・・その狂気は伝染する・・

華岡光

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第三章 狂気と共に明ける明治維新

15代将軍徳川慶喜の決断54

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 部屋へと戻った慶喜の顔は安堵しきった顔に変わり落ち着きを取り戻した。フランス式の軍装へと着替えると、髪も整え、うっすらと伸びた無精髭も剃り、顔を洗ってから作戦指揮室へと向かった。

 「入るぞ!待たせたな皆の者。さてと軍議を行う。」

 部屋に入った慶喜の顔はとても凛々しく先程までの苦悶に満ちた顔の慶喜はそこにいなかった。

 「上様!いや、慶喜様!!吹っ切られたようですな。この松平容保どこまでも慶喜様をお支え申す。」

 慶喜は静かに席に座ると口を開いた。

 「江戸城に戻った後、江戸に集まっている兵糧等をしっかりと確保し、庶民にもそれを配り、徳川の軍隊のために備蓄を始める。そして、東北諸藩の軍隊を呼び寄せ、江戸に集結させる。」

 すでに幕府などないのにどうやって兵を集めるのか疑問に思う老中らがそれを問いただした。

 「恐れながら申します。錦の御旗が上がった官軍に逆らう旧幕府の諸藩などほとんどいませぬぞ!江戸にいる6000千の歩兵に、かろうじて徳川に恩がある藩が数藩だけでござる。対する官軍に従う藩は日本のほとんどの藩でござる。」


 「いや官軍に従う事より、徳川に忠誠を誓う仙台藩、米沢藩、長岡藩 庄内藩がある。特に長岡藩には日本最強且つアメリカ国最強のガトリング砲が3台もある。ガトリング砲一台で千人もの人間を殺せるそうな。」

 自信を満ち溢れながら語る慶喜の心中にはもう一つの理由がある。桐の箱の呪いによる薩長同士の殺し合い、敵も味方もなくなる混沌とした世界。その後に徳川の軍隊が日本を統治するという狙いがあった。

 帝すら無くし、大統領制を作り自らがただ一人の国家元首になる構想を。
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