生のウマにじーっと見つめられた事はありましたね。あの時はただの偶然だろうと思っていましたが」

 そうだよな。人にも一切見えない幽霊の姿が、一部のウマには見えてるなんてそうそう想像できるものでは無い。何ならウマの視線を感じたと思った事すら、寂しさから来る思い込みだと判断しそうだ。

「俺も見られていた覚えはない…いや、アキトに懐いていた馬車のウマにはじとっと見られた事があったような…あれはそういう?」

 確か名前は…ヨウだったか。やけに視線を感じるなと思った事はあったが、その時は気のせいだろうと判断したんだよな。

「ああ、ヨウだね。綺麗な白馬なんだよね」
「そう、そのヨウっていうウマだ」
「んー…そのヨウってうまも、みえてそうだね」

 シュリの言葉に、アキトはすぐに口を開いた。

「それは予想外だなー見えてるのって聞いてみたくなる」

 ワクワクした嬉しそうな声に、シュリも弾む声で答えた。

「きいてみたらいいよ」

 例え人の言葉で返事はできなくても、言葉は理解している。だから、動きで答えてくれると思うよとシュリは語った。

 そうだな。それは良いかもしれない。アキトはきっとワクワクしながら、笑顔で声をかけるんだろうな。ヨウもアキトには甘いようだったから、きっと楽しそうに答えるだろう。

 ふと視線を感じてアキトの方を見てみれば、ヨウに会いに行きたいなと顔に書いてあった。そのあまりにも分かりやすい表情が可愛くて、俺は笑いながら口を開いた。

「トライプールに帰ったら、二人でヨウに会いに行ってみようか」
「うん、そうしたいな」



「ハロルド様、報告会は問題なく終わりましたか?」

 話が途切れた所で、クレットが不意にそう尋ねてきた。ウィル兄から参加しなくて良いと言われていたから来なかったが、本当は聞きにきたかったんだろう。

「ああ、報告会自体は何の問題も無く終わったよ。ただ…」
「ただ…?」
「急な話だが、明後日には本隊が出発する事になった」
「え、明後日!?」
「そうなんだ。もう本隊の準備もある程度出来ているらしい。それならできるだけ早い方が良いという判断だそうだ」

 焦った盗賊団が何をするか分からないからと続ければ、クレットはすぐに頷いてくれた。

「明後日の出発ですね。私も同行するという案に変更はありませんか?」
「ああ、変更は無い。クレットにもよろしく頼むとウィル兄からの伝言を預かっている」

 そう答えた俺に、クレットは綺麗な敬礼を返してみせた。
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