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4歳

 9、魔法・・・順調です

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 春、6月
四歳になってやっとテーブルデビューしました。それでも四歳は早いらしい。
しかし、その為のディナードレスにコルセットが付いてきた!
とりあえず泣きそうな顔をしてイレッサに緩めしてもらってる。少ししなりがあるけど、何の骨だろう?地球には鯨の骨や髯とかの芯があったけどここには鯨、いるのかな?
どうやって、骨や体に悪いって納得させられるか思案中・・・。

ダイニングに入ると父と母は席に着いていた。一家の長である父様は上座(お誕生日席)である。
「おはようございます、お父様お母様」
「「おはよう、ミラ」」

今日の朝メニューは、硬パンと野菜スープとベーコン、あと薩摩芋とジャガイモが合わさったような甘みのあるイモにケールみたいなサラダ菜の付け合わせである。
部屋でひとり食べてたときの食器は木製だったけど、この食卓では陶器、ナイフとフォークは金属製である。メッキの技術があるのかな?もし銀製品ならきっと高価で一財産だけど、私は家の状況から銀じゃないと思っている。イレッサがお皿を目の前に置く。そして父様が胸の前で手を合わせた。
「全ての恵みに感謝をして、いただきます」
と言い、母様と私が
「「いただきます」」
と復唱して食事を始める。

実はこの、いただきます、と、ごちそうさま、は私の世界の癖、と言うかもう習慣だよねぇ。部屋で食べるときも言ってたと思うんだけど、イレッサは何にも言わないから大丈夫だと思ってたら初めてのときに、
「ミラ、いただきます、とは何だい?」
と、父様からツッコミが入って、目が点になった。え?いただきます、駄目なの?言わないの?
実はこの世界の貴族の食事は、その食卓の中の一番地位が高い人、家や家族の中では家長、お茶会や晩餐会や夜会などでは、最初の挨拶の時に主催者のホストやホステスなどが、どうぞとか、お楽しみ下さいとか、ごゆるりと、などと勧めたら、もう手を付けていいらしい。ごちそうさま、も言わないけど、楽しかったですとか、是非ともまたとか、感謝や有り難うと言う意味合いの言葉を、終わり際、帰り際、去り際とかに、言えばいいらしい。すんげー曖昧だった!
焦って目がむき出しにならかったのは良かったんだけど、キョトンとしたまま心の中ではガマの油の様に冷や汗ダラダラになっていた。子供らしい答えを頭の中で必死に考える。
「んー・・・、ありがとう、と同じ?私達が食べる為に死んだ動物、買ったのはお父様のお金、作ったのはイレッサ、それで私が頂く物だからいただき、ます・・?」
このくらいなら、子供らしい感じでいいんじゃない?と胸を撫で下ろすが、父と母のキョトンとした沈黙が辛い・・・・。
「まあ、凄いわミラ!回りの全てに感謝する気持ちが理解出来るなんて!」
・・・母様が凄く喜んでいるが、心なしか神童フィルターが付いてしまった気がする(汗)。
「そうか、ミラドールはそんな事まで考えられる様になったのか。それは大事な事だね。じゃあ私達もありがとうの心で食事をする事にしようか」
と父様が勧めて、いただきます、が定着したのだった。

そして硬パンは、あくまでも硬いパンだった。顎の発達にはいいかもしれないけど、たまには柔パンが食べたいよねぇ?なので思い切って聞いてみる事にした。
「・・お父様、ここにはこのパンしかないのですか?」
と言うと、キョトンと聞かれたこと自体わからない様な顔された。
「?・・そうだね、このパンだけだよ。私もミレットも子供の頃からこのパンを食べているし」
母の方をみると微笑んで頷いて、気がついたようにニッコリした。
「あぁ、ちょっと硬いと思ったのね?私も小さい頃はそう思った事があるもの」
クスクスと笑っている。なんと!伯爵家でも硬パンですか!とゆー事はまさかこの世界全体・・・
「じゃお城・・王様もこのパンを食べてますか?」
「そうだね、パンの作り方はこれしかないからね」
心の中でガックリと肩を落とす。
「そうですか・・・」
作れるかわからないけど食事内容から変えないと駄目らしい。
本当は服や下着も中世のままで何となく落ち着かないのだ。せめて最低限お尻にフィットしたパンティが欲しいが、これはゴムが存在しないと再現出来ない。昔現れた異世界人は何でもっと変えてくれなかったのか。そのうちアリアに見た目とか服装とか、どの時代どの国の人か聞いてみよう。
そうそう、父に本と仕事について聞いてみなくては、と思い食後に聞いてみた。
「お父様、わたし今もっている本いがいの本がよみたいのですが、お父様の本を見てもいいですか?」
「私の本か?ミラにはまだ難し過ぎると思うが・・・」
と困った顔された。そりゃそうだよね、四歳児だしねぇ。
「お父様はお医者様だから難しいびょうきの本だけしかないのですか?えーと・・・花とか薬草の本とか、魔物についてのご本とかはないですか?」
「あぁ、草花や薬草の本なら持っているが、それも難しいぞ?」
口の端をニヤッと上げて、挑戦的にこちらを見る。
「はい、よみます。たのしそうです」
こちらもニッコリと笑い返した。
「わかった、あとでミラに読めそうな本を探しておくよ」
「お父様、前にお父様の精霊は光と水と土、と聞きましたが、光のマホウでかんじゃさんのびょうきを治しているのですか?」
と質問してみると、びっくりした顔で私をみて、また困った顔した。すると父様の側に金色と水色と茶色の髪の3人の精霊が現れたが、みなアリアと同じ、まだ下級のようだ。
「ああ・・・そうだよ。でも魔法も万能ではないから、治せるものに限界があるんだ。私の精霊はまだ下級だから、ヒールとライトヒールは使えるが、それで治しきれないものは薬草や軟膏を使っているんだよ」
「ヒールは教わりましたが、ライトヒールはもっと魔力をたくさん使うのでしょうか?」
「そうだね、1日に10人くらい使ったら疲れるね。お母様も同じくらいだと思うよ」
と母様の方を見て言う。
「んーそうね、ライトヒールだと魔力を使うから、やはりお父様と同じくらいかしらね?」
え?何ですと?・・・それ以外の発想力はないんですか?魔力低すぎ、それに頭固すぎでしょう。ポンッとアリアが現れ、眉の寄った私の肩にチョコンと座る。
『中級以上は中々いないから、これが普通よ』
イメージが重要なら呪文に縛られるのはおかしいと思うけど。
『そんな事を考えつく人はいないわ。それに、ここに中級がいる方が不思議よ。貴女の母親は宮廷魔術師じゃないの?』
とアリアに呆れ顔で言われる。
え?中級精霊がいるだけで城で仕事が出来るの?それは知らんかった。でも違うと思う。母様は専業主婦だ。しかも主婦の部分はイレッサがやっている・・と思う。貴族の女子は炊事洗濯しちゃいけないのかな?
「・・・そうですか、せいれい様がいてもそんなに大変なんですね。お仕事がんばって下さいませ」
なんか納得出来ぬまま生返事をして、部屋に戻るのだった。



* * *



そしてアリアが教えてくれた下級と中級の魔法はだいたい出来るようになりました。

ライトは《豆電》《電球》《白熱》と3種類修得した。電球も、目に痛くない明るさまで落とせたので、魔力の消費を抑えられ1時間は持続出来るようになった。豆電は3時間以上持つ。要はイメージが大事らしいので魔法名はなるべく日本語で作る事に決めた。やはり心は日本人だしね。名を教えた所で私と同じイメージを持っていなければ再現や真似は出来ないと思う。逆に相手の魔法構築が私に分からなければ私も相手の魔法は真似出来ないと思う。でも私には地球の、科学と想像力、とゆー武器があるので、初めて見る魔法があっても真似出来る確率は高いはず。小説や漫画やアニメ、歴史、科学、氾濫する全てのメディアに感謝である。
まあ、詠唱は短い日本語にしてあるから、なんか変な呪文聞こえた?くらいで早々、真似されたり盗まれたりは出来ないと思う。

フラッシュは、目眩まし、くらいしか用途が思い付かなくて《閃光》と名付けてみたがイマイチ使えない。煙幕とかでドロンと姿を消す忍者のイメージしか頭に浮かばないからだ。だったら光の弾(ライトバレット?)とかの方がまだ想像しやすいんだけどな。
ヒールは癒す人がいないので据え置き。ファンタジーとかでは言葉を言って魔力を出せば、勝手に回復して治るけど、つまりは細胞を治す事、だと思うんだよね。だから滅菌と修復が合わさったのがヒールじゃないかと思うので、それを念頭に置けばきっと出来るはず。ん?滅菌は水系か?いや、洗濯物とかはお日様に干せば滅菌効果もあるから光系でも効果はあるはずだ。
ライトウォールは、パントマイムの壁のイメージで部屋の真ん中に作ってみたけど、明る過ぎる蛍光灯みたいになっちゃって目が落ち着かなかった。そこで、光だから鏡とか硬質の防弾硝子?みたいなイメージで反射機能付きで、薄く薄く硬く硬く透明透明・・・と呪いのように呟きながら、出来た!
と思った瞬間に倒れた(笑)。そしてまた焦ったアリアに怒られた。ごめんなさい。
魔力量で左右されるなら、もう下級中級とか関係なく試して倒れたらまだ早いって事でセーブすればいいんじゃないですかね?

とりあえず自分の魔力を攻撃に変化させる所から始めてみる。まずは小さい物から、手近な所でナイフを作るのに成功。最初の形が出来る様になったら、あとはイメージと魔力量だけ気をつければ簡単だった。倒れたらまたアリアに怒られちゃうからね。
そして果物ナイフ、サバイバルナイフ、短剣、長剣、小太刀、脇差し、刀、と一通り作れる様になった。日本刀は前世のお祖父様が収集していて触らせてはくれなかったが、たくさん目にしていたからイメージは簡単だった。

スターアローは最初、弓道の長い弓をイメージしたら、幼児だから長さも魔力も足りなくて体内魔力が枯渇しそうになったので中止、アーチェリーの弓をイメージして、何となく形にはなってきたけど、部屋の中では危ないので、広い場所を見つけたら試したい。
あと記憶にある武器といえば銃を筆頭とする戦争兵器。作る事は出来るだろうけど、使うような事がなければいいと思う。

そしてまだ幼児なので二十センチ以上の物は魔力が三十分も持たなかった。しかしこの訓練を毎日続けて魔力量を増やしていきたい。

「でも、たいぶ魔力増えたよねぇ?」
とアリアに言うと呆れた様な顔された。
『・・・増えすぎよ!普通の四歳はこんなに魔力ないし、知恵もないし、理性もない。こんな魔力の使い方する人いない』
と、断言された。
「あれ?使えば空になって増えるんだし、色々な事に使えるなら消費した方がいいんじゃないの?」
『それはそうだけど。昔・・光で作った剣で魔物を倒した人を見た事はあるけど、最近の人間はあんまり魔力が多くないから、普通に攻撃するか治すか、二つしか使わないわ。前の世界はいろんな物があるのね』
と、剣だけでもあれだけあったので、驚きを通り越して呆れてしまったらしい。まだたくさんある、と言ったら遠い目をされそうなので黙っておく。そして四歳では考えられないくらい増えているらしい。順調である。


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