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1319.部屋を出る前に
「それじゃあ…そろそろ待ち合わせ場所に向かおっか?」
そう尋ねれば、ハルはそうだねと言いながらこちらを振り返った。
「えっと、待ち合わせは…領主城の門の所でって言ってたよね?」
「ああ、騎士と使用人の参加者は、一度はそこに集まるはずだよ」
「ん?一度は…?」
一度はってどういう意味?予想外だった言葉に思わず立ち止まって首を傾げれば、ハルはすぐに説明してくれた。
「その後は、父さんとファーガス兄さん、マティさんが、一部の騎士を連れて大門まで行進する事になるんだ」
「へー行進とかするんだね?」
別に行進する事自体に文句があるとかじゃないんだけどね。
でも、ケイリーさんなら、そういうのこそ無駄だって言いそうじゃない?必要ないってあっさり言う姿が、簡単に想像できるというか。
そう思って尋ねてみれば、ハルはきちんと理由はあるんだよと口を開いた。
「大規模に人を動かす時は毎回するんだけどね。もしかしたらどこかで危険な事が起きているのかもしれない――見ている人たちにそんな誤解を抱かせないために、あえて落ち着いて移動している所を見せるんだ」
そうすれば少なくとも差し迫った危険では無いと分かるだろうと、ハルは続けた。
ああ、そっか。大勢の人を連れた領主様が、大急ぎで街を駆け抜けて行ったりしたら、確かにいったい何事だーってなるよね。
それこそスタンピードでも発生したのかーとか、ありえないような強い魔物が出たのかーとか、そんな風に思われる可能性がありそうだ。
「なるほど」
「前にアキトとキースを助けに行った時も、出発こそ領主城前だったけど一応街中は行進したんだよ」
「え、そうなんだ」
それは…できれば見たかったな、なんて思ってしまった。
「ちなみに今日の本隊の移動については、すでに昨日の一日をかけて領都の住民たちに広く周知されているよ。見送りに来る住民も多いかもしれないね」
「へーもうそんなに広まってるんだ」
感心しながら頷いていた俺は、ふと気になって尋ねた。
「今回の遠征は…何のためって説明されてるの?」
さすがに行進をしてたとは知らなかったけど、キースくんと俺を助けに来てくれたあの時は演習に行くって説明だったって前に聞いてたからね。今回の理由は一体何なんだろうって気になってたんだ。
「ああ、今回も演習のためだよ」
前と同じ理由で良いの?と思ったけど、そこはケイリーさんとマチルダさん、それにジルさんが相談して決めたんだって。
「正確に言うなら…あの遠征で連携を確認する事の重要性が分かった。だからもっと大規模に演習をやるべきだという、領主様の判断って事になってる」
ハルはそう言うと、俺を安心させるかのようにニコリと笑ってから続けた。
「説得力もある説明だし、そこは誰も疑わないと思うよ。仮に盗賊団を捕縛できたら、演習中に出逢ったって言えるからね」
「教えてくれてありがとう、ハル」
「どういたしまして」
引き留めてしまったなと考えながら、俺はちらりとハルの取り出した時計型の魔道具に視線を向けた。
うん、まだもうちょっとぐらいなら時間があるかな。ちょっと恥ずかしいけど頑張ろう。こっそりと気合を入れなおしてから、俺はくいっとハルの手を引いた。
「ん?」
魔道具からパッと視線を外してこちらを向いてくれたハルに、俺は少し背伸びをしながらそっと触れるだけの口づけをした。
静かな部屋にチュッと小さな音が鳴る。
ハルは驚いた様子で大きく目を見開いていたけれど、次の瞬間蕩けるような笑顔に変わった。
「…出発前にアキトから口づけしてくれるのは、珍しいね。嬉しいけど」
幸せそうな笑顔のハルに、俺は何でもないような顔をして声をかける。
「ハル、絶対元気に帰ってきてね?」
「ああ、もちろん。アキトも元気で待っててね」
「うん、ちゃんと勝手に街に行ったりしないよ」
見送った後もちゃんとジルさんやキースくんと一緒に帰るからと告げれば、そうして欲しいなと可愛くお願いされた。
「…ごめん、アキト」
「ん?」
「足りない」
そう言い放ったハルに深く口づけられたせいで、俺達は二人揃って待ち合わせ時間に遅刻しかけたんだけどね。
裏の廊下を駆使させてもらったおかげで、何とかぎりぎりで間に合ったよ。
そう尋ねれば、ハルはそうだねと言いながらこちらを振り返った。
「えっと、待ち合わせは…領主城の門の所でって言ってたよね?」
「ああ、騎士と使用人の参加者は、一度はそこに集まるはずだよ」
「ん?一度は…?」
一度はってどういう意味?予想外だった言葉に思わず立ち止まって首を傾げれば、ハルはすぐに説明してくれた。
「その後は、父さんとファーガス兄さん、マティさんが、一部の騎士を連れて大門まで行進する事になるんだ」
「へー行進とかするんだね?」
別に行進する事自体に文句があるとかじゃないんだけどね。
でも、ケイリーさんなら、そういうのこそ無駄だって言いそうじゃない?必要ないってあっさり言う姿が、簡単に想像できるというか。
そう思って尋ねてみれば、ハルはきちんと理由はあるんだよと口を開いた。
「大規模に人を動かす時は毎回するんだけどね。もしかしたらどこかで危険な事が起きているのかもしれない――見ている人たちにそんな誤解を抱かせないために、あえて落ち着いて移動している所を見せるんだ」
そうすれば少なくとも差し迫った危険では無いと分かるだろうと、ハルは続けた。
ああ、そっか。大勢の人を連れた領主様が、大急ぎで街を駆け抜けて行ったりしたら、確かにいったい何事だーってなるよね。
それこそスタンピードでも発生したのかーとか、ありえないような強い魔物が出たのかーとか、そんな風に思われる可能性がありそうだ。
「なるほど」
「前にアキトとキースを助けに行った時も、出発こそ領主城前だったけど一応街中は行進したんだよ」
「え、そうなんだ」
それは…できれば見たかったな、なんて思ってしまった。
「ちなみに今日の本隊の移動については、すでに昨日の一日をかけて領都の住民たちに広く周知されているよ。見送りに来る住民も多いかもしれないね」
「へーもうそんなに広まってるんだ」
感心しながら頷いていた俺は、ふと気になって尋ねた。
「今回の遠征は…何のためって説明されてるの?」
さすがに行進をしてたとは知らなかったけど、キースくんと俺を助けに来てくれたあの時は演習に行くって説明だったって前に聞いてたからね。今回の理由は一体何なんだろうって気になってたんだ。
「ああ、今回も演習のためだよ」
前と同じ理由で良いの?と思ったけど、そこはケイリーさんとマチルダさん、それにジルさんが相談して決めたんだって。
「正確に言うなら…あの遠征で連携を確認する事の重要性が分かった。だからもっと大規模に演習をやるべきだという、領主様の判断って事になってる」
ハルはそう言うと、俺を安心させるかのようにニコリと笑ってから続けた。
「説得力もある説明だし、そこは誰も疑わないと思うよ。仮に盗賊団を捕縛できたら、演習中に出逢ったって言えるからね」
「教えてくれてありがとう、ハル」
「どういたしまして」
引き留めてしまったなと考えながら、俺はちらりとハルの取り出した時計型の魔道具に視線を向けた。
うん、まだもうちょっとぐらいなら時間があるかな。ちょっと恥ずかしいけど頑張ろう。こっそりと気合を入れなおしてから、俺はくいっとハルの手を引いた。
「ん?」
魔道具からパッと視線を外してこちらを向いてくれたハルに、俺は少し背伸びをしながらそっと触れるだけの口づけをした。
静かな部屋にチュッと小さな音が鳴る。
ハルは驚いた様子で大きく目を見開いていたけれど、次の瞬間蕩けるような笑顔に変わった。
「…出発前にアキトから口づけしてくれるのは、珍しいね。嬉しいけど」
幸せそうな笑顔のハルに、俺は何でもないような顔をして声をかける。
「ハル、絶対元気に帰ってきてね?」
「ああ、もちろん。アキトも元気で待っててね」
「うん、ちゃんと勝手に街に行ったりしないよ」
見送った後もちゃんとジルさんやキースくんと一緒に帰るからと告げれば、そうして欲しいなと可愛くお願いされた。
「…ごめん、アキト」
「ん?」
「足りない」
そう言い放ったハルに深く口づけられたせいで、俺達は二人揃って待ち合わせ時間に遅刻しかけたんだけどね。
裏の廊下を駆使させてもらったおかげで、何とかぎりぎりで間に合ったよ。
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