生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1314.心配

 ハルの説明を聞き終えたファーガスさんは、珍しく深いため息を吐いた。

「相手がサイクだったから良かったが…」

 もっと警戒心を持てと続きそうなファーガスさんの言葉を、ハルが遮った。

「もちろんその辺りはきちんと見極めた上で…だよ。俺が捌いてやろうかって最初に向こうから言われていたらもっと疑っていたさ」

 ハルはそう言うと、さらに説明を続けた。

 二人で焼いて食べようと話していた魚が、セトルという魚だった事。その魚は図鑑には焼けば食べられると記載されているが、内臓を取ってから焼かないと味がかなり落ちるという自分たちも知らない事を教えてくれたんだと話す。

「セトルかー、たしかに美味しい魚で、焼けば食べられるって書かれてたよね」

 図鑑を読むのが大好きなキースくんは、納得顔で頷いている。

「それは…図鑑の内容としてどうなんだ?」

 それも図鑑に載せておくべき内容なんじゃないかと、マチルダさんは不思議そうな表情でそう呟いた。

「うん、載ってたら嬉しいけど、毒のある魚と違って食べられる魚は説明が短いんだよ」
「そうなのか、さすがキースは詳しいな」

 ニコニコ笑顔のマチルダさんに褒められたキースくんは、へへーと照れ笑いを浮かべた。

「魚図鑑っていう本には、そういう細かい事も載ってたような気がするなー」
「え、そんな本があるの?」

 ウィリアムさんの呟きに、誰よりも早く反応したのはやっぱりキースくんだった。

「たしか部下の騎士が持ってたような…?売ってる場所を聞いて探してみるねーもし入手できなかったら、借りれるか聞いてみるよー」
「…っ!ありがとう、ウィル兄さん!大好き!」
「わー末っ子からの大好き嬉しいなー」

 ふふふと温かく笑ったウィリアムさんは、本隊が帰ってきてからになるけどできるだけ早く対応するよと続けた。

「あ、ごめんなさい、話の邪魔しちゃった…」

 ハッとした表情でこちらを見てそう言うキースくんに、俺達は揃って気にしてないよと首を振って答えた。

「それで?」
「持って帰ってラスに調理して貰おうかって話をしてたら、もし良ければ俺が捌いてやろうか?って聞かれたんだよ。ね、アキト」
「うんうん、すごく親切な人だなーって思ったよね」

 横からそう言葉を添えれば、ハルとキースくん以外の全員から苦笑を貰ってしまった。だから警戒心を持てって思われてそうだな。

「一応その時点では、俺はまだ警戒してたんだけどな…その後でサイクの方からもしかしてファーガスの弟か?って聞かれたんだよ」
「ああ、そこで私の友人だと分かったのか」
「まあね。もちろん言葉を全て信じたわけでは無かったが、マチルダさんがダンジョンに一緒に潜っている事も知っているようだったし、ムレングダンジョン内の事にも詳しかったからな」

 あの時、ハルはそんな事まで考えてたんだ。そっか。それは俺の警戒心がないって思われても、仕方ないのかもしれない。

「そうか、それなら良かった」

 ふうと安堵の息を洩らしたファーガスさんに、みんなが自然と笑みを浮かべる。俺とハルの事を、本当に心配してくれてたんだな。

「アキトくん、アキトくん。このパンふわふわで美味しいね!」

 小さな声でそう声をかけられた俺は、すぐにキースくんに視線を向けた。

「ね、ふわふわで美味しいよね。軽く表面を焼いても美味しいんだよ」
「え、そうなの?こんどラスに頼んで焼いて貰おうかな」
「お願いしてみようか」

 ラスさんが食パンに手を加えてくれたら、もっと美味しい調理法がたくさん生み出されると思うんだよね。そう考えるとワクワクしてくる。

「アキトくん、今度一緒にラスに言いにいこう?」

 可愛いお願いにすぐに頷いて約束を交わした俺は、ずらりと並んでいる料理に目を向けた。

 食パンに感動しちゃって他のお皿に全く目が行ってなかったけど、それ以外の料理もどれも美味しそうだ。

 新鮮な野菜で作ったパリッとしたサラダ、スープはさっぱりなスープと濃厚なスープの二種類が用意されていた。

 これから本隊として遠征する人たちのためなんだろうけど、これは夜ごはんの量じゃないかなと言いたくなるぐらい豪華な肉料理もあったよ。
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