望む世界

不思議ちゃん

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終わらない始まり

実感

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 しばらくコンクリートを抉っていたが、何もいないと分かるやその場で棒立ちになっている。

 今ので分かったことは走れるということ。そして力が他の【ゾンビ】に比べて強いということの二つ。
 人がいれば押し付けて捕食まで見たかったが、いないものはいない。

 【変異種】が動いたので、迎え撃ちがしやすい位置へと移動する。
 どうやって登るのか少しの不安要素は残るが、慌てたらこっちがアウトだ。

 ジャンプでここまで来る可能性も含めて考えようと思ったが、変な先入観が生まれてダメになりそうな気がした。
 動体視力でどうにかするしかないか。

 屋根から足一つ分の距離をあけたところに立ち。鉈を片手に持って足で屋根を踏み鳴らす。

 その音に反応して【変異種】がこちらに振り向き、走って来る。
 十分合った距離はものの数秒でなくなっていった。

 すぐそこまでやってきた【変異種】は軽めのジャンプで塀に乗り、二度目のジャンプで俺めがけて飛んで来る。

 塀に乗った時点である程度は読めていたので鉈を両手に持って振り上げ、タイミングを合わせて頭めがけ振り下ろす。

 腕を伸ばしてきていたが、半ば賭けで鉈のリーチを信じてやった。
 俺のすぐ目の前まで伸ばされた手は届くことなく、地に落ちる。

 頭の中身を撒き散らしながら地面に落ちていく【変異種】。

 それを見ながら、俺はドキドキしていた。

 散々、安全マークをとって行動してきたというのに、いざやるときには賭けだとか。
 目の前まで迫った【変異種】の手。
 骨を砕き、脳を潰す感触。

 そして【変異種】がコンクリートを抉った音を聞いて集まって来る【ゾンビ】。

 安全だった日がいつ死ぬか分からない世界になった。

 して今、【死ぬかもしれなかった】
 でもまだ、【死ななかった】

「ああ──俺は今、生きている」





 集まってきたゾンビは無視して先に進む事を選んだ。
 今度は【ゾンビ】を正面からやりたいところだが、今度は状況が悪い。

 進む方向と逆にビー玉を一つ投げつけ、進む。
 中には足音に反応してついて来るやつもいたが、途中で電柱に引っかかったりしていなくなっていた。

 武器は鉈2つでも十分だとは思っているが、何かあった用に銃でも持っておくべきか。

 なので次の目的地を交番にする。
 すでに死んで【ゾンビ】になってるかもしれないが、そっちの方が楽だな。
 生きている方が殺すのに面倒だ。

 もしかしたら撃って弾がないかもしれないが、その時はその時で諦めよう。
 元よりなくて当たり前の物なのだし。

 途中、挟んだ休憩で持ってきた飲み物がなくなった。
 ……このお宅から貰ってくか。

 たまたま、休憩していた家のベランダに降り。ガラスの一部をを鉈で壊して鍵を開け、中に入っていく。

 この音で集まるかもしれないけど、そしたら今度は迎え撃つつもりだ。
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