望む世界

不思議ちゃん

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終わらない始まり

掃討の準備

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 東郷が他の人たちに伝えるためその場を去った後。
 俺を含めて全員が荷物の整理を始める。

 戦うのはすぐそこであるため、俺が必要なのは武器だけである。

 バールと鉈にするつもりだが、バールの持つところに包帯を巻いておきたい。

 ずっとそのまま使っていたが、長く使うとなると手の皮が剥けそうだ。
 むしろ今まで、よく剥けなかったなと思う。

 念のため、残り少なくなったビー玉も全部ポケットにしまっておくが……5個しかなかった。

 おもちゃ売り場もあったし、ここを出るときに補充しないと。
 パチンコもあれば欲しい。

 もちろんパチスロではなく、武器の方だ。

 コンクリート片がそこらにあるため、遠距離での攻撃ができるようになる。

 あったとしてもおもちゃだろうから、どこかで自作する必要がありそうだけど。

「おい」

 包帯でも貰いに行くかと思っていたところで声をかけられる。

 顔を向ければ坊主頭が腕を組んで立っており、不満げな顔をしていた。

 7人はこちらを見ているが、何か言ってくることはなさそうだ。

「何か用?」
「俺はお前のこと、認めてないからな!」
「好きに思ってればいい」

 こういう奴は話が通じない。

 だから流して準備を進めようと思っていたのだが、前に立って邪魔をしてくる。

「まだ話してる途中だろうっ!」
「お前が俺のことをどう思おうが構わないけど、邪魔しないでくれる?」

 ただ、普通に目を見て話しただけなのに。

 坊主頭は一歩後ろに下がり、尻餅をつく。

 もし俺が死んだら。地獄の果てまで追って殺してやる。





 少し時間を無駄にしたが、集合までに準備を整えることはできた。

「おにーさんの戦いがやっと見れるね!」

 皆が集まっている場所に向かえば、懐いた猫のように薫が近寄ってくる。

 外に出て戦うのは精鋭8人と俺、薫を合わせた10人。

 大学生の人と東郷は何かあった時のために待機。

 トランシーバーを手渡されたが、これは集まって来た【ゾンビ】に背後から襲われないようにするためだ。

 いくら動きが鈍いとはいえ、乱戦になったら周りが見えなくなる可能性もある。

「おにーさんにちょっかい出すの、やめたら? 太一じゃ勝てないよ」

 また何か言うつもりなのか、近寄って来た坊主頭だったが。

 それよりも先に薫が口を開き、俺と坊主頭の間に入る。

「私がおにーさんと10回戦っても、勝てるのは3回がいいところだと思う。……そんな話してるより、早く【ゾンビ】の掃討しに行こ?」

 最後の案には賛成だが。

 俺が薫の実力を知らないように、薫も俺の実力を知らないはずだ。

 そういったのを読み取る【異能】なのだろうか。

 少し気になるところができたが、掃討が始まる。
 意識を切り替えなければ。
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