12 / 22
第十二話 金の価値と文字習得
しおりを挟む儂はグライブ達と別行動をする事にした。
夕方になったら、指定された宿屋に来るようにと言われたから、それまでしっかりと無駄なく行動をするつもりじゃ。
まずは一つ目。金の価値を見定める事。
これは非常に大事な事で、金の価値がわからなければ、金が絡む話では圧倒的に不利な状況となってしまう。
儂の頭の中では日本円でしか価値は測れぬから、地球と同じ物があったらそれなりに価格は把握している。きっと日本円と価値のずれはあるじゃろうが、大事なのは儂がある程度の価値の基準を持つ事にある。
儂は大通りを直進する。
かなり活気に溢れていて、良い町だと思う。
露店を見ながら歩いていると、ついに見覚えのある物を見つけられた。
じゃがいもだった。
じゃがいもは確か日本円で二十から三十円程だった。ここでは三十円としておこうかの。
さらにその露店の商品を見ると、商品の隙間に立て札が置いてあった。それらは各商品に置かれている為、恐らく価格表なのだろうと判断。
となると、適当な値段を吹っ掛けられる確率は非常に少ないと判断した。
儂はポケットの中に入っている金貨を一枚握りしめて、その露店に向かった。
「いらっしゃい! 何が欲しいんだい?」
初老の男性である店主が、気持ちの良い笑顔で話し掛けてきた。
ふむ、この人物は優しそうだから、今からする事も怒られそうにないな。
恐らく金貨は相当な価値だ。
儂が今から試そうとしているのは、このじゃがいも一個を金貨で買った場合、いくらお釣りが来るかだ。
そうする事で、金貨の価値がわかるし、自動的に日本円で金の価値もある程度わかる。
「店主、このじゃがいもを一つくれんかね?」
「一個でいいのかい? なら、鉄貨三枚だ」
「ふむ。おっと、すまんの。今の持ち合わせはこれしかなかったわい」
店主の手に金貨を握らせる。すると、店主の目玉が飛び出そうな程、目を見開いた。
「き、金貨だぁ!? ちょ、ちょっと待ってくれ! 計算するから!!」
店主が必死になって、指を折って数えている。
ちょっと時間が掛かりそうじゃな。必死に頭を抱えながら計算をしている。
そして、やっと答えが出たようじゃった。
「えっと、お釣りは銀貨九枚に、銅貨九枚、鉄貨九枚、石貨七枚のお釣りだ。確か細かいのはあったはずだから用意するよ。待っててくれ」
「すまないな。お手数お掛けする」
「本当だぜ、全く……」
すまぬな、店主。
これも価格調査の為じゃ、許しておくれ。
しかし、おかげで金の価値がわかった。
じゃがいもを三十円と仮定すると石貨は十円玉、鉄貨は百円玉、銅貨は千円札、銀貨は一万円札と同価値。
となると、金貨の価値は十万円という訳か……。
一円玉に相当する金はないのかの?
まぁよい、細かい金が手に入ったし、金の調査も出来たし、充分の収穫じゃ。
じゃがいも一個で相当な情報を仕入れられたぞ。
「ありがとう、店主」
「今度来る時は細かい金を用意してくれよ!」
「すまなかった」
店主が金を皮袋に入れて渡してくれた。
おお、サービスで皮袋も付いてくるのか。それはお得じゃな。
さて次は図書館等があればいいのだが……。
店主に聞いてみるか。
「店主、もし知っていたら教えて欲しいのじゃが、この町に図書館みたいな所はあるか?」
「図書館はあるよ! この先を真っ直ぐ行くと、白を基調にしたデカい建物が見える筈だ。それが図書館だぜ」
「有り難う。これは迷惑料に情報料じゃ。受け取ってくれ」
皮袋の中から銀貨を一枚渡す。
店主は「ありがたく貰うぜ」と笑顔で受け取ってくれた。
暫くはこの皮袋が財布代わりになりそうじゃの。
儂は店主に会釈をした後、ポケットに金が入った皮袋を突っ込んで図書館に向かう。
先程店主の口の動きを確認したが、聞こえる言葉と口の動きが完全に一致していた。
つまり、音声言語は日本語と全く同じという事じゃ。
音声言語が同じとなると、使われている文字に関しても意外に習得は容易なのではなかろうか。
そんな淡い期待を胸にしまい、儂は図書館へ向かった。
先程の露店から五分程歩いたところで、白い大きな建物が視界に入った。
これが図書館なのじゃろう。
儂は扉を開けて入った。
すると、独特の紙の香りが建物全体を漂っていた。
儂は本がかなり好きじゃ。知識とは時に最強の武器となる。そんな武器をくれる知識が凝縮された本からする紙の香りも好きで、とても心地好い空間だと思った。
「ようこそ、イデュリア図書館へ」
左手の方向から女性の声がした。
すると可愛らしい笑みを浮かべた女性が立っていた。あそこが受付なのだろうか。
儂は女性に近づいて話し掛けた。
「ここの本は館内で読むのは無料かな?」
「いえ、館内は入場料を頂きまして、一時間鉄貨一枚になります」
ふむ、となると貸出はやっているのじゃろうか?
そのまま受付嬢に質問をすると、答えが返ってきた。
「はい、行っております。一冊につき鉄貨五枚を頂いておりまして、次の日に返却をして頂きます。もし返却されないと、一日につき延滞金が鉄貨一枚ずつ追加されていきますのでご注意下さい」
一日のみ貸出可能という訳じゃな。
よしよし、十分じゃ。
さて、このお嬢さんにも無茶なお願いをしようかな。
「実は儂はな、世捨て人でな。見聞を広める為に旅をしているのじゃが、いかんせん文字がわからん」
「そうなのですね、ご苦労されているようですね」
お嬢さんから哀れみの視線を向けられている。
世捨て人って、哀れみの対象なのかの?
「そこでじゃ、これで文字の読み方だけを教えて貰えんかの?」
儂は皮袋から銀貨二枚を取り出した。
受付嬢は目の色が変わり、「喜んで!」と満面の笑みを儂に向けた。
現金なお嬢さんじゃの。ま、正直で宜しい。
生憎館内には利用者は誰もいなかった為、入場料を支払って、適当に席に座って講義を受けた。
儂の予想通り、音声言語が一致している為文字もそこまで難しくはなかった。
この世界の文字は、形は全く違うが平仮名と同様に五十音の記号で表現している。数字に関しては別の記号を使っている。
儂は彼女に五十音の表を書いて貰った後、その記号の隣に平仮名を記入していく。
儂の文字に彼女が「これが世捨て人独自に使われている文字ですかぁ」と関心があるように見つめていた。
これで問題ないな。
「助かった。これで儂も心置きなく読書が出来る」
「いえいえ、こちらこそ銀貨を二枚も頂けて嬉しいです!」
「文字が読めるようになったのじゃ、二枚でも少ない方じゃ」
「では銀貨をもう一枚頂けたら、見聞が広められる本をお薦めしますよ?」
ほう、なかなかこのお嬢さんは出来るな。
欲に目が眩んでいるが、こちらが欲しい情報を的確に引き出して交渉してきおった。
まぁ儂はこの世界に来てまだ何も知らない。授業料だと思ってその話に乗る事にした。
ただではないがな。
「くれてもいいが、条件があるの」
「条件ですか?」
「うむ、支払うのは明日じゃ。その本の中身を見て、儂を騙していないかを確認してからになるの」
「それで構いません。大丈夫です、詐欺はしませんから」
「口ではいくらでも言えるじゃろう、行動で示して欲しいの」
「わかりました。ではこちらへ」
儂は受付嬢の後に付いていき、館内を歩く。
無数の本が本棚にぎっしり収納されている。
儂の本好きの虫が騒ぎ始めており、早く本を読みたいと頭の中で騒いでいた。
館内の奥へ進んでいると、受付嬢が足を止めた。
「こちらが、お薦めの本ですよ」
儂は受付嬢に差し出された本を手に取って表紙を見た。
先程彼女から頂いた五十音表を見ながら本のタイトルを読んだ。
「えっと、世界創生録?」
「はい。こちらは最近刊行された本でして、現状有力な仮説や明らかになっているものを纏めあげた、最有力の世界創生を綴った本です。この本を読めばこの世界の歴史や現在の地図等がわかりますよ。簡単にですが、各地方の都市の特徴も書いてあります」
ふむ、創生録か。
意外とこういう本は馬鹿に出来ない。
何故なら、そういった仮説が常識となっている事が多いからじゃ。
地球で言うところの《進化論》。あれは否定的な意見がかなり多いのに、世間一般では常識且つ正しいようにメディアでも使われている。
日本では全く否定的な部分を取り上げないせいか、一般人は進化論が正しいと思っている。
ここで知らなかったり反論すると、バッシングの対象になって面倒な事が起きてしまう。
故にこういう創生録も知っておいて損がないのじゃ。自分の身を守る為にな。
しっかし、なかなか分厚い本じゃなぁ……。
これ、明日までに読み終わるかのぉ。
そこは文字を完全に覚える為にも、頑張らねばいかんな。
とりあえずはこんなものかの。
まだ時間はたっぷりあるし、町をぶらぶらして買い食いでもして楽しもうか。
儂は本の貸出料金を支払い、図書館を出た。
0
あなたにおすすめの小説
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
【完結】魔王を殺された黒竜は勇者を許さない
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
幼い竜は何もかも奪われた。勇者を名乗る人族に、ただ一人の肉親である父を殺される。慈しみ大切にしてくれた魔王も……すべてを奪われた黒竜は次の魔王となった。神の名づけにより力を得た彼は、魔族を従えて人間への復讐を始める。奪われた痛みを乗り越えるために。
だが、人族にも魔族を攻撃した理由があった。滅ぼされた村や町、殺された家族、奪われる数多の命。復讐は連鎖する。
互いの譲れない正義と復讐がぶつかり合う世界で、神は何を望み、幼竜に力と名を与えたのか。復讐を終えるとき、ガブリエルは何を思うだろうか。
ハッピーエンド
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/03/02……完結
2023/12/21……エブリスタ、トレンド#ファンタジー 1位
2023/12/20……アルファポリス、男性向けHOT 20位
2023/12/19……連載開始
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる