ミコのお役目

水木 森山

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第一章

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「今朝、父上に会いに行った理由だが
 客人の報告書を届けてきた
 そう、遠くない内に処遇が決まるだろう」

「そっか…」

わかっていた
いつか、居なくなると

だから、落ち込んでなんかいない

そんな素振りも見せちゃいけない

残念だけど、仕方ないと笑えばいい

「また、会う約束をしていただろう
 早く、体調を整えないとな」

シリルが何を言っているのか、理解できなくて
目を瞬かせる

「どうかしたのか?」

「その、会って、いいの?」

「今朝、報告したばかりだから
 まだ会う時間はあるだろう」

「そう、なんだね…」

いいんだ

また、話せる
何を話そう

あ、お茶も一緒に飲みたいな
だけど、そんな事しちゃダメかな…

「シリル、あの、次はお茶、してもいい?」

「お茶か…
 それぐらいなら構わないだろう
 そうなると準備がいるな」

「あっ」

「まぁ、まずは体調を整えるのが先だな」

「うっ」

お腹いっぱい食べたとはいえ、その後爆睡してたら
お茶会どころじゃないよね…

でも、すぐに体調整えられるかな

「そんなに悩まずとも、今日のところは
 しっかり食べて、よく寝ることだ」

「そっか、そうだね」

確かに、今できる事はそれしかない

その後は、いっぱい食べて眠くなったら寝てと
安静に過ごした



翌朝も、張り切って朝食の席に着く

焼きたてのパンの匂いに、ベーコンや
ウィンナーのいい匂いが部屋を漂う

ロウが温かいスープをよそってくれたので
それから食べ始めた

コンコンコン

「私だ、入るぞ」

シリルの声が聞こえたと思ったら、扉が開いた

あれ、シリルっていつもこうだったっけ?

客人の部屋を開ける時と大して変わらない気がして
首を傾げる

これが、普通…だっけ?

なんて考えていたら、無言でシリルと見つめ合ってしまった

「・・おはよう、もうご飯食べたの?」

「いや、先に様子を見に来た
 体調は、良さそうだな」

「うん、今日もいっぱい食べられそう」

「そうか…
 ならば、程々にしておけ
 この後、お茶会にしよう」

「今日、この後なの?」

「あぁ、早い方がいいと思ってな」

「わかった、程々にしとく」

「では、また呼びに来る」

お茶会ができる

そう思ったら、嬉しくてソワソワしてしまう

落ち着かなくて、ウィンナーを落っことしたり
しながらも、朝食を終えた

だが、

呼ばれるまでが、長い…

ソファに座っているけど、待ち遠しくて
廊下で物音がする度に、扉を見つめてしまう

もう何回目だろう
違うとわかって肩を落とすのは

それなのに、期待する気持ちが抑えられない

なんだか子供みたいで、恥ずかしい…

そうだ、違う事して気を紛らわそう
本、は無理だな
でも、他になんかあったかな…

ロウがすっと、何かを差し出した

ハンカチに包まれたブレスレット

「あ、これ」

取ろうとした僕の手に、ハンカチごと
ブレスレットをのせる

これを持つと、やっぱり落ち着く気がして
石をマジマジと眺めた

なんかこの間よりくすんでる?

ピカピカしてたのが、キラキラになったような…

でも、見ていて飽きる事はないから
角度を変えながら輝きを楽しむ

あ、綺麗な丸じゃないんだ
けっこう、ボコボコしてる

透明な石だと思っていたけど、よく見たら
不純物もけっこう混ざっていた

いいな、僕も欲しいな
守り石って、僕でも作れるのかな?


コンコンコン

どれぐらい時間が経ったのか
気づけば、夢中で石を眺めていた

ロウが扉を開けに行った隙に
ブレスレットを左腕にはめて
ハンカチだけテーブルに置いた

やっぱり落ち着く

眺めているだけでは物足りなくて
こっそりと身につけて袖で隠す

あとでロウに返せばいいよね

「カミュ、待たせたようだな
 行こうか」

「うん」

軽い足取りでシリルの元へ向かった



コン コン コン

「カミュ様をお連れした
 入るぞ」

ガチャ

なんかこの入り方に慣れてしまいそうで怖い…

もう、三度目になると違和感はあるものの
驚かなくなってしまった

「来たか
 顔色、少し良いな」

「うん、少し…
 だいぶ良いよ」

ハルの対面に座ってディーを見るけど
膝に抱えられたまま動かない

「ディー、今日は起きてないんだ…」

「あぁ」

「そっか、今日は一緒にお茶しようと
 思って用意したんだけど…」

「オチャ?」

ロウが押してきたワゴンから、次々と皿を
並べていく

クッキーにマフィン、スコーン等が用意されていて
おいしそうな匂いが部屋に漂う

「一緒に食べようと思って用意してもらったんだ」

「我ら、罪人であろう
 受け取れぬ」

淡々と言われた言葉に、凍りつく

喜んでもらえると思っていたのに
返ってきたのは拒絶の言葉

何か言わなきゃいけないのに
言葉が出てこず俯いた

「確かに森への侵入は罪だが
 サラを救ってくれた事も事実だ
 私達からの感謝の気持ちを受け取って
 もらいたい」

「幼な子、救うのは当然の事」

「貴方達にとっては当たり前でも
 私達にとっては、礼をするに値する」

「・・そうか」

ハルが胸に手を当て、軽く頭を下げた

「有難く、頂く」

シリルがうまくとりなしてくれて、ほっとする

だけど好意を押し付けてしまったのではないかと
不安になる

どうしよう
また、うまくできなかった…

どんな顔をしてればいいのかわからないまま
ただ紅茶が並べられるのを眺めた

そして、出された紅茶をみんなで黙ったまま飲む

ハルも紅茶に口をつけたけど
すぐにカップを置いた

「口に、合わなかった…?」

「否…」

珍しく言葉を濁し、目を逸らす

良かれと思って用意したけど
迷惑だったかもしれない

どうして僕は、お茶会を喜んでくれると
思い込んでしまったのだろう…

その時、後ろに控えていたロウが
ハルのカップに蜂蜜を足した

手でどうぞというように促すと
ハルはもう一度、紅茶を飲む

「美味い」

そう言って、また紅茶に口をつける

あぁ、よかった

飲んでもらえてようやく肩の力が抜けた

「座れ」

そう言ってハルは隣の席を叩く
だけど仕事中のロウは勝手に座る訳にもいかず
戸惑いの表情を浮かべた

「ロウは仕事中だ」

すかさず、シリルが口を挟む

「仕事中、座れぬのか?」

ハルはシリルではなく、ロウに問いかけ
ロウはコクコクと頷いて返事をする

「そうか」

「あのっ、お菓子も食べて
 これがクッキーで、こっちがマドレーヌ」

今の雰囲気を壊したくなくて、慌てて話しかける

大きいテーブルだから、手をつき
身を乗り出して説明する

「このスコーンにはジャムとかクリームを
 塗って食べてみて」

だけど、ハルが見ていたのは僕の腕だった

「其方、腕輪着けたのか」

しまったっ
ブレスレットつけてるの忘れてた!

パッと左腕を見れば、袖からブレスレットが
チラリと姿を見せていた


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