・・その狂気は伝染する・・

華岡光

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第三章 狂気と共に明ける明治維新

15代将軍徳川慶喜の決断8

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 「慶喜!来てくれたか。慶喜がいなくて、この家茂は不安だったぞ・・」

 家茂は慶喜の顔を見るたび不安で溢れていた顔から笑顔に変わった。家茂からしたら慶喜は頼れるお兄ちゃん的な存在に見えたのかもしれない。

 「家茂様。京都において重要な仕事があり、お側におれず申し訳ございませぬ。家茂様この薩摩藩への書状に署名などはしてはいけませぬぞ。そんな事をしたら薩摩藩は幕府に戦いを仕掛けてくるでしょう。そうなれば、この国の内乱につけ込んだ諸外国がこの日本に攻めてきてしまいまする。」

 慶喜の話を聞いた家茂はその書状への署名をするのをやめた。

 「そうであろう。この家茂もそう感じたぞ。この書状に署名はできない。」

 家茂と慶喜の経緯を見ていた老中酒井苦々しい顔で黙って書状を下げた。

 「酒井殿、薩摩藩を刺激してはなりませぬ。賠償金の一部は幕府が肩代わりしてみてはどうであろう?そして、薩摩藩の事は薩摩藩に任せてみたらどうだ?イギリスには、幕府として薩摩藩にはしっかりと申し付けたと報告する事で良いではないか。」

 慶喜は新しい薩摩藩とイギリスへの対応作を進言した。
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