生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1313.対策会議と食パン

「うーん、領主である身なのに、街でそんな事が起こっている事すら知らなかったとは…申し訳ないな」

 ケイリーさんは本当に申し訳なさそうに、ぽつりとそう呟いた。

「いや、それは…詮索されないようにと、その人たちがあえて目立たないように立ち回っていたから――情報が上がって来なかったんじゃないか?」

 ファーガスさんの言葉に、それは分かっているがそれでも気付くべきだったとケイリーさんは答えた。

「まあ、父さんのその気持ちは分かるんだが」
「もっと色々な対策を考えて、将来的には故郷の情報を無料公開するなんて選択肢を選ばなくても良いようにしたいな」
「ああ、確かにそれは重要だ。アキトと同郷の人たちの権利を、もっとしっかりと守る仕組みが必要になるだろうな」

 ケイリーさんとファーガスさんは、真剣な表情でそう言い合っている。食事会というよりもすごく重要な内容の会議室のような雰囲気になってる。

「ええ、その辺りについては、もう少ししっかりと対策を練っておきたいですね」

 ジルさんがそう言えば、ウィリアムさんはそれなら具体的にこういう対策はどうかなー?とすぐに口を開いた。

 ウィリアムさんは頭の回転が速いというか、考え方が柔軟なんだよね、きっと。指を折りながら、ぽんぽんといくつかの対策をあげていく。

 そんなやりとりを黙って聞いていたマチルダさんも、すかさず私はこんな対策が必要だと思うと自分の意見を口にしていた。みんなすごいな。

 感心していると今度はキースくんが口を開いた。

「そういえばこんな話が本に乗ってたんだけどね…」
「なるほど、それなら…」
「いや、だがそれには問題が…」

 俺と同じような異世界出身者の権利を守るためにと、みんな親身になって色々と考えてくれてるみたいだ。会話もどんどん白熱している。

 その気持ちは、うん、すごくありがたい。すごくありがたいんだけど、この手の中にあるふかふかのパンがどうしても気になって集中できずにいるんだよね。

 俺にも関係のあるみんなの会話を無視してぱくりと齧りついたりは、さすがにできないんだけどね。

 でもこんな焼きたてのパンなんて、そうそう巡り合えるものじゃないからね。よっぽど運が良くないと、お店で焼きたてには出逢えないから。

 思わずじっと手の中のパンを見つめてしまっていた俺に気づいたのか、ハルが苦笑しながら口を開いた。

「ねえ、それももちろんすごく大事な話だとは思うけど、今は食事を優先しない?」

 控え目に声をかけたハルに、みんなはハッとした様子で視線を交わした。

「ああ、それもそうだな」
「せっかく料理人たちが気持ちを込めて作ってくれた料理なんだ、堪能しないとな」
「止めてくれて良かったよー、ハル」
「ええ、本隊が出発する今日にする話では無かったですね」
「料理人たちに失礼だよね」

 口々にそう言ったみんなは、そのまま食事に戻ってくれた。

 音は出さずに口パクだけでハルにありがとうと告げれば、ハルからも口パクでどういたしましてと返ってきた。

 よし、みんなも食パンを食べてるみたいだし、俺も。

 そう思ってふわふわの食パンに齧りついてみた俺は、あまりの驚きに息を飲んだ。

 えー…焼きたての食パンって…こんなに美味しいの?びっくりするぐらいの美味しさに、思わずパッとハルに視線を向ける。

「アキト、目がキラキラしてるよ?」
「すっごい美味しい!ハルも食べて!」

 まだ食べてないよね?と勢い込んで尋ねてみれば、ハルはうん、まだだねと笑って答えてくれた。じっと見つめる俺の視線にも動じず、ハルはぱくりと食パンに齧りついた。

「これは…サイクに貰ったのとはまた違うな?」
「ね、こっちの方がウカのミルクが多い感じがするし…もしかして粉も違うのかも?」
「そうなのか…奥が深いな、しょくぱん」

 感心するハルの横から、ファーガスさんがひょこりと顔を出した。

「ん?サイクから…しょくぱんを貰って食べたのか?いったいいつ?」
「はい、あの湖が綺麗なダンジョン内で、一緒に食事をした時に…」
「あの魔鳥ルダリオンを倒してきた日だよ」

 ハルも横からそう言葉を添えてくれたけど、ファーガスさんは更に不思議そうな表情に変わった。

「ハルもアキトも…あの時点ではサイクと面識は無かったよな?」
「はい、無かったです」
「ああ、そうだな」
「それなのに…何故食事を共にする事になるんだ?」

 本当に不思議そうなファーガスさんの質問に、魚を釣った事やその魚は捌いたほうが美味しいと教えてくれた事、そして捌けない俺達のために魚を解体してくれた事を告げる事になった。

 説明は全部ハルがしてくれたんだけどね。
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