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知らない一面

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ちょっと歩く速さもう少し遅くしてよ」
「いやだ」
「急ぎすぎだよ・・・」
「お前は朝練なめてるだろ。
遅れたらひとたまりもないぞ」
家を出て俺と葵は学校へ向かっていた。
歩くだけで苦労する。
はぁ~。
なんで体が合体したんだ・・・。

朝練が終わって教室に来た。
「おはよう!・・・て、なんで色再と色坂が合体しているんだ!」
「こっちが聞きたいわ!」
クラスメイト達が集まってきた。
とにかく事情を説明した。
「なるほど」
「正反対の人と合体するんなんて、運悪いな」
「ぐぅ・・・」
あー最悪。
居心地悪い。
「はーい席につけ」
先生が来た。
「みなさん、空き箱は持ってきましたか?」
しまった!すっかり忘れていた。
やばい、怒られる・・・。
「ちゃんと僕が朝にカバンに入れたよ」
葵は呆れながら言った。
そうか、あのとき葵は空き箱を探していたのか。
(よかった・・・。でも礼は言わないぞ)
(言わなくていい)
心の中でも揉めている。


昼休みになった。
「おい、どこに行くんだよ」
「どこでもいいでしょ」
昼休みにどこに行くかで喧嘩した。
じゃんけんをした結果、先に葵が行きたいところへ、
その次に俺が行きたいところへ行くことになった。
葵のことなんだから、どうせそこら辺を歩き回るだけだろ・・・。
そう思っていたが、葵は袋を持って外に出て飼育小屋に行った。
「お前飼育委員会なのか?」
「ちがう」
そう言い飼育小屋に入り、中を掃除した。
飼育しているモルモットたちは嬉しそうだった。
そして袋から餌を出して与えた。
葵はウサギを飼っていたみたいだけど、
去年亡くなってしまったみたいだ。
「何で飼育員じゃないのにえさをやっているんだ?」
「動物が好きだから。
この学校の飼育員はさぼっているんだ。だから僕がやっている」
「めんどくさくない?」
「大変だよ、でも動物が大好きなんだ」
そう言い、モルモットを撫でていた。
葵はどこからかとても嬉しい気持ちが伝わった。
葵が動物好きなのは初耳だ。
「ねぇ、私たちも触っていい?」
「うん」
女子生徒たちがきてモルモットを撫でた。
その時何故か葵が少し可愛く見えた。
女子生徒たちはモルモットを撫でて幸せそうだった。
俺も何だかうれしくなった。
でも昔、俺には飼ってたウサギに触らせてくれなかった。



「もう終わった?」
「うん」
「行くぞ」
「どこに?」
「行けば分かる」
そう言い歩き出した。
僕、葵と茜は校舎に入った。
茜は大体クラスメイト達と遊んでいる。
どうせそこら辺でふざけ会うでしょ。
「ねぇ」
「何」
「なるべく話さないようにしよう」
「やだ」
「一人で会話しているみたいで恥ずかしい」
「・・・わかった」
あっさり受け入れてくれた。
僕らは合体しているから心の中でも話せる。
茜の行きたいところへ行くから歩くのは茜に任せている。
ふと気づいたら他の教室に着いていた。
「よう」
「茜!・・・なんか合体してない?」
「そこは置いておいてくれ」
(茜、ここは一体?)
(ここは支援教室。発達障害とかを持っている生徒が通うところだ)
そう言い、僕らは教室に入った。
「今日何する~?」
「縄跳び!」
誰かが言うとみんなで外に出て縄跳びを始めた。
(いとこが障害者なんだ。だから週2回こうやって遊んでいるんだ)
(どうしてこの子たちと遊ぶの?)
(いとこは障害者で遊ぶことが難しいから独りぼっちなんだ。
それに周りの人からいじめられている。
だからこいつらも苦しい思いをしてほしくないんだ。)
昔は茜は沢山話していたけど、いとこの話はしていなかった。
恐らく茜はそれを僕に言ったらいとこがいじめられると思ったみたいだ。
優しいんだな、茜は。
・・・・・・僕と違って。
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