田舎者弓使い、聖弓を狙う

ふぁいぶ

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第二章 冒険者活動編

第30話 田舎者弓使い、流れ者たちに感激される

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《ジャパニーズ》の面々は、《ステータス》の詳細やスキルの事、そして自分達の事をじっくりと話した。
 ……約一刻一時間かけて。
 どうやら流れ者達の世界は、一般人に関してはほとんど争い事とは無縁の世界らしい。
 魔法もない、魔物もない。
 争いが起こるとしたら犯罪に巻き込まれるか、一般人同士の喧嘩、後は虐め位なのだそうだ。
 そして彼らは彼らの世界ではまだ未成年で、親の庇護下でゆっくりと成人になるまで知識を蓄えている期間に突如この世界に迷い込んだのだ。
 当然戦いなんて全くわからない彼らは、持ち前のスキルで何とか今まで生き残ってこれたのだと言う。
 長い黒髪を持っているリョウコは「早くおうちに帰りたい」と涙を流す。
 ショウマは自分達の世界に恋人がいたそうで、もう忘れられたかもしれないと時折絶望した表情を見せている。
 無表情を貫いていたチエも、唇を噛みしめて涙を流したタイミングがあった。
 タツオミに関しては非常に前向きで、帰れないなら帰れないでこの世界で頑張るとの事。

 湿っぽい空気になりながら、彼らの話を聞く《ジャパニーズ》以外の面々。
 それでも内心、無償で《ステータス》とユニークスキルを得た事に納得がいかないのも事実だった。
 どうしようかと《竜槍穿》のリーダーで今回の多人数協力依頼レイドのリーダーでもあるハリーがどうやって締めようかと考えている時、リュートが口を開く。

「そっかぁ、おめぇら本当よく頑張ったな。とっても偉ぇだよ」

「「「「え?」」」」

 リュートの言葉に驚く《ジャパニーズ》のメンバー達。

「だってそうだべ? 今まで戦った事すらねぇおめぇらが、|《ステータス》《もらったもん》をちゃんと使いこなして今日まで生き抜いたんだべ」

「……ああ、頑張ってきたよ」

 ショウマが頷く。

「んだろ? 普通なら戦った事ねぇやつが、突然もらった力を使いこなせる訳がねぇべ」

「ああ、貰ったスキルを大分研究したり練習したよ……」

「何で他の奴らが情けなく嫉妬してるかわかんねぇけんど、オラは手前てめぇが持ってるもんを全て出せる奴は普通に尊敬できるだよ。だから、オラはおめぇらの事を、すっごく尊敬するだよ!」

「……リュート」

 リュートの言葉に感激するショウマ。
 今まで彼らは、この異世界の人間に優しい言葉を掛けられた事は一切なかった。
 だが、目の前のイケメンは褒めてくれたし、尊敬もしてくれる。
 こんなに嬉しい事はなかった。

「で、でもよ!」

 そこで反論するウォーバキン。

「俺様達が頑張って稼がないと身に付けられない《ステータス》を、何の代償もなく使えてるのはやっぱり狡いだろうよ!?」

「何処が狡いんだかよくわかんねぇぞ? ならウォーバキンは、《ステータス》を身に付けたらすぐに強くなれるんけ?」

「……それは――」

「《ジャパニーズ》の《ステータス》は、きっと戦いに慣れてねぇこいつらの為に付いている特典って思えばいいだけでねぇの? それにスキルの使い方だって教えてもらえねぇでこの世界に放り込まれたんだべ? なら戦い方の他にもスキルの使い方も練習しなくちゃなんねぇ」

 リュートは一旦自分の言葉を区切り、《ジャパニーズ》の面々に視線を向けて優しい笑みを浮かべた。

「きっとこいつらは、オラ達の倍以上努力をして、今まで生きてきたんだべよ。やっぱりオラは、尊敬する」

 もう我慢の限界だった。
《ジャパニーズ》の全員が涙を流していた。
 この世界に飛ばされて約二年、こんなに自分達を理解してくれる異世界人はいなかった。
 時には石を投げられて理不尽な怪我をする事もあった。
 同じ冒険者にリンチに合いそうな場面だってあった。
 だから彼らは異世界人も敵だと認識し、今日まで必死に辛い事を乗り越えてきたのだ。
 だが、そんな嫌われ者集団である自分達を、初めて肯定してくれる存在が目の前にいるのだ。
 嬉しくて、今までの苦労が報われた気がして涙した。
 ショウマは代表として、リュートに礼を言う。

「……ありがとう、リュート。俺達を認めてくれたの、貴方が、初めてだ……!」

「オラの田舎は狩りをやってる村でな、狩りが出来ねぇ奴は村から追い出される定めなんだべよ。だから、オラはしっかりと戦えてるおめぇらを尊敬している、ただそれだけだよ」

「それでもだよ、ありがとう、リュート!」

 ショウマの礼に、ちょっと照れ臭そうにするリュート。
 自分の中では当たり前の持論を言っただけなのに、ここまで感涙されるとは思わなかったのだ。

「僕からも感謝するよ。ある程度上手く立ち回れていたと思うけど、やっぱり心にクるものが多くあったんだ。君の言葉に、僕も救われたよ」

 タツオミも泣きながら精一杯の笑顔で、リュートに感謝の言葉を述べた。
 そして《ジャパニーズ》の女性陣には、手を握られて感謝される。

「ありがとうございます、リュート! 理解してくれて本当嬉しいです!」

「私も嬉しい、ありがとう、リュート

「さ、さま?」

 誰がどう見てもイケメンだと答えるだろうリュートの優しい微笑みに、ハートを射貫かれてしまったチエとリョウコ。
 リュートは相変わらず無自覚に、女性を惚れさせる無自覚恋愛スナイパーだった。
 そんなリュートと《ジャパニーズ》の面々のやり取りを見て、《竜槍穿りゅうそうせん《鮮血の牙》のメンバー達は俯いてしまう。
「流れ者は《ステータス》をただで貰える卑怯者」という認識があったが、リュートの言う通りで、彼らの元の世界での境遇を考えたら卑怯でも何でもなかったのだ。
 彼らはただ、使えるものを使ってがむしゃらに生きてきただけ。
 きっと鍛錬は自分達以上の事をしてきたんだろう。

(本当、ただの醜い嫉妬心丸出しじゃないか)

 ハリーは内心そう思い、溜息を漏らす。
 なら、自分がやる事は一つだ。
 ハリーはショウマの前に立ち、頭を下げた。

「すまなかった。君達にそんな境遇があった事も知らずに、嫉妬心から来る悪意をぶつけてしまっていた。許してほしい」

「……ハリー」

「リュートの言う通りだ。戦いも知らないのに生き抜いてこれた君達は、俺達なんかよりも努力してきたのだろう」

「……いや、あんた達だって銀等級だ。とてつもない努力をしているのはわかる」

「ありがとう。しかし流れ者が色々やらかしている事実があるから、やはり流れ者に対して警戒心はどうしても解けない。だが、君達だけは、信用できると思っている」

「……ハリー」

「少なくとも《ジャパニーズ》の皆は信用する。背中も預ける。だから、俺達と一緒にこの多人数協力依頼レイドを達成しよう。そして達成したら皆で打ち上げをやろう!」

「……うん、うん!」

 ショウマとハリーは固い握手をする。
 それを見て、ウォーバキンも自分の髪をぐしゃぐしゃにして、勢いよく立ち上がる。

「俺様も、言い過ぎた。だから俺様達もお前らだけは信用する! 事情を知らねぇで喧嘩売って、悪かった……」

「……わかった、許すよ」

「……ふん」

 ウォーバキンは照れ臭そうにそっぽを向きながら、自分の席にどかっと腰を下ろした。
 そんなウォーバキンを見て、《鮮血の牙》の面々はウォーバキンをからかい始める。

「さて、仲が深まった所で多人数協力依頼レイドの打ち合わせをしたいと思うのだが、他に質問はあるか?」

 ハリーが二回拍手をして、質問を締めようとする。
 そこに、レイリが手を挙げる。

「《ジャパニーズ》の皆に聞きたい。わかったらでいいのだが、何故流れ者は結構な確率でやらかすのだ? 多人数協力依頼レイドに関する質問じゃなくて申し訳ないが、せっかくの機会だから聞いてみたいと思ったのだ」

 レイリの疑問に、リュートと《ジャパニーズ》以外のメンバーは「ああ……」と声を漏らす。
 流れ者とこのように接する機会はなかなかないので、言われれば気になる、と思い始めた。
 そこでチエが手を小さく挙げて「私が答える」と言う。

「私達の世界はさっき言った通り、魔法がない代わりにこの世界よりかなり発展した場所。そして私達の世界では魔法とか剣を使う世界を題材にした物語が多く溢れている。そんな文明が発達した私達が、文明が発展途上の異世界に飛ばされて、私達の知識をフル稼働して無双する物語も多くある」

 無双という言葉を聞いて、誰かが「だからあんなにはっちゃけるのか」と言葉を漏らした。

「ん。だから、貴方達が言う流れ者がはっちゃけて迷惑をかけているのは、そういう物語の影響を強く受けているからだと思う。なんか、ごめん」

 チエが流れ者の代表のように謝る。
 現地人であるメンバー全員は「お、おぅ」とその謝罪を受け取っていいのかわからない返事しか返せなかった。

 そこで、リゥムが手を挙げる。

「例えばさ! その物語ではどういう無双を繰り広げてるんだ? ちょっと俺っち気になるってばよ!」

「……私が知る限りだと、科学を使ってとんでもない魔法を生み出したり」

「うんうん」

「私達の世界の兵器を開発して、敵を一掃したり」

「……確かそんなのをやらかした流れ者、いたなぁ」

「ハーレム作って、国を立ち上げたり」

「……そんな事やってる流れ者もいたなぁ」

 その他にも色んな物語を簡単に説明してもらったが、過去の流れ者がやらかした事件に類似するものは非常に多かった。
 そこで彼らの創作のせいで流れ者ははっちゃけるという確信を得る事が出来た。

「他には――」

「チエ、ストップ! もう十分、俺っちもうお腹一杯!」

「わかった」

「という訳で、俺っちの質問は終わり!」

「私も納得した。ありがとう」

 リゥムとレイリはチエに礼を言う。
 納得した回答を得られて満足できた。
 まぁそれでも現地人である自分達からしたら、随分とはた迷惑な回答だったが。

「後は質問したい奴は――いなさそうだな。ではこれより多人数協力依頼レイドの打ち合わせを始める。だが――」

 ハリーが質問を切り上げて、早速多人数協力依頼レイドの内容を語り始める。

「今回の多人数協力依頼レイドは、集落コロニーが形成されている可能性がある。相当な覚悟が必要だ」

「ころに~?」

竜槍穿りゅうそうせん》以外のメンバーの頭には、クエスチョンマークが浮かんだ。




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〇ゴブリンの詳細
 ゴブリンは、自分達の適正に合わせて進化する《適応進化》を持ち合わせた魔物である。
 まだ進化に至っていないゴブリンは非常に弱く、討伐難易度は一番下のFなのだが、戦闘経験があって生き残ったゴブリンは即座に培った知識を吸収する。
 人間との戦い方を覚えた段階をホブゴブリンと呼ぶ。
 ホブゴブリンの討伐難易度は一気にDまで上がり、彼らの練度によってはC相当にまで至る。
 そしてゴブリンの厄介な所は、「自分の適性を把握する天才」である事だ。
 ホブゴブリンに至った彼らが更に戦闘経験を得ていくと、自分が何に向いているかを把握していく。
 あるゴブリンは剣や弓を使うのに優れていると気付き、あるゴブリンは力に優れていると気付き肉体を変化させ、あるゴブリンは自分の中に魔力がある事に気付いて人間と同じように魔法を使い始め、あるゴブリンは群れをまとめ上げて策略を思いつくのが得意だと気付く。
 そうなってくると討伐難易度は一番低くてもC、一番高いとAにまで上昇する。
 そしてゴブリンを統率するゴブリンキングがいた場合、集落コロニーを形成する。
 この集落コロニーは多くの冒険者の心にトラウマを残す事になる――
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