望む世界

不思議ちゃん

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終わらない始まり

既に遅い

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 あれから邪魔が入る事なく、俺1人で【変異種】の相手をしていた。

 短い触手は避けるだけだと確実に当ててくるため、ナイフなりトンカチなりで攻撃して怯ませるか、逸らすしかない。

 本来なら逆光で分かりにくいのだが、身体のどこかを貫かれてる映像を見てるため、どこにくるのかタイミングまで分かっている。

 いまでは攻撃するなり逸らすなりを選ぶ余裕すらある。
 普通なら身体の疲労と比例するようにミスが増えるものだが。

 短い触手を左手に持ったトンカチで殴り。
 距離を詰め、剥き出しの右目に右手で持ったトンカチを叩きつける。

 途中、ナイフは邪魔なだけになったので放り捨て、腰に下げていたトンカチに持ち替えている。

 ナイフで切りつけても怯みが弱く。傷もすぐに塞がる。
 脇腹に穴開けたような事も、タイマンだとやる余裕がない。

 だったらナイフより効くトンカチに持ち替えるだろう。

 そこそこの回数、胴体を殴りつけてるというのに倒せないのは……首を飛ばすしかないのか?

 見えない体力ゲージがある可能性は消した方がいいな。

 内部破壊が出来ているとしても、すでに【ゾンビ】は死んだ身なのだから。
 果たして、どこまで意味があるのか。

 …………?

 【ゾンビ】は上半身と下半身に分けた後だが、心臓の辺りをバールで数回打ち込めば倒せた。

 なら、見えない体力ゲージはあるのか?

 もしあったとしても。
 いつ倒せるのか分からないため、精神的なしんどさはあるだろうが。



 ──ボキッ



 若干慣れた動きで短い触手にトンカチを叩きつけた時。
 音とともに、右手に持っていたトンカチが折れた。

 持ち手が木でできてるやつだから長くは持たないと思っていたが……まさかこんなに早くダメになるとは。

 確かに使い方は荒かったから仕方ないんだが。

 自分でもよくできたと思うが、持ち手だけ残ったトンカチを器用に回して逆手に持ち、剥き出しの右目に突き刺す。

 加えて左手に持ったトンカチで追い打ちをかけようとしたが、そこまでの余裕はなく。

 無理な体勢となったが、転がるようにして背後から貫こうとしてくる長い触手を避け。

 足を狙ってきた短い触手は距離を取ることで対処する。
 そのままさらに距離を取り、長い触手が届かなくなるまで離れ。

 警戒を強めながら【変異種】を見れば、触手を体に巻きつけ、気持ち悪く身体をくねらせていた。

 トドメを刺すなら今がチャンス。
 なんて思いたいが、どうやって近付いても死ぬ未来しか見えない。

 早くしてくれないと興奮が冷め、疲労を強く感じて戦えなくなる。
 ……いや、もう既に遅いか。
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