9 / 9
世界樹を昇る死人1断片
しおりを挟む
あの日、ミチノの肌から、生の感触が消え去った。ハタヤのナイフは確かにミチノをとらえた。心臓からわずかにそれていたとはいえ、死ぬはずだった。事実、ミチノは倒れて、心臓が停止していたらしい。だが、1時間後の霊安室で、ミチノは目を覚ましてしまった。この時、ミチノは「ここは天国か、地獄だと思ったよ」と友人のヤマシロに語っている。歩いてミチノは家に帰り、翌日の新聞では死体が消えたと小さく報道された。ミチノは、あえて真実を伝えることもしなかった。施設を管理していた所長たちは処分されることになる。だが?ハタヤの追跡から逃れることができるのはミチノにとって望ましい。赤鬼、青鬼と呼ばれて、当時のタブラロサでは絶大な力を誇った2人だった。そして、親友だった。ハタヤは、なぜ私を殺したのだろうか?ミチノはずっと考えていた。そもそも、あのハタヤが?とまだ信じられない気持ちでいる。けれど、ミチノは思う。タブラロサをハタヤはしっかりとまとめていくだろうし、世界の潮流を止められない。
天空に届くといわれる樹がある。22世紀に生えはじめたと研究者は言う。今は樹のてっぺんは成層圏まで達していると言われているが、あまりにも危険なために周囲は立ち入り禁止である。福岡県福岡市東区は、こうして、ゴーストタウンとなった。発見されてから、どんどん伸びていく樹は注目の的となり、マスコミをにぎわしたが、植物学の権威である都留博士に「ただの樹」であると判断されてから、メディアも報道しなくなる。ミチノはなぜ東京から、この地を目指したか?夢である。ハタヤに刺されて、目覚めてから、眠るたびに、樹の夢を見る。
樹の上には、羽の生えた温かい存在がいる。肉体を持っているようで、その実、触れることは不可能である。「ありがとう」と言い続けている。頭上に赤い球体が見える。下を見ると澄んだ青が見える。この夢を見たとき、快晴の日遠くから撮影されたアカルビジン(大樹の名前)を偶然見た。フジシマという写真家の展覧会だった。無料なのに惹かれて、入ったが、フジシマの写真はすべてアカルビジンの樹だった。アカルビジンという名前は世界中から5万通にもおよぶ応募の中から選ばれた。その選考方法に問題があるとして、今なお議論は出ているが……。とりあえず、日本としては、アカルビジンで落ち着き、世界の国々も所有権のある日本がそう決めたならと、追認するようになった。
すでに風雨で痛みきったコンクリートの道路を歩いている。車は1台も走っていないし、歩いている人もいない。ミチノは海岸線からボートで、福岡県福岡市東区に近づいた。今では福岡県福岡市東区は「絶対禁止領域」と呼ばれている。この呼称は、インターネットの匿名掲示板から、人の口をとおして広まったらしい。ミチノはお腹がすいたので、どうしようかと立ち止まる。空は澄んだ青で、美しさに少し感傷的になる。少し休もうとして、スーパーに入る。人がいなくなって、どんな状態か、心配だったが、スーパーは静寂に包まれながらも、保存食などは、まだ店頭に並んだままだった。(生鮮食品はすべて取り払われていたが)。缶詰をあけて、サバを食べる。味噌味。うまい、とミチノは座りこむ。ミチノはハタヤに殺されてから、自分の身に何が起こったのか、いまいちわかっていない。ミチノは不死身になったのか?それとも、すでに死んでいるのか?もう一つの可能性も考えてみた。ミチノの心臓が1時間にわたって、停止していたのは嘘で、すべて何者かによる報道操作という説。
大樹を見上げた。さすがに根元から見ると、異様に大きい。根元に動くものがある。近づいてみると、人だ。20人ほどだ。「こんにちは」挨拶すると1人が振り返る。「お~。来たのかい。地球最後の楽園に」「ようこそ!アカルビジンへ」口々に笑顔で、手荒い祝福をしてくれる。「私が聞くのもおかしいのだけど、ここは立ち入り禁止のはずだけど?」みんな固まる。「ははは。僕らは、ここに入ってきた人間ではないよ。もともと福岡市東区の住民さ。政府の立ち退きに反対していたら、政府も僕らを放って行ってしまった。だから、僕らは、この樹とともに過ごしているんだ」「食べ物はどうしているんだい?」ミチノがたずねると、鼻の長い老人が、手を出す。葉っぱが握られている。「これは?」「世界樹の葉だよ。これを食べると、空腹がおさまる。もつのは、1日ほどだね。僕らを見てくれ、2ヶ月葉だけで生活しているが、やせ細っているわけでもないだろう?まあ、ベジタリアンにはなってしまったし、肉が恋しいという者もいるがね」ミチノは驚いて、葉をもらい食べてみる。「麻婆豆腐の味がする」「そうなんだ!食べたいものをイメージすれば、その味が味わえるんだよ。すごいだろう!!」若いスキンヘッドの男が言う。「君も私たちの街に来るといい。歓迎するよ」ジーパンを履いた女が微笑む。ミチノは「じゃあ」と人々の後をついていく。 樹の根元といっても広大だ。20分ほど歩くと建物が見えてきた。木造の建物。巨大な樹のビル。ミチノはつくづく寄り集まった人間というのは、恐ろしい力を発揮するものだな、と驚嘆する。
新しい風の音色は少し調子外れだ。ミチノは当たり前のようになじむ。
天空に届くといわれる樹がある。22世紀に生えはじめたと研究者は言う。今は樹のてっぺんは成層圏まで達していると言われているが、あまりにも危険なために周囲は立ち入り禁止である。福岡県福岡市東区は、こうして、ゴーストタウンとなった。発見されてから、どんどん伸びていく樹は注目の的となり、マスコミをにぎわしたが、植物学の権威である都留博士に「ただの樹」であると判断されてから、メディアも報道しなくなる。ミチノはなぜ東京から、この地を目指したか?夢である。ハタヤに刺されて、目覚めてから、眠るたびに、樹の夢を見る。
樹の上には、羽の生えた温かい存在がいる。肉体を持っているようで、その実、触れることは不可能である。「ありがとう」と言い続けている。頭上に赤い球体が見える。下を見ると澄んだ青が見える。この夢を見たとき、快晴の日遠くから撮影されたアカルビジン(大樹の名前)を偶然見た。フジシマという写真家の展覧会だった。無料なのに惹かれて、入ったが、フジシマの写真はすべてアカルビジンの樹だった。アカルビジンという名前は世界中から5万通にもおよぶ応募の中から選ばれた。その選考方法に問題があるとして、今なお議論は出ているが……。とりあえず、日本としては、アカルビジンで落ち着き、世界の国々も所有権のある日本がそう決めたならと、追認するようになった。
すでに風雨で痛みきったコンクリートの道路を歩いている。車は1台も走っていないし、歩いている人もいない。ミチノは海岸線からボートで、福岡県福岡市東区に近づいた。今では福岡県福岡市東区は「絶対禁止領域」と呼ばれている。この呼称は、インターネットの匿名掲示板から、人の口をとおして広まったらしい。ミチノはお腹がすいたので、どうしようかと立ち止まる。空は澄んだ青で、美しさに少し感傷的になる。少し休もうとして、スーパーに入る。人がいなくなって、どんな状態か、心配だったが、スーパーは静寂に包まれながらも、保存食などは、まだ店頭に並んだままだった。(生鮮食品はすべて取り払われていたが)。缶詰をあけて、サバを食べる。味噌味。うまい、とミチノは座りこむ。ミチノはハタヤに殺されてから、自分の身に何が起こったのか、いまいちわかっていない。ミチノは不死身になったのか?それとも、すでに死んでいるのか?もう一つの可能性も考えてみた。ミチノの心臓が1時間にわたって、停止していたのは嘘で、すべて何者かによる報道操作という説。
大樹を見上げた。さすがに根元から見ると、異様に大きい。根元に動くものがある。近づいてみると、人だ。20人ほどだ。「こんにちは」挨拶すると1人が振り返る。「お~。来たのかい。地球最後の楽園に」「ようこそ!アカルビジンへ」口々に笑顔で、手荒い祝福をしてくれる。「私が聞くのもおかしいのだけど、ここは立ち入り禁止のはずだけど?」みんな固まる。「ははは。僕らは、ここに入ってきた人間ではないよ。もともと福岡市東区の住民さ。政府の立ち退きに反対していたら、政府も僕らを放って行ってしまった。だから、僕らは、この樹とともに過ごしているんだ」「食べ物はどうしているんだい?」ミチノがたずねると、鼻の長い老人が、手を出す。葉っぱが握られている。「これは?」「世界樹の葉だよ。これを食べると、空腹がおさまる。もつのは、1日ほどだね。僕らを見てくれ、2ヶ月葉だけで生活しているが、やせ細っているわけでもないだろう?まあ、ベジタリアンにはなってしまったし、肉が恋しいという者もいるがね」ミチノは驚いて、葉をもらい食べてみる。「麻婆豆腐の味がする」「そうなんだ!食べたいものをイメージすれば、その味が味わえるんだよ。すごいだろう!!」若いスキンヘッドの男が言う。「君も私たちの街に来るといい。歓迎するよ」ジーパンを履いた女が微笑む。ミチノは「じゃあ」と人々の後をついていく。 樹の根元といっても広大だ。20分ほど歩くと建物が見えてきた。木造の建物。巨大な樹のビル。ミチノはつくづく寄り集まった人間というのは、恐ろしい力を発揮するものだな、と驚嘆する。
新しい風の音色は少し調子外れだ。ミチノは当たり前のようになじむ。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる