・・その狂気は伝染する・・

華岡光

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第三章 狂気と共に明ける明治維新

15代将軍徳川慶喜の決断47

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 ・・大阪城・・

 「上様!!申し上げます。鳥羽伏見の戦いにて我が軍総崩れ、残りし歩兵1300人大阪城へと避難の最中にてござりまする!!」

 知らせを聞いた徳川慶喜は絶句した。計算が狂い、幕府の決定的な敗北を感じつつ、さらに薩長に錦の御旗が立ち、徳川家が賊軍となったことでもはや戦う気力は無くなっていた。

 「慶喜様!!何卒御采配を!!この大阪城は難攻不落でござる。ここで籠城して薩長と戦うのでござる。」

 「ば、ばかを申すな。勝てるわけなかろうが!!1万人を超す歩兵がなぜ数千になったと思う?錦の御旗があいつら薩長に翻ったからだ!!だからみんな散り散りに逃げたのではないか!!もう終わりだ・・何もかも・・」

 徳川慶喜はそう言うと布団へと寝入ってしまった。

 知らせを聞き松平容保も大阪城へと駆けつける。

 「なに!慶喜様が布団へと??この一大事に・・情けなき事でござる・・」

 やる気を無くした将軍慶喜の代わりに指揮を執る老中らももはやなす術もなかった。

 京都守護職松平容保と京都所司代で桑名藩主松平定敬の二人は大阪城の将軍御部屋の隣の部屋で火鉢にあたりながら、慶喜が起きてくるのをひたすら待った。

 大阪へと続々と避難してくる歩兵の中には新撰組土方の姿もあった。

鳥羽伏見においてもわずかながらまだ新政府軍と戦っている旧幕府軍の姿もある中、もはや将軍など関係なしに、各々の考えに基づいて新政府軍と戦っているだけの旧幕府軍残党達だった。

 しばらくして慶喜がふと起きてきた。
隣の部屋にいた松平容保らに気付くと、慶喜は言った。

 「余は江戸城へと帰る、お前らも来い。必要な物は取りに京都へと戻り、そして大阪から軍艦開陽丸に乗り込み江戸へと帰るぞ。わかったな。大阪城へと引き返してきた歩兵部隊には、余がまだいるように見せかけておくのだ。いいな?」

 松平容保達は苦渋の顔をしながら同意した。そして、松平容保だけは京都の屋敷に宝物庫などを取りに部下と戻ったのだった。他の幕臣達には知らせずに。
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