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第一章 旅立ち編
第5話 田舎者、門番長に仕事を恵んでもらう
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アルビィに連れられて訪れたのは、アドリンナの門番達が待機している詰め所だ。
他の住宅より堅牢そうな建物で、リュートの村では一番大きかった村長の家より、数倍大きいものだった。
「……こんなでっけぇ建物、オラ初めて見ただよ」
呆気に取られてつい言葉をこぼしてしまうリュート。
その言葉にアルビィは苦笑するしかなかった。
「さ、中に俺達のボスがいるから、ついてきて」
「わかっただ」
「あっ、仕留めた獲物は持ち込めないから、ここに置いておいてね」
「んだ」
詰め所の外壁に近い場所にゆっくりと、ダッシュボアの亡骸を置く。
本当は地べたに直置きするのは、狩人としては好ましくはないのだが、物々交換出来ないのであれば気にする必要はないと判断した。
そしてアルビィの後を付いていき、建物の奥へ進んでいく。
するととある部屋の扉の前で止まる。
どうやら目的地はここらしい。
アルビィは扉をノックする。
「ボス、ちょっと時間貰えませんか? 話したい事があります」
「おう、いいぞ。入れ」
扉の奥から低い男の声が聞こえる。
アルビィは失礼しますと言い、扉を開けた。
部屋の奥には、作りの良い机の上に座っている、筋肉隆々の男がいた。
アルビィはその男に対して敬礼をする。
「ボス、例のダッシュボア駆除の件で、かなり有能な男がいたので連れてきました」
「ほぅ。お前の後ろにいる男前が、それって事か?」
「そうです。彼は一人でダッシュボアを容易く狩る事が出来るようです」
「そりゃ凄いじゃないか! そこのお前、自己紹介してくれないか?」
ボスと呼ばれる男は、リュートに指を差して自己紹介を求めた。
「んだ。オラはリュートだ。見ての通り弓使いだよ」
「お、おぅ……。顔に似合わず訛りが凄いな。まぁいいや。お前がダッシュボアを一人で狩れるってのは本当か?」
「んだ。オラんとこの村の主食だし、別に狩るくれぇなら難しくもねぇ」
「……難しくないのかぁ」
ボスは苦笑するしかなかった。
その狩るのが難しくない獲物に、この町は随分と頭を悩ませているからだ。
ダッシュボアは非常に繁殖速度が速く、定期的に駆除をしないとアドリンナ程度の町はダッシュボアの大群に滅ぼされてしまう。
だがダッシュボアは個体としても強く、毎度重傷者や死者が出てしまう程の危険な仕事となっている。
アドリンナには冒険者ギルドは存在しているが、あまりにも王都から離れているし、冒険者が活動したいと思う程のめぼしいものがこの町には存在しない。
故に、アドリンナ生まれの若い冒険者しかおらず、ダッシュボアには非常に手を焼いていた。
「ボス、彼はあの名前のない村の出身みたいで、どうやらお金が欲しいみたいなんです」
「金を? 何でまた」
アルビィは、ボスにリュートとの出会いの話をする。
話を聞いたボスは一瞬唖然とするも、愉快そうに笑いだす。
「こりゃ本物だな! しかも噂のあの村の出身か、それなら期待できるな」
「俺もリュートの腕前を見た訳じゃないですが、外にダッシュボアの死体が置いてあります。実力は本物なのは間違いないと思います」
「だな。おい、リュート」
「ん?」
「明日の朝、ダッシュボアを駆除する仕事があるんだ。もし参加してくれたら報酬として金を出そう。どうだ、やらないか?」
「おかねか!? やるやる!!」
「よし、決まりだな。後、今日の宿は決まっているか?」
「うんにゃ、まだ決まってねぇだ。今来たばかりだ」
「ふむ。なら明日早朝――そうだなぁ、朝六時にここに来てくれないか?」
「ろくこく……? 何だそりゃ?」
「……時間の概念すらないのか、あの村は。まぁいい、時間通りに来てくれたら、報酬前払いって事でうちから宿代を出そう」
「ほんとかぁ!?」
「ああ。店主には余裕をもって起こしてもらうように伝えておくから」
「ホント嬉しいだよ。ありがとな!」
美形の顔をくしゃりとさせ、屈託もない笑顔を向けて礼を述べるリュート。
男色の気は一切ないボスも、一瞬たじろいでしまう程破壊力がある笑顔だった。
「……んんっ! では報酬の話だが、今回の仕事は出来高制だ」
「できだか……? 狩れば狩る程おかねを貰えるっちゅうことか?」
「そうだ。一匹仕留める毎に五百ペイを出そう」
「……五百ペイって、どれ位だ?」
「ふむ、この町の宿屋で朝食夕食の二食付きで一泊出来る金額だな」
「そりゃすっげぇな! あいつ一匹にそれだけおかねくれるだか!」
「ああ。とにかく確実に仕留めてくれ。お前が仕留めたかどうかは、その矢が刺さっているかどうかで判断する」
「わかっただ」
「リュートから質問はあるか?」
「ん~、とにかく仕留めればいいんだべ?」
「おう。今回の駆除は食料確保でもない。遠慮なくダッシュボアを仕留めてくれ」
「わかっただ。後は特には無い」
「なら明日の朝頼む。アルビィはリュートを宿屋に案内してやってくれ。金はうちに後で請求するように店主に伝えろ」
アルビィは敬礼した後、リュートを連れて部屋を出る。
リュートは思った。
お金というのは、意外と楽に稼げるんだなと。
他の住宅より堅牢そうな建物で、リュートの村では一番大きかった村長の家より、数倍大きいものだった。
「……こんなでっけぇ建物、オラ初めて見ただよ」
呆気に取られてつい言葉をこぼしてしまうリュート。
その言葉にアルビィは苦笑するしかなかった。
「さ、中に俺達のボスがいるから、ついてきて」
「わかっただ」
「あっ、仕留めた獲物は持ち込めないから、ここに置いておいてね」
「んだ」
詰め所の外壁に近い場所にゆっくりと、ダッシュボアの亡骸を置く。
本当は地べたに直置きするのは、狩人としては好ましくはないのだが、物々交換出来ないのであれば気にする必要はないと判断した。
そしてアルビィの後を付いていき、建物の奥へ進んでいく。
するととある部屋の扉の前で止まる。
どうやら目的地はここらしい。
アルビィは扉をノックする。
「ボス、ちょっと時間貰えませんか? 話したい事があります」
「おう、いいぞ。入れ」
扉の奥から低い男の声が聞こえる。
アルビィは失礼しますと言い、扉を開けた。
部屋の奥には、作りの良い机の上に座っている、筋肉隆々の男がいた。
アルビィはその男に対して敬礼をする。
「ボス、例のダッシュボア駆除の件で、かなり有能な男がいたので連れてきました」
「ほぅ。お前の後ろにいる男前が、それって事か?」
「そうです。彼は一人でダッシュボアを容易く狩る事が出来るようです」
「そりゃ凄いじゃないか! そこのお前、自己紹介してくれないか?」
ボスと呼ばれる男は、リュートに指を差して自己紹介を求めた。
「んだ。オラはリュートだ。見ての通り弓使いだよ」
「お、おぅ……。顔に似合わず訛りが凄いな。まぁいいや。お前がダッシュボアを一人で狩れるってのは本当か?」
「んだ。オラんとこの村の主食だし、別に狩るくれぇなら難しくもねぇ」
「……難しくないのかぁ」
ボスは苦笑するしかなかった。
その狩るのが難しくない獲物に、この町は随分と頭を悩ませているからだ。
ダッシュボアは非常に繁殖速度が速く、定期的に駆除をしないとアドリンナ程度の町はダッシュボアの大群に滅ぼされてしまう。
だがダッシュボアは個体としても強く、毎度重傷者や死者が出てしまう程の危険な仕事となっている。
アドリンナには冒険者ギルドは存在しているが、あまりにも王都から離れているし、冒険者が活動したいと思う程のめぼしいものがこの町には存在しない。
故に、アドリンナ生まれの若い冒険者しかおらず、ダッシュボアには非常に手を焼いていた。
「ボス、彼はあの名前のない村の出身みたいで、どうやらお金が欲しいみたいなんです」
「金を? 何でまた」
アルビィは、ボスにリュートとの出会いの話をする。
話を聞いたボスは一瞬唖然とするも、愉快そうに笑いだす。
「こりゃ本物だな! しかも噂のあの村の出身か、それなら期待できるな」
「俺もリュートの腕前を見た訳じゃないですが、外にダッシュボアの死体が置いてあります。実力は本物なのは間違いないと思います」
「だな。おい、リュート」
「ん?」
「明日の朝、ダッシュボアを駆除する仕事があるんだ。もし参加してくれたら報酬として金を出そう。どうだ、やらないか?」
「おかねか!? やるやる!!」
「よし、決まりだな。後、今日の宿は決まっているか?」
「うんにゃ、まだ決まってねぇだ。今来たばかりだ」
「ふむ。なら明日早朝――そうだなぁ、朝六時にここに来てくれないか?」
「ろくこく……? 何だそりゃ?」
「……時間の概念すらないのか、あの村は。まぁいい、時間通りに来てくれたら、報酬前払いって事でうちから宿代を出そう」
「ほんとかぁ!?」
「ああ。店主には余裕をもって起こしてもらうように伝えておくから」
「ホント嬉しいだよ。ありがとな!」
美形の顔をくしゃりとさせ、屈託もない笑顔を向けて礼を述べるリュート。
男色の気は一切ないボスも、一瞬たじろいでしまう程破壊力がある笑顔だった。
「……んんっ! では報酬の話だが、今回の仕事は出来高制だ」
「できだか……? 狩れば狩る程おかねを貰えるっちゅうことか?」
「そうだ。一匹仕留める毎に五百ペイを出そう」
「……五百ペイって、どれ位だ?」
「ふむ、この町の宿屋で朝食夕食の二食付きで一泊出来る金額だな」
「そりゃすっげぇな! あいつ一匹にそれだけおかねくれるだか!」
「ああ。とにかく確実に仕留めてくれ。お前が仕留めたかどうかは、その矢が刺さっているかどうかで判断する」
「わかっただ」
「リュートから質問はあるか?」
「ん~、とにかく仕留めればいいんだべ?」
「おう。今回の駆除は食料確保でもない。遠慮なくダッシュボアを仕留めてくれ」
「わかっただ。後は特には無い」
「なら明日の朝頼む。アルビィはリュートを宿屋に案内してやってくれ。金はうちに後で請求するように店主に伝えろ」
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