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9歳

 58、ランクアップ

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 魔石を作った次の日から、すぐにギルドへ行って、三回の手伝いを終わらせた。

私は、1つはケルガーさんを手伝わせてもらって、あとはDランク三人グループのワイルドボア(猪)討伐の手伝いを二回頼まれて(主に回復役で)クリアした。
このとき結構ヒールを使った為、アリアが中級になった。

エステルは、Dランクの人の農家のモーグル(土竜)退治と、Cランクグループのフォレストボア(蛇)退治と、エイプ退治でクリアした。しかしエイプはやはり知恵があり面倒だったらしく、Cランクなのにたった五匹のエイプにマゴマゴして仲間を大量に呼ばれ、三十匹以上のエイプに囲まれてしまい、半数以上をエステルがウィンドアローで仕留め、助かった、と何度も頭を下げられたらしい。
エイプ退治は手伝いだから、エステルの手柄にはならないけど、数が多かったおかげか魔力風は手に入れ、レベルが私と同じ15に上がったと喜んでいた。



*   *


「・・やっぱり・・・・終わりなのね?」


一週間前、Fの採集を始めると、「ま!やっと始めるのね、頑張って!」と言っていたクラリスさんは、お手伝いを入れつつも耳と薬草を毎日出す私達に、段々無言になっていった。

そして今、お手伝いの三回目の回収札と依頼缶を窓口に出して「「終わりました」」と言うと、目を丸くして私達を交互に見るとポツリと言った。

手伝いは三回で三日間だから手伝いの無い、合間の四日間に薬草五束、耳十匹を毎日小出しにしてクリアした。合計だと薬草は二十束、耳は全部魔物で四十匹、手伝い三回だ。

まだエイプの耳が大量にあるけど、それも少しずつ出す予定。


「ま・・・前よりさらに早かったわね」
笑顔の口元がちょっと引きつっている。

たぶん、スペースの取得は浸透しつつあるけど時間は止まらないのがお決まりなので、私達も毎日採集していると思ってるせいだろう。


そしてEランクの説明を聞いてみると、大人はみんなEなので、基本はこれでおしまいらしい。

ここから上に上がりたい人は、自分のランクより高いランクの魔物を50以上討伐するとランクが上がるらしい。
つまりEランクはEランク以上の魔物を50以上討伐、DランクはDランク以上の魔物を50以上討伐で上に上がれる資格を貰えるらしい。
ただし、Eランクまでは依頼缶で50匹狩ったら特に何も言われないが、DランクはさすがにDの獲物ばかりだと力を疑われるので3ぶんの1くらいはC以上の魔物を狩る必要もある。なので最近はDランクも半数くらいは依頼缶を持ち、自分のランクより上の魔物を狩ったときは赤い棒を貯めて証明にしている人もいるとか。

そして何年もブランクがあり、最低限半年に一回は討伐していない場合、最初に腕が衰えてないか魔物を三体以上討伐して見極めてから、新たにカウントされる様になると言う。

エステルと顔を見合わせて眉を寄せる。
(やり直しなんだ・・)
(いつ終わるかわかりゃしないじゃないの)

ちなみに大人になってから新たに冒険者登録する場合、GとFを纏めた数(約100)の常時採集をクリアして、最低限の薬草の種類や、獲物や魔物の狩り方を覚えないと、討伐の仕事は出来ない(させて貰えない)らしい。

Cランクになると数の縛りはなくなるそうだが、一年に何匹かはC以上の魔物を倒して力を示さないと国からの討伐がある時に参加出来なかったりすると言う。そして30匹~50匹くらい討伐して力が付くとランクアップの申請を出し、Bランク以上の魔物狩りと、上のランク三人と試合をして力量を見られて昇格が決まると言う。

「・・わかりました」
「がんばります・・・」

「で最後に、正式な冒険者としての基本行動とか心構えの講習を一度、受けて頂戴ね」

「「・・・はい」」

Eになったら皆、絶対受けるらしい。

数日後、ギルドの会議室でギルドマスターのエクラ―さんから簡単な講習を受けた。魔物の習性や注意点、野営や見張りの仕方などだ。
E、D、Cまではランクが上がる毎に簡単な講習があるらしい。Dになると護衛の仕事が出来るらしいがEのうちは、Dランク以上の人が受ける護衛仕事の補助を二~三回は受けてやり方を覚える必要があるらしい。

・・・などの基本講習を終えた。





しかしこの後、鑑定魔石の存在が公になるとGとFの子供ランクに加え、Eランクも見習い範囲とされ、基本採集の僅かな変更とランク講習は必要だが、討伐やランクアップの条件が全て覆る事になり、数の縛りは殆ど全て無くなる事に。
そして今までのランクにいた者の半数以上のランクが下がったり、少数は上がったりが発覚し、しばらくは国中が騒然とする事態になる。





――――――――――――





今日は例の[日帰りピクニック]を敢行する為に南門に来ていた。

Eは認められたけど、早めにDに・・・ひいては十五までにCくらいには成っておきたい為に、何匹で上がれるのか確めて置かなければ。



「お、久しぶりだな。またここから出るのか?」

去年、何度も劇場(娼館)に「お姉さん達の傷を治したり生活を助けている」と言うのを名目に外へ行っていたので、私達の顔を知っている兵士が何人かいた。


「まあね。もうお姉さん達は元気に仕事してるみたいだから、劇場は殆どいかないの」
木札に名前を書きながらエステルが答える。

「え、じゃあ何処へ行くんだ?」

北門は迷宮のせいで、あちこちから冒険者が集まって、木札を書き込むのにも長蛇の列が出来ていたから、北はしばらく行かない事にした、と話した。

「外れの森まで行く事にしました」
と私が答えると、え!?と言う顔をされた。

「大丈夫か?」
「・・・あそこの森は北の森の倍くらい広くて、奥の方はCランクもいるから奥までは行ったら駄目だからな」
「・・子供の足だと一鐘以上は掛かるから気をつけて行くんだぞ?」

一応、Eの認定があるので絶対に駄目、とは言われなかった。

「「はーい」」



門を出た時に鐘の音が聞こえたから、たぶん今は四鐘(8時)くらいのはず。
朝なので通りの屋台や酒場は八割は木戸が閉まっていて、通りの端や店舗の陰には転がっている人がチラホラ見える。死体ではなく、家に帰らず野宿でごろ寝をしている泥酔者である。

エステルと二人、ため息をつきながら通りすぎて暫くすると、今度は劇場前に観劇の人だかりが見えてくる。

「こんな朝から元気だねぇ、お兄さん達」

「そうねぇ。ま、そのおかげで私達のお金も増えるから、どんどん足を運んで欲しいわね!」
とエステルがニッコリした。


黙々と早歩きをして、やっと市外の外れに野原が見え始める。

「ふーっ、さて!ここからは身体強化で」
「ん!」

緑の固まりが見える所まで、身体強化で街道を走り抜けて、右前方に鬱蒼と繁る大きな森に着いた。

「ふー。アッという間だったね」
「以外と楽だったけど・・・あぁ、10くらい減ったみたい」
ステータスを確認しながらエステルが言う。

スペースから水筒を出して一息つく。



「じゃあ、・・・やっとコレの出番ね」
「本物の刃物だからドキドキするね。気をつけないと!」

皮の鞘に入った、お揃いの刀擬きをスペースから出して腰のベルトに付けた。鞘から抜くと、幅3ピト長さ50ピトの片刃の鉄剣が鈍く光る。

「この世界に・・・・銃刀法はない!」
「ん!違反にはならないよね!」
お互いに自分を納得させつつ、ブンブンと素振りをして、そんなに重くない事を確める。





ダンジョンに入る為に、浮いた石の代金で「魔物以外には使わない事」を約束してドメナンさんに小型の刀を作って貰った。

「不思議な形だな・・・そう言えばブルフェン国の獣人が似たような剣を持っていたのう」

「「!・・・・・・・・」」

国を出てから色々旅をした先で色々な獣人にも会った事があるそうで、まず獣人には二種類あって、顔や手足が人間に近いが耳や尻尾がある人寄りの獣人と、顔や手足が獣に近い獣寄りの獣人がいるそうだ。
人寄りの獣人は人間と同じ武器を使えるが、獣寄りの獣人の場合、自分の爪かグローブなどに刃物を付けたり、ナックルのような武器で戦うという。
でも獣に近い獣人達は、他の大陸へ行くと魔物に間違えられたり怖がられたりなど、差別的扱いを受けたりするので獣人国からはあまり出ないそうなので滅多に会えないらしい。

そしてドメナンさんが出会った、人寄りの狐の獣人が持っていた剣がコレよりもっと長いが、似たような細身の片刃の剣だったという。

「・・そうなんだ」   
「・・へぇ・・」

どうやら、獣人国は侍が転移した事があるらしい・・と判った。日本ナイズされた物があるかも知れない。





「じゃあ、行きましょ」
「ん!頑張ろう」

エステルが地面に手をついて《サーチ》を掛けると100メーターくらい奥から赤い点が増えている、というので林に踏み込んだ。




「げっ!・・・ワイルドボアか!」
「あ~・・・風でウォールを掛けておくべきだったね・・・」

ゆっくり慎重に木を避けて歩きながら進むと、エステルと二人で三メーター級の猪と、八メーターくらいの距離で向かい合う。

外に近い方から風が入ってくるから、人間の匂いは直ぐにバレていたようだ。

「こいつ、この群れのボスかしら?」
「そう・・見えるけど・・・」

脇にボスより少し小さめ(1.5メーター)のが四匹ほど付き従っていて、その奥の方に普通の大きさのが群れている三十匹近い群れだった。猪はピギーと同じで獲物分類だけど、この大きい方は牙も大きくて、確実に動物じゃなく魔物だ。

「後ろの方のが普通の大きさだから、こいつは確実に魔力あるわね!」

ボスは上下の牙もかなりデカイ。

ザザザ・・と木々と草が揺れた途端、ストーンバレットが飛んできた。

「わっ!?え?・・・魔法!?」
「!・・じゃあ・・・・魔石持ち?」

バレットが反射魔石で跳ね返るのをみてからエルが飛び出す。私も後を追ってエルが左を狙ったので右へ回って、両側から剣を振り込んだけど、皮膚(毛皮)が硬くて表面しか刃が通らない。

また5メーターほど下がって距離を取る。

「硬いわね」
「全然ダメージなし。ね、豚って泥とか土で体を擦ったりするよね」
「寄生虫避けとか?土が乾いて、土の鎧着けてる感じかしら?じゃあ土属性だから、水か火がいいのかな?」

「水?水で泥を落とすとか?」
「そうねぇ・・」

「・・じゃあ、水分を・・集めないと」
「なにで?」
エステルが聞き返す。

「ん~・・・・・《ミスト》!!」
「おお!!《ミスト》」
「《ミスト》!《ミスト》!《ミスト》!」

二人でミストを連呼すると、周囲が霧が立ち込めて視界が悪くなる。

「水分増えた!エル下がって!《スコール》」

霧から更に3メーター下がると、どしゃ降りの雨がドバーッと1分ぐらい、ボスを中心に直径五メーター範囲の猪の群れを襲う。一瞬足が止まったものの、そんなに痛くもないので『効かないぞ!』とばかりにブルブルッと水を弾くと、ブフフンと鼻息でバカにされた。

「む・・・馬鹿にしてる~ムカつく~」
「ふっ・・・笑っていられるのも今のうちだって解ってないくせに。ミラ、どうせだから雷いきましょ」
エルがニヤリと笑う。

「OK!じゃあ・・《ファイアボール》」
直径1メーターくらいの火の玉が誰を狙うでもなく群れに向かって飛んでいく。

「大き過ぎ!」
「ご、ごめん」

急いでたから意図的に押さえてイメージするのを忘れて威力が大きくなってしまったが、意外と上手く避けられてしまい、群れの中の一本の木にぶつかって燃える。
しかしさっき水に濡れたため、火の勢いは弱い。

的も外れて、恐るるに足りず、と思ったらしく、鼻息も荒く前足の蹄をガスッガスッと掻いている。

「空気、暖かくなった!濡れたとこから離れるねー」
「うん、地面も伝うからね!」

スコールで濡れている場所から、ボアの群れを睨みつつ、二人でジリジリと数メーター下がった。

「行くわよ・・・・・《サンダー》」

エルがボアの上の方に魔力を放つと、霧のあちこちから、ビカッ、と光りが走ってバチバチ音を立ると十数本の雷がパパパパンッ!と辺り一帯に落ちた。

ボス猪には三~四本程落ちたみたいで、ビクン、と跳ねてブルブルブルッと震えると、仁王立ちで動きが止まった。ボス以外のヤツは一応全て倒れている。後ろの方にいた普通の猪も十匹近くが倒れていたが、見渡せば群れの半分もいない。当たらなかった奴はボスを見捨てて、散り散りに逃げてしまったようだ。


「「・・・・・・」」


「・・意外と広範囲にいったけど、ボスは死んだ?」
「・・仁王立ちのままだけど・・・?」

と、フワッと魔力が来た。

「風が少ない!・・・・まだ生きてるわね」
「確かに・・・」

近づくかどうするか躊躇していると、ガサッ、と音がして、ボス猪がブルブル震える前足を一歩動かした。

「!・・まだ生きてる!」
「え・・・」

急いで近くへ駆け寄ると、フーーッ・・フーーッ・・とゆっくりだが呼吸をして動こうとしてるようで、致命傷には至ってない。

二人で顔を見合わせて頷く。

「・・殺すんだよね・・・」
「そうね・・・元気になったら私達が殺されるし・・・」

二人で剣を握りしめて頷き合うと、左右から一気に喉を突いてから、数歩下がる。


グゴッ・・と鈍い声を上げて、ドスッと倒れると風をブワッと受けて、二人で一瞬固まった。


「ハーッ・・ボスは殺った。残り半分ずつ確かめましょう」
「・・・ふーっ・・わかった」

息を整えて一息ついてから、鑑定を掛けては生きている残りの数匹を刺して仕留めた。


「全部で十二匹ね」
「じゃあ半分ずつ入れようか」

ボスは私が持ち、六匹ずつ収納する。



「・・あ!!やった!!・・Dになってる。16でDになったよエル!」

「え、ほんと!?私は・・・まだEだわ。お爺ちゃんが18でDだったから、もう少し・・と思ったけど16か。で・・あと何匹くらい?」
と、エルが聞く。

「んー・・・・七十・・五ぐらいは狩ったと思う・・」

「私も七十はいってるんだけどなぁ・・・」

「ん・・・私は一番初めに、おっきいヘラ鹿があったから・・かなぁ?」

「ああ!そっか。・・持ってる魔力量で前後するんだね。私はもう少し頑張らないと駄目か・・・・はぁ~・・」
エステルがため息をついた。


それからまた、少しずつ奥に入って行くと、木々の密度が段々と狭まり日射しが減って、丘のような起伏のある地形になってくる。
時折ガサッと音がして普通のラビが逃げていく。

「む・・足が早い」
エステルのサーチ魔法は敵意を持った者じゃないとあまり反応しないので、逃げる一択のラビは反応しないらしく、イメージの改良が必要、らしい。
私の気配察知も殺意を向けられないとあまり反応しないみたいなので、同じく要改良である。そのうち地図を重ねたサーチを考えてみようと思っている。
「まあ、ラビも命懸けだしね」


「そろそろお昼にする?」
「ん、ちょっとお腹空いたかも」

びしょ濡れの一帯を避けて少し開けている場所に子供テーブルと椅子を出してから、テーブルの真ん中に10ピトのキューブを置いて結界を発動させると、少しだけチカチカと赤く点滅してから普通に淡く光り始めた。

「少し赤く光ったね・・・」
「ん・・地中になんかいたんじゃない?」

《結界》と《反射》が付いていて、魔石を中心に一辺が五メーターの立方体の結界が出来た。
これは固定はしていない方で、寿命は一鐘。空になったら結界が無くなるので回収して後で魔力を入れる形。ちなみに固定した方は精霊が手伝っているせいか二鐘くらい保った。
そして空になってから魔力を入れると両方とも200くらい魔力を取られた。

今日のお昼はエステルの所のチキンサンドと玉子サンド。エステルが革袋の水筒を出し、木のコップに水を入れる。

「「いただきます」」


「ねぇ、ダンジョン、連日大量に人が入ってるらしいね」
「ん、そうね。この前うちのバレオン兄さんが行きたい、って父さんに言ってたけど、イムランが戻って子供ランクが終わらないと駄目だ!って言われてたわ。学院から戻ってきたら急いでEになろうとするんじゃないかと思ってる。バレオンは秋から学院予定でこれから勉強もしないといけないのに、大丈夫なのかしらねぇ。でも・・・入るより前に列の順番待ちがイラつくんじゃない?」

「んー・・そもそもダンジョンてどんな物理構成で成り立ってるのかな・・・」
「ゲームやファンタジーでいくと、ダンジョンの核とかダンジョンマスターとか、知的な何かが維持してる設定とかあるけど・・」

「でもエネルギーは何?せめて魔素とかは大量に必要な気がする・・」

迷宮の疑問点を話し合っていると、不意に結界キューブが、赤、白、赤、白、と点滅している。すぐにキューブに魔力を足すと、森の奥側の薄暗い方の結界壁が、シミが出来たようにグレーに染まって来ている。

「お、奥から何か来てる?何の攻撃!?」

「ん~・・敵が見えない。・・・空気に乗せるなら・・・眠りか麻痺の・・毒?」

と突然、ザザザザー・・と周りの草が揺れて、パーンと数匹のラビとホーンラビが私達なんか目もくれずに走り抜けて行った。

「「えっ!?」」

「何で結界の中を通ってくの!?」
「ちゃんと設定出来てなかった!?」

 思考が停止しそうになっている私達を尻目に、ワイルドボアが十数匹、更にはエイプまでが私の結界を横切り一目散に消えて行く。

「何で通れるのよっ!?」
「わ・・わかんない」


固まったまま、目を丸くして立っていると、ズズズズ・・・ズズズズ・・・と重い物を引き摺るような音が段々近づいてくる。

手の中のキューブは既にチカチカと、攻撃を受けている赤の表示になっていて、グレーだった結界壁の一面がかなりダークグレーになっている。急いでまた魔力を足す。

「なんかヤバイ!超ヤバイ!」
「ど・・どうしよう!でもこれしまったら私達が汚染されるんじゃない!?」

オロオロしてる間に木の隙間からヌウッと表れたのは太さ三メーターはある蛇だった。長さは分からないが十メーター以上はあるだろう。

「何あれ?え?ボアなの!?何あの太さ・・前に見たボアと色も大きさも違う!」
「そ、そうなの?」

普通のボアは太さ1メーター前後、長さは8~10メーター前後らしい。すると目の前のあれの長さは、その倍以上はあると思われる。

シャーッ!シャーッ!と威嚇して飛ばした息が霧になって攻撃になっているらしい。結界に当たった何割かが反射してカウンター攻撃になっているようで頭をフルフルと振っては戻ってくる霧を振り払い、怒りも顕にシャーッ!シャーッ!と牙を出している。

鑑定を掛けると、クイーンフォレストボア、ランクA、HPは四千近くあるがMPは五百もない。

「ランクA・・メスなの?・・大蛇って言うか既に・・昔の映画で見たワーム級・・・」
エステルの声が少し震えている。

「奥にはCくらい・・っておじさんたち
が言ってたのに、Aがいるなんて聞いてないよ。・・・・帰れないかも・・」
Cなら前の鹿くらいかな・・・と舐めてた自分を反省する。空気が汚染されていては普通に対峙して戦う事が出来ない。・・・今日のピクニックは辞めておくべきだった、と。


「・・・・仕方ない。もう周りが汚染されてるから動けない。ここで殺る!」
エステルが諦めた顔で言った。

「ん!・・魔力は私達の方が多かったし・・・レーザーで」
「そうね!それしかないかも。皮膚が硬すぎないといいけど・・・」

もう一度テーブルを出して中心にキューブを置き、広さを確保する。空にならない様、攻撃されたらどっちかが魔力を入れて結界を確保、最後はレベルアップの為にエステルが殺る事に決めた。

エステルが試しに結界から右手を出すが直ぐに引っ込めた。

「あぁ!つぅー・・・」
少し赤く爛れている。
「大丈夫?《キュア》《ヒール》」

「痛かったー。毒と・・痺れもあるな」
「麻痺か・・・・!?何あれ」

さっきまで目線の高さが同じだったのに、ふと横を見ると三メーターくらい鎌首を上げてユラユラと首を左右に振っている。しかも何とエラが張っている。その姿は・・・

「「・・コブラ・・」」

「あれは攻撃前の威嚇の態勢だわ!」
「ボアにエラなんかあるの?」
「普通のボアには無かった!。ボス級になると変形するのかも・・・ムカつく~あんだけ筋肉が発達してると首チョンパは難しいかも!」

と突然、対峙していた八メーターの距離を、素早い動きで上半身が飛んで来た。

「「ぎゃあああぁぁ!」」

防御の態勢で固まった私達に向かってきて、ガプリと結界壁に噛みついたが、反射の反動で跳ね返され木の幹にゴン!と頭を打ち付けて落ちた。口は開いたまま・・・・。


「「・・・・・・・・」」


「・・・・知恵は高くなさそう・・」
エステルがポツリと言う。

「あっ!キューブ!」
私は急いで魔力を足す。

「毒霧が邪魔ね。ろくに動けないわ」
エステルが眉を寄せる。

「もう一度スコールで落としてみるよ」
イメージを固めてから両手に魔力を貯めてから手を外に出す。

集中豪雨で周りが一瞬真っ白になった後、結界壁が元に戻ったので震える手を引っ込めた。

「痛い・・・」
水で少し洗われたが、やはり爛れて痛い。
「《キュア》《ヒール》」
直ぐにエステルが治してくれる。

「・・よし!いける」
エルが手を外に出して確めてから腕を伸ばした。
「蛇だからやっぱ・・・《アイスアロー》」
エステルが結界の外に一歩出ると、ボアに矢を三本放つ。ドスドスッ、と刺さって直ぐに消えるが、攻撃で目が覚めた蛇は「ギシャァァァァー・・」と叫んで頭を上げた。

「効いてるみたい。爬虫類の弱点でいけそうな気がする」

少し勝機が見えてホッとする。

「あ!また・・・《スコール》」

シャーッ、シャーッ、と毒霧を出しているので急いで落とす。

「だいぶ水が増えたよね?ダイヤモンドダストとか・・どうかしら?」
エステルが言った。
「あ!・・・キラキラしたやつ!」


「「《ダイヤモンドダスト》」」


辺りの水が全てキラキラと舞い上がる。大量の光る霧が蛇を包むと、シャァァァァ、と叫んで身を翻しグルグルととぐろを巻いてシッポを引き寄せ、丸まって防御態勢になった。


「「・・・・・・・・」」


「・・・・干支の置物みたい」
「・・自分から檻に入ってるって、解ってんのかしら?」

とぐろを巻いているので高さは五メーターくらいになっているが、木々が乱立している森の中で大き過ぎる身体が、大木に囲まれて窮屈に見えるのは気のせいじゃないと思う。

本人は守られていると思っているようで、頭をもたげて、シューッ、シューッ、と舌を出し入れして警戒している。

「あ!今ならコレ、いけるかも」
六角形の魔石をスペースから出す。十センチの一番大きいやつ。

「おお!・・・でも遠いよ?」
エステルがここから蛇までの距離を眺める。十メーターくらいある。

「・・・近くまで行って投げる!ウォーターウォールお願い」
「!・・・《ウォーターウォール》」
薄い水の膜が体に纏わり付く。
「土でちょっと拘束して貰える?」
「じゃあ半分まで行くわよ」

エステルは自分にもウォーターウォールを掛けたので、二人で結界を出てゆっくり近づいていく。ダイヤモンドダストのせいで外側がかなり寒い。私達が歩いて来るのを見て、シューッ、シューッ、と鎌首を上げてるが、やはり寒いのかエラは出していない。

「ふーっ・・じゃ行くね」

「OK・・・・《アースコード》」

私が走り出すと、エステルが地面に手を置いて土魔法を掛けた。
私の走りと一緒にエステルのアースコードの根が、ザザザザーと地面を伝って木の根っこが走っていく。近づく私に攻撃を掛けようとしたボアにエステルのアイスアローが顔に少し刺さってキシャアァァと怒り出すが、突然地面からギュルギュルッと根っこが巻き付いた事に驚いて頭が横に反れた隙に、魔石を投げて急いで結界へもどる。


「はーーーっ・・さ・・・・寒かった~~」
「ふーっ・・確かに。・・・下げすぎたかしら?・・・意外と氷点下だったわね」

「もう、半分くらい魔力ないね」
「そうね・・・」


ギシャアアアアア・・・・


「「!!」」


ハッ、と蛇の方を見ると、網が纏わり付いて動けないと気づき、木の間から這い出てくると、ドスンッ、ドスンッ、と身をよじったり翻して回転したりして足掻いて、シャーッシャーッ、と怒り狂っている。

「よし、外れてない」

「・・すっごい怒ってて回りが見えてないのね。やっぱ爬虫類。まあ・・・アレにセリフを付けるなら・・・・

『何なのよこれぇ~!動けないじゃないのぉ~!ふざけんじゃないわよぉ~!』

・・・って感じかしら?」

「ぷっ・・心読めるの?あ!《スコール》」
「ついでに・・《ダイヤモンドダスト》」

結界壁がグレーになる度に雨と氷を降らせつつ見守ってみると、しばらくしてエステルのアースコードは枯れて消えたが、私の網は纏わり付いてボアの動きを止めている。

毒を吐きながら暴れていたボアは、半鐘経つ頃にやっと動きが鈍くなってきたと思ったら突然、『シャァァァァー・・・・・』と最後の雄叫びをあげて、ドシン!と頭が地面に落ちると、力を振り絞るように再びグルグルととぐろを巻いて、その中心に頭を突っ込むと全く動かなくなった。


「・・・・止まった!・・死んだ?」
「・・魔石の縄が外れてないから、生きてるはず・・・・《鑑定》・・・あ・・」

MPがゼロになっていると判った。HPは最初に鑑定した時より3ぶんの1くらい減っている。

「つまりMPが無くなったから守りだけになった、って事?・・・魔力が無くなったら死ぬんじゃないの?この星の命って・・」

前にエステルが子供達は、枯渇するまで使うと死んでしまうよ、と親に言われていると言ってたから、そうだと私も思ってたがちょっと違うみたいだ。

「「あっ!!」」

しばらく観察していたら、蛇がググッと頭をもたげたが、シャーッ、と力なく鳴いた途端、また頭を突っ込んで静止した。

「何?いまのは?」
「もしかして魔力が戻った?・・・から動こうとした?私達も眠ったら次の日には戻るし」

状況がよくわからないので、しばらく鑑定で様子見すると・・・

「・・・ああ、そう言うことか」
「変換してるんだ・・・・」

無くなったMPを、仮眠をとってはHPから変換して命を繋いでいるらしい。HPが20くらい減るとMPが5~8くらい戻っている。
しかし動こうとすると、私の魔石に魔力を奪われて仮眠に戻っているらしい。

「・・・・片方が無事なら、幾らかは交互変換出来るんだね」
「知らなかった、目から鱗・・・・・・って感心してる暇ないよエル!このままならあと数時間で死ぬかも知れないけど、そしたら私の方にたくさん魔力風来ちゃうよ?」

「あ?た、確かに。え、どうしよう・・・太過ぎるからやっぱ・・コレじゃ駄目よね?」
腰の刀の柄を握って抜こうとした手を止めた。

「そうだね。幅が全然足りないね。・・・外側の鱗は防御力高そうだし、たぶん柔らかいお腹側は・・見えないし」
ぶった切るのは無理だろう。

「ん。私達の魔力ももう半分くらいになってるから・・・急がなくちゃ」

「・・ねぇ、魔法でレーザーを剣に出来る?」
と私が聞くとエルが目を丸くした。
「え?・・・・・・・それって・・・・」

エステルは目を瞑ると、透明な剣を持つかの様に竹刀の構えを取って手に魔力を集め始めると、手の中の魔力が光りを棒のように伸ばしていく。

「・・ふっふっふっふ・・・・出来たわよ」
「おお・・・・イメージは大事だね」
二人で顔を見合せる。


「「・・・フォースの力で・・・」」


「でも、結構魔力減った・・・急ぐわ」

頷いて、二人で結界の外に出ると、更に魔力を注いで四メーターくらいの巨大な長剣にした。

それから私が、全身タイツのイメージでエステルに反射を掛けると蛇の足元まで慎重に向かってから、とぐろを巻いた胴体の一本にライトソードを振り下ろした。


ギシャアアアアアアアーーーー・・


叫び声を上げて頭を上げると、メチャクチャ暴れ出したので、エステルは下がって距離をとった。けど半分くらいしか切断出来ていない。
そして暴れ回って回りの木々がメリメリと倒されている。
と、暴れるボアのシッポが勢いよくエステルに向かう。

「あぶな・・・・・・」

・・くはなかった。剣を盾にして防御したら反射のおかげもあって、そのままの勢いでシッポ部分の三メーターくらいが千切れて転がった。

「・・・切れ味よすぎ・・・・」

蛇はギシャーーッ、と叫ぶと更に七転八倒して大量の血が飛び散っている。血にも毒があれば反射されたのかも知れないけど、そこまで毒はない様でエステルも点々と血を浴びている。距離を取りながら剣を構えているが中々踏み込めていない。

しかし数分間の睨み合いで、暴れ過ぎたクイーンボアは血を流し過ぎてとうとう頭がドシン、と地面についた。
それでも抵抗するように小さくシャーッ・・シャーッ・・と声を上げていたが、頭から三メーターくらいの最初の切り口にもう一度切り込んでぶった切ると、叫んでいた口が閉じて完全に動きが止まった。


「はぁー・・はぁー・・やった・・・」


シュウ・・と剣が消えて、エステルが肩で息をしているのを見てると、ブワッと生温い風が来た。
エステルの方はシャツが強風に煽られるほどの風が来ている。

トボトボと結界まで戻って来たので、また椅子を出すと、座ってため息をつく。

「上がったよ、一匹で。17でD。でもダルい・・もう200切ってる・・・・」
疲れ切った顔にはあちこち血がついている。

「よかった・・私は・・・あ、18には成ってる。・・・・エル・・血だらけ」

「ああ・・・クリーン・・掛けて貰える?」

「・・ごめん・・・・やったことない」

「え・・・マジで?」
疲れ切った顔で言われてしまった。一応貴族で家にお風呂があるので、そうそう酷い汚れになった事がないのであまり考えた事がなかったのだ。

「待って!やってみる。・・クリーニングだから・・・水と・・風かな?で・・・汚れを抜く・・・・・・・《クリーン》」


「お、キレイになってるね・・・」
エステルが服を見下ろして笑顔で言う。

「う・・・・ごめん、顔は駄目だった」
服はキラキラン、と光ってキレイになったものの、顔の血が落ちていない。

「え・・服だけ?・・・・・仕方ない、自分で拭くよ」
ウォーターの水球に布巾を入れて絞ってから顔と手を拭いた。


「ちょっとサッパリした。・・・じゃ、ボアを空間収納に入れてくる」

と言って結界を出ていくと、頭と胴体がパッと消えたものの、シッポ部分を前にして首を傾げると、何やらこちらに手を振っている。

「なんでか、シッポが入らないのよ」

結界を出て近くまで行き、落ちていた六角の魔石を回収して、エルを見ると、三メーターのシッポに手を翳しているが、入らないらしい。


「「・・・・・・・・・?」」


「なにか・・・生きてる?」
「えぇぇ~まさかぁ~。しっぽよ?獲物は消化されてるでしょ?」

「「・・・・・・・・・・」」

顔を見合せると、エステルは更に疲れた顔でため息をついた。

「か・・・解体・・・・する?」
「こ・・・・子供の解体仕事じゃないわよ、こんなの・・」


でも誰も手伝ってくれる人はいない。
二人で採集ナイフを握ると、蛇皮は加工品になるかも知れない、と一致して背と腹の際の辺りを、ブツリ・・ブツリ・・とゆっくり切っていく。胴体の太さは三メーター近くあったのでシッポといえども太さが一メーターくらいある。

「・・はぁ~、出会っちゃったからしょうがないんだけど・・・ランクは上がっても、こんな大きいのは・・倒すもんじゃないわね・・」

「うん・・・倒した後が大変だって・・・解ってたつもり・・だったのに・・」

汗をかきながら、分厚い皮と肉を何とか裂くとボロリ・・と薄い皮に包まれた10センチくらいの白い玉が十個出てきた。

「・・・・・どうみても・・巨大な亀の卵」
「私達と出会う前に亀と卵を食べていた!」

「・・・・胃袋は真ん中の胴体でしょ」
「だよねぇ・・・で、収納に入らないって事は・・生きてるんだよね?」


一般的には蛇も含め、卵は楕円形ではないかと思うのだけど、この世界では違うのだろうか?


「たぶんね。・・でも蛇も・・卵の殻ってもっと硬くない?テレビで蛇や鰐の赤ちゃんが産まれる映像も、パキャッ!と音がして中から出てきたと思うんだけど。こんな柔らかい殻ってあり得ないんじゃない?」

「そうだねぇ。・・中にあったって事は産む前だから・・・・あ!もっと栄養を取って、少し殻が硬くなってから産む予定だったんじゃない?で・・・そのあと自分で暖めるか、暖かい土の場所を探して育てる予定だったのかも」

「あり得なくもないか。・・・でもどうする?持ってく?置いてく?」

「「ん~・・・・・・」」



結局、孵化して生き延びたら何年か後がまた厄介かも知れないので、持って帰ってギルドに判断してもらう事にした。


「スペースに色々入れといてよかった」
「・・結構重いわよ、コレ」

タルメアさんから買い取った布がたくさんあったので1メーターの正方形にカットして風呂敷包みにして、五個ずつもった。

しかし意外と重く、三キロくらいあるので劇場の裏門に転移しよう!と言ったらエステルが「魔力が危険だから少し寝たい」と言うので、半鐘ほど仮眠を取ってから門に戻った。



風呂敷を下げて夕刻ギリギリに帰ると、南門のおじさんに、何が捕れたかと聞かれたので、私の収納からボス猪をドスンと出したら「うわっ!!」と驚かれたので・・・風呂敷は「ラビが二匹ずつ」と誤魔化して、大蛇を出すのは止めておいた。



*  *  *



風呂敷のせいで、ギルドまで歩くのも辛いので、私が家に転移してエステルが続き、そこから最低限の距離をトボトボと歩いてギルドに着いた。

ホールの中に入ると、何とか空いてる椅子を見つけて座り、風呂敷を足元に置くとそのまま寝転んだ。

支払いなどのピーク時間は過ぎていたが、まだザワザワと混んでいて空いている窓口がない。

「・・空くまで寝ててもいいかなぁ?」
横目でホールを眺めるエステルが呟く。
「んー、でも時間が時間だし、早くこの生き物渡して帰りたいよ」

寝転がる程疲れている少女二人を回りの大人がジロジロと見ているが、気にしてる余裕はない。お腹も空いてるし眠いのだ。

「表向きはもうEだから、先に解体室へ行ってもいいんじゃない?」
「あ~・・そうだね、じゃ、いこ・・」
足取りも重く、トボトボと鑑定室へ向かった。



*  *  *



「「「「・・・・・・・・・・・」」」」


三メーターのワイルドボアと、同じくらいの大きさのクイーンフォレストボアの、取りあえず頭部分だけを解体室の外、訓練場の隅にドスンと置いてある前で、ギルマスのエクラ―さんと今日の解体担当の三人のおじさんが絶句していた。

「ワイルドボアに・・クイーンフォレストボアだと!?・・・・・本当に南の・・外れの森か?」
エクラ―さんが息をのんだ。

「そうです。・・奥でCくらいって、門の兵士さんがいってたのにAが出るなんて申告漏れですよ!帰れないかと思いました」
「ほんとよ!しかも毒の霧吐いたのよ、こいつ!死ぬかと思ったわよ!」
疲れ切った私達は、解体のおじさんにホールの長椅子を持って来てもらって、椅子に寝転がって説明している。


「毒霧・・それでよく生きてたな。・・・ちなみに・・・・どうやって倒したんだ?」

「結界を作って防御しながらですよ」

「け、結界だと!?」
エクラ―さんが目を剥いた。

「そっちは雷で足止めしてから。こっちは光の剣でよ。ちょっと力が足りなかったけど」
蛇の切り口がちょっとザクザクで汚い。

「「「か・・雷!?」」」
解体人のおじさんがビックリしている。

「・・光の剣というと・・・スターソードが使えるのか、嬢ちゃん」

「んー、それとはちょっと違うんだけど・・」
エステルが、説明出来ずに眉を寄せる。


「「「「・・・・・・・・」」」」


「それより、一番引き取って欲しいのはコレ!それで、もう帰りたいの!」

椅子から起き上がったエステルが二つの風呂敷を開けた。

「!!・・・・・卵」
エクラ―さんが口を開けたまま固まった。


「コレ、まだ生きてるみたいでシッポがスペースに入らなくて持ってくるの大変だったの。それにいつ孵化するか判らなくて、ギルドならボアの生態を知ってる人がいるかと思って」
「研究している専門家とかはいないですか?それにもう疲れてるので・・・取りあえず置いて行ってもいいですか?あとは後日で・・・」


「「「「・・・・・・・・・」」」」


大人達は険しい顔で、また絶句した。




――――――――――――


取りあえずDランクにはなった二人。
夏の迷宮混雑を避けて、秋ぐらいになったら潜る事になります。

夏の間は、鑑定魔石で国もギルドも大混乱。大人達は対応に追われます。



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