ひつじと姫。

ユウガ三

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1. 猫の″姫″と人間の″姫″

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  一週間前から突如 俺は見知らぬ小学生と暮らす事になった。犯罪の匂いがぷんぷんしているだろうが 断じて違う。断じて違う!!

  俺の部屋を、我が物顔でぶん取り くつろぐこいつを見れば 俺が無実…いや、むしろ被害者だという事が分かるだろう………。

  こいつ曰く、自分には前世の記憶があって その記憶を頼りにここまで来たらしい…。
自分の前世は猫だったと…そして、名前は″姫″…ーーー。
  俺が、昔 飼っていた猫だった。
  姫は大切な家族の一員であり、その中でも 最も姫に愛情を注いでいたのが 俺だった。
どこに行くにしても、何をするにしても、俺と姫はいつも一緒だった。
  …しかし、姫は俺が高校生になる頃に事故で死んでしまった……。

  その姫が生まれ変わり、人間となって 俺に会いに来たというのだ…。
確かに 確認してみても、俺と姫しか知らない秘密や場所も こいつは知っていた…。

  でも…ーーー。


「…っ、姫って…こんな憎たらしい感じだったか。もっと素直で可愛らしい感じの猫だったと思ったんだが………?」

「何を言ってる。僕の事を″姫″と名付け そのように育てたのは お前じゃないか。」

  見た目は普通の子どもだ。
口を開くと、とても小学生とは思えないがな…うん、可愛気の無いガキだ。
  ただ、やはり姫の生まれ変わりという事か 黙ってさえいれば それはそれは とても美しい容姿をしている…まぁ、そりゃあ 姫の生まれ変わりなら 当たり前だな。

  その容姿は 大きな瞳に陶器のような白い肌、美しい漆黒の髪と…まるで人形のような姿だった…。男の子だが、顔立ちは中性的だ。
  女の子の服を着ても いけるんじゃないか……?まぁ、俺にそんな趣味は無いが…。


「あのなぁ…いい加減、お前の家族も心配するぞ?」

「両親は今 海外で仕事中だ。いつ帰ってくるかも分からないし、小学校は寮があるところに入れられたから 僕は 一人暮らしみたいなものなんだ。」

  一人、か…こんな子どもが………。

「じゃあ、寮に帰りなさい。一週間も学校 無断で休んでんだろ? 先生とか…友達とか、心配してるだろうし…な?」

「嫌だ!僕はここで暮らす。」

「…はぁ………。」

  この一点張りで 一週間。
そして、この記録はこれからも毎日 更新され続けるであろう…ーーー。

  結局、何だかんだで許してしまう俺がいて…まだ半信半疑ではあるが 俺も 姫に会いたかったんだろうな……。

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