ザ・ファイター ――我、異世界ニテ強者ヲ求メル――

ふぁいぶ

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第十六話 地龍の型

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 儂と女性の乳を強引に揉んでいた男は、宿の外へ出た。
 そして儂達を取り囲むように、野次馬が集まる。
 人で出来た闘技場の出来上がりじゃな。
 筋骨隆々だが肌が荒れているブ男は、背丈半分程の刃がある両刃の剣を構えた。
 対して儂は、元々から装備していた鉄製の籠手とブーツ。リーチ的に圧倒的に不利なのは儂の方だった。

「てめぇ、武器はねぇのか!?」

「いや、あるじゃろ。ほら」

 籠手とブーツを軽く叩いて音を鳴らす。
 周囲の野次馬は絶望したような反応を見せ、ブ男は笑った。

「そんな武器でてめぇはこの俺に喧嘩を売ったのか!」

「そうじゃよ。じゃが、そんじょそこら辺の素手より遥かに危険故、あまり舐めたら大変じゃぞ?」

「へーへー、忠告受け取っておくぜ、アルカナゼロさんよ!!」

 男は剣を上段に構える。
 そして、男の全身が青い光に包まれた。

「《加速アクセル》!」

 アクセル。
 確か異常な程動きが加速するスキルじゃったな。
 しかし上段に剣を構えていたら、振り下ろししか攻撃手段はないから、至極読みやすい。
 儂はいつでも回避行動を取れるように、五感をフルに活用して奴の攻撃に対応すべく構えた。








 恐らく上段からの振り下ろししか攻撃出来ねぇって思っているだろうな。
 確かにその通りなんだが、あの優男とは決定的に違う部分がある。
 それは、俺はスキルを持っていて、奴はスキルを持っていないって点だ!
 だからスキルの重ね掛けが出来るなんて、ぜってぇ知らねぇ筈だ!!

「《強化チャージ》」

 俺の身体が別のオーラに包まれた。
 赤いオーラと《加速アクセル》の青のオーラが混ざり合い、紫のオーラになる。
 この二つのスキルのレベルは2。レベル1の場合は効果時間が一分程度だが、レベル2になると一気に五分になる。
 これが速さと攻撃力を備えた、《汎用スキル》で理想の組み合わせ!
《汎用スキル》は目覚めた時にランダムでどのスキルが付与されるかが決まる。
 この理想と言われる組み合わせが揃うのは、なかなか多くないらしい。
 
 さぁて、どう対処するよ、アルカナゼロさんよ!!

 俺は地面を蹴って奴に近付く。
加速アクセル》の効果で、まばたきした瞬間に奴との距離は埋まった。
 しかし、奴の表情は一切変わらない。まるでわかっていたかのようだった。
 気に食わない。
 俺は全力で剣を振り下ろした。
強化チャージ》の効果によって、攻撃速度も威力も上がる。
 そのまま頭をかち割ってやる!!










 男が突然儂の目の前に現れ、剣を振り下ろした。
 あの《強化チャージ》というスキルは一度見ている。
 攻撃の威力と速度が確か上がった筈だ。
 事前に儂の意識に「奴が目の前に現れたら、横に飛べ」と刷り込ませていた為、焦る事なく横に飛んだ。
 男の剣が空を斬り、そのまま地面に突き刺さる。
 土なのだが、人通りが多く踏まれて固くなった道の土を、そのまま切り裂いたのだ。
 この威力だと、籠手で防御してもそのまま斬られてしまうじゃろうな。

「なっ!?」

 回避されたのが驚愕する程の出来事だったのか、驚きの表情を隠す事なく視線を儂に向けた。
 戦っている最中に表情を見せるのは、やってはいけない事なんじゃがなぁ。
 さて、こちらも攻撃に移るか。
 正直言って、攻撃スキルを見たら部屋でゆっくり読書をしたい。
 今の一撃でわかったが、回避された際のケアが一切なっていない。
 何を物語っているかと言うと、この男は自分より技量が上の者と戦った事がない。
 恐らく、自分より実力が下の者を、一撃必殺で仕留めてきていたのだろう。
 非常に宜しくない。

 一撃必殺だと、回避された際のケアの方法がわかっておらず、間抜けな表情を相手に晒してしまう。
 さらに言うなら、地面に深く突き刺さってしまった剣を引き抜く動作をしなくてはいけない。
 武器を抜くのを諦めるか、スキルをフル活用して強引に引き抜くかになる。

 目の前の男は、引き抜く方を選んだ。
 奴が全身に纏っている光が神々しく輝き、一気に剣を引き抜いた。
 男は忌々しそうな表情を儂に見せる。

「では、次は儂の攻撃を披露しよう」

 異世界では初披露じゃな。
天地牙流格闘術てんちがりゅうかくとうじゅつ》のもう一つの型である《地龍》。
《天竜》の型が敵の攻撃を利用したり関節技を決めたりする柔の型なら、《地龍》の型はまさに剛なる拳。
 儂は拳を作り、構えた。











 あの優男、俺の一撃を避けやがった……!
 しかも表情を一つも変えずに!
 いや、きっとマグレだ。そうに違いない。
 アルカナゼロが、俺の攻撃を見切れる訳がねぇんだ!!
 俺は引き抜いた剣を手に持ち、正眼で構えた。
 そして《加速アクセル》の力を使って、一瞬で奴との距離を詰める。
 今度は剣を水平に薙ごうとした、その時だった。

「ぐっはぁ!?」

 胸の中心部より下の場所辺りに、身体を真っ直ぐに出来ない程の痛みが襲う。
 その場所を見てみると、奴の拳がめり込んでいた。
 こいつ、俺が目の前に現れる事を読んで、瞬時に攻撃しやがったのか……。
 だめだ、身体がくの字に曲がってしまう。
 どうやっても身体を真っ直ぐに出来ねぇ……。
 すると、奴が飛んだ。
 と思ったら、空中で右足を抱えたまま身体を前に回転させている。
 何だ、この攻撃は。
 嫌な予感がして、咄嗟に魔法を唱えた。

「『炎神えんじんよ、ご加護を!!』」

 俺はこの魔法をよく使う為、詠唱を短縮できる。
 この魔法は《ストレンジ》。
 炎の神の加護を身に纏い、攻撃を無効化し、衝撃を緩和してくれる。剣の斬撃すらも刃を通さずに止めてくれるんだ。
 無事に魔法が発動した。致命傷は避けられただろう。
 何をしてくるかわからなかったが、勘で発動させて良かったと、この直後にわかった。

 奴は空中で回転させた勢いを利用して、俺の頭頂部目掛けて右足の踵を落としてきた。
 踵が俺の頭頂部に直撃したが、《ストレンジ》のおかげで頭部にちょっと衝撃があった程度で、俺自身にダメージはなかった。

「む?」

 優男も少し驚いたようで、攻撃後に後方に飛んで俺との距離を空けた。
 くそっ、《ストレンジ》があの一撃で一発で吹き飛んでしまった。
 この後に《ストレンジ》を再度発動させる為には、約二分程の時間を有する。
 これが短縮詠唱のデメリットだ。

(ちくしょう、さっきの攻撃は《ストレンジ》を消し飛ばす程の威力だったって事かよ)

 心の中で悪態をつく。
 そりゃそうだ、アルカナゼロがこんな鋭い一撃を放ってくるなんて、思っても見なかったからな。
 認めたくねぇが、目の前の男は少し出来る奴みたいだ。
 全力で相手しねぇと、俺がただじゃすまない。
 俺はしっかりと剣を握り締めた。












 ふむ、魔法を詠唱していたようじゃが、まさか儂の《龍尾槌りゅうびつい》をあの場面で防がれるとは思わなんだ。
 この技は、拳をみぞおちか金的をして相手を前屈みの状態にする。無事にその状態になった瞬間右足を抱えて前中する。
 回転力で勢いがついた状態で相手の脳天目掛けて踵落としを見舞う。
 上手く決まれば即死、死ななかったとしても脳震盪を起こしてまともに動けないだろう。
 今回は殺さない程度の力で放ったので、脳震盪程度だと思ったのじゃが、どうやら魔法で防がれたようじゃった。
 だって、殺してしまったら犯罪と見なされる可能性があるからの。多分正当防衛にはなると思うが、この世界の基準が全くわからぬ。ならあからさまな犯罪者以外は殺さない方がいいだろうと判断した。
 だが、恐らく衝撃は伝わったのだろう、頭が若干衝撃に震えたように思える。
 ダメージは無効化されるが、衝撃は緩和される程度か?
 衝撃まで緩和されたら手も足も出なかったが、伝わるのであれば《地龍》の型で十分に戦える。
 そして今のでわかったじゃろう。儂はただのアルカナゼロではないという事を。
 証拠に顔が真剣そのものとなった。
 ならば、近い内に攻撃スキルが見れるかもしれんな。
 さあ、早く儂に攻撃スキルを見せてくれ。
 儂はその悉くを打ち破ってみせようではないか。

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