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第一章 旅立ち編
第24話 田舎者弓使い、王都に辿り着く
しおりを挟む商人と話をしてから、リュートは足りない知識を補っていた。
どうやら王国兵士いなるには学力も必要で、残念ながら今のリュートに学力は備わっていないともストレートに言われたのだった。
その為、冒険者を二年程やりつつ、必死に勉強する意気込みでないと筆記試験は合格できないと言う。
正直遠回りにはなってしまうが、村には学校などの教育機関が存在していなかったので仕方ないと、受け入れるしかなかった。
商人はその日の内に王都へ帰っていったが、また再会の約束をして別れた。
町に滞在中、リュートは木の矢作りに励んでいた。
盗賊を始末する過程において、相当矢を消費してしまったからだ。
鉄の矢ももう残りが少ない。
矢を五十本も収納できる矢筒が、非常に寂しい状況にある。
適当な木の枝を拾ってナイフで先端を尖らせ、急拵えで四十本用意できた。
しかし道中でまた何か不測の事態が発生する懸念もある為、リュックに二十本程木の矢を入れておき、矢筒に補充できるようにしていた。
そして弓の感覚を忘れないように、適当に食べられそうな獲物を町郊外で探し、弓で仕留めて宿屋に肉を提供する。
すると大変ありがたがられ、食事は豪華になった。
いつの間にか町の害獣と呼ばれている《ブラッディウルフ》も討伐しており、町の人達からもとても感謝された。
「まるで冒険者の方々のようだよ、ありがとうございます」
その時「なるほど、冒険者ってこういう良い気分を味わえるんだ」とも思った。
国民からの依頼を受け、仕事に対する評価を金銭だけでなく礼でもくれるんだと。
純粋に嬉しいし、自分の技術が人の役に立っているというのが明確に伝わるのだ。
良い気分にならない訳がない。
そして二泊し終え、町を去る時には町民皆に見送られる形となった。
リュートとしては照れ臭かったが、冒険者としてやっていく覚悟は出来た。
「うっし、この先何が起こるかわかんねぇけんども、いっちょやったるか!」
リュートは足取り軽く、すいすいと王都への道を進む。
正直まだ少し迷いや不安はある。
だが、商人に言われたように、後悔のない選択をしたつもりだ。
悩んでいる暇があるならとにかく前へ進もう、歩みを止めるのはまた困難にぶち当たった時でいい、と。
旅の途中でゴブリンに遭遇して排除したり、豚鬼に不意打ちを食らったが、特に問題なく討伐出来た。
オークの肉は豚肉より脂がのっていて非常に美味なので、野営の時にオークの肉を舌鼓を打ちながら堪能した。
もう王国兵士の募集に間に合わないので、走る事もなくのんびりと旅を楽しむ。
閉鎖環境だった村では味わえない景色に感動しつつ、木にぶら下がっていた美味しそうな木の実を口にして甘味を楽しんだり。
王都への旅路は非常に充実していた。
金銭は若干程度だが二泊程度の余裕はあるし、この道では特に使うような事はないだろう。
というか、自給自足は余裕でこなせるリュートにとって、あまり金銭は必要ない旅路だった。
今後、また死を望む人に出会うかもしれない。
そうなった時、上手く説得出来るかわからないけど、話を聞いてアドバイスは出来るかもしれない。
商人がリュートに再起させてくれた言葉をくれたように。
ザナラーンの女性の事は、あまりにもショックでリュートはさっさと諦め、放置してしまった。
もしかしたらその行為自体が、女性をあの凶行に走らせてしまったのかもしれない。
だからもう少ししっかりと対話をしてみよう。
リュートはそのように心に誓った。
村を出て数週間経つが、リュートは確実に、無自覚だが精神的に成長をしているのだった。
ライーカの町を出て約三週間。
リュートはついに王都に辿り着いた。
《王都強者が集まる都》
この世界の言葉の意味通り、様々な意味での強者が集まり出来た都である。
商いに優れた者、農畜に優れた者、冒険者として優れた者、建築に優れた者、知力に優れた者等々。
実力主義社会のラーガスタ王国で、自身が頂点だと信じる者が集まって出来た都市である。
勿論発展途上の人間もいるが、大体が大きな野心や成り上がりを胸に抱いており、異常とも言える向上心を持った人間はライディバッハ以外ではなかなか見られない程だ。
王都と言うだけあり、その豪華絢爛たるや、今まで見てきた町は足元に及ばない。
リュートは、この圧倒的煌びやかさと都会の頂点にあるライディバッハを目にし、呆然と立ち尽くしていた。
「……今までオラが都会だと思ってきた町は、王都に比べたらそうでもなかったんだべな」
第一声がこれである。
ライディバッハは乗り越えるのが容易ではない程の高い外壁に囲まれており、純白の外壁にアクセントとして金の意匠が施されており、非常に高貴な雰囲気をまとっていた。
そんな外壁が左右の地平線まで届くのではないかと思う程広がっている事から、ライディバッハは相当広い都なんだと想像が出来る。
「と、とととととりあえず、な、中に入るべ」
リュートは外壁に備わっている、これまた豪華な正門前まで歩いていく。
正門には王国兵士が四人おり、入門しようとする人達を丁寧にチェックしていた。
リュートも最後尾に並び、待つ事十分。
ついにリュートの出番となった。
「次の君、王都に来た理由を述べよ」
王国兵士がリュートに質問をしてきた。
その時、他三人の王国兵士がリュートに鋭い視線を送り、何か書類に目を通しながらリュートの全身をくまなく見ているようだった。
正直気持ち悪い視線だったが、恐らく王都に入って大丈夫な人間かを精査しているのだろうと納得させる事にした。
「お、オラ、王国兵士になる為に来ただよ!」
「……顔に似合わない訛りの強さだな。残念だが、今年度の募集はすでに終わっているぞ?」
「わかってるだ。オラは勉強が出来ねぇから、ここで冒険者さなって、しっかり勉強して王国兵士になるだよ!」
「ほほぅ、なかなか良い目標だな。私個人としては非常に好ましい。さて、住民票は持っているかな?」
「……じゅうみんひょう? それ持ってねぇと王都入れねぇだか?」
「いや、だが担保として二千ペイは頂く。冒険者になって免許証を貰うか、役場で住民票を発行してくれれば、役場にて二千ペイは返す仕組みになっている」
「成程……。確か足りる筈だべよ」
リュートは懐から金が入った袋を取り出し、王国兵士に渡した。
……残り六百ペイとなってしまった事に、ちょっとした悲しみを覚えたリュートだった。
「うん、確かに。先に言っておくと、犯罪を犯した場合は重罰に処されるから注意するように」
「……犯罪。ぶっちゃけオラ、何が犯罪になるかわからねぇだよ?」
「そこは冒険者として登録する時に講習がある筈だ。講習の中で何が犯罪にあたるかという簡単な説明をしてくれる。将来に関わる重要な事だから、しっかりと聞くようにな」
「わかっただ」
「では、入門許可として左手首にこれを付けてくれ」
すると、蛍光色の緑の色をした腕輪を渡される。
リュートは指示に従い、左腕にはめた。
「冒険者ギルドは入門したら、そのまままっすぐ進んでくれ。正面に大きい建物があるから、そこがギルドだ。なるべく早めに行くように」
「わかっただ。ありがとな」
「ああ。ライディバッハは、冒険者で成り上がろうとする者が非常に多い。そして自分以上に優れた者と出会って挫ける事もあるだろう。だが、諦めずに立ち向かってくれ。君が大成出来る事を心から祈っている」
王国兵士は敬礼をして、リュートを見送った。
リュートも敬礼に対して軽く会釈をして返し、正門をくぐる為に歩を進める。
(……オラ、ついに王都にやってきただよ)
自然と胸が高鳴る。
周囲のがやがやした騒音をかき消す位に、自身の煩い心音が耳に入る。
リュートは深く深呼吸をして、大股で一歩を踏み出し、正門をくぐった。
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