正義の方程式 ~ヒーローにあこがれた少年は気が付くと悪の親玉になっていた~

武田コウ

文字の大きさ
46 / 70

ヒーローの活動

しおりを挟む
「・・・ここが資料室です。基本的な活動のマニュアルもこの場所に保管されてあるので、何かわからない事があったらこの場所で調べることをオススメします」




 そう説明しながらエマはちらりと背後を振り返った。そこには真剣な様子でエマの説明を聞いている大人の色香の漂う女性の姿・・・研修でこちらに来ているメグ・アストゥート女史だ。




 事務室で簡易的な自己紹介を終えた後、ヒーロー部隊のリーダーであるジェームズが「女性同士の方が何かと気を使えていいだろう」という理屈で、メグにこの施設の案内とヒーロー活動についての大まかな説明を丸投げしてきた。




 尊敬すべきヒーローであるジェームズの言葉だからこそ素直に従ったが、仮に同じ言葉を同僚のケイゴが放ったのなら、エマはその場でビンタを喰らわしていただろう。




 女性だからとか男性だからとか、仕事を割り振る理由に性別を使われるのはエマの一番癇に障る行為なのだ。




 それに女性同士だからやりやすいなどという事も無い。プライベートでの遊ぶ相手ならともかく仕事相手で女性男性の区別はしないし、何ならエマは初対面のメグの事が何故か少し苦手であった・・・その理由は自分でもわからないのだけれど。




 資料をパラパラとめくっていたメグが、何かわからない箇所があったのかページをめくる手を止めた。




「・・・エマさん。少し質問をしても良いでしょうか?」




「どうぞアストゥートさん」




「ありがとう。でも私のファミリーネームは呼びづらいでしょう? メグと呼んで下さって結構ですよ」




「・・・わかりました。どうぞメグさん」




「ふふ・・・それじゃあ少し分からないところがあるのだけれど。資料を読んでいるとヒーローの活動は基本的に、メインとなって犯罪者を取り締まるヒーローと、それをサポートするヒーローの二人一組で行われる事が多いみたいですね?」




「ええ、その通りです」




「それは少し無駄では無いですか? ヒーローの数は少ないです。もっと警察と連携を取ってサポート役を警察に任せれば、今より多くの事件を網羅できるのでは?」




 メグの言うことはもっともだ。




 絶対数の少ないヒーローが二人一組で行動するとどうしても手の回らない事件が増えてしまう。これは軍部の中でも多く話し合われてきた議題なのだ。




「確かにメグさんの言うとおり効率は悪いかもしれません・・・しかしこれは軍の上層部でも何度も話されてきた議題なのですが、ヒーローは絶対数が少ないからこそより確実に、そして安全に一つの事件を解決できるように二人一組というスタイルを取っているのです」




「より確実に安全にですか・・・」




「ええ、凶悪な能力者による犯罪者が増えている現状、ヒーローという戦力は本当に貴重なんです。確かに分散して多くの事件を担当するという事もメリットがありますが・・・それはヒーローが負傷するリスクが大きくなる事も意味します。ならばこそ二人一組で確実に一つずつ事件を解決した方が全体の利になると軍は考えています」




 ならばヒーローの数を増やせば良いという意見もあった。




 しかしそう簡単な話では無いのだ。




 まず戦闘に適した能力者が少ない。そしてその能力者の中で軍に所属しているものはさらに限られる事となる。




 それにヒーローになるという事は街中での戦闘における能力の使用が国から許可されると同時に、様々な制約を負うこととなるのだ。




 まずヒーローとして求められるのは、戦闘向けの能力者でかつ殺傷能力は低いというレアな能力者。もしくは殺傷能力が高い能力を有しながら、それを熟練の技術で制御することのできる能力者だ。




 基本的に今街中の戦闘で能力の使用を許可されているのは、ヒーロー部隊しか存在しない。警察の中に戦闘向けの能力を持つ人物がいても、それは事件解決の役には立てない。




 超能力とはそれほど危険なモノなのだ。




「・・・なるほど一応理解はしました。しかし、ご存じの通り私はクイックリー警備に所属している者です」




「? ええ知っていますが・・・」




 メグの突然の発言にエマはキョトンと首をかしげた。




 そんなエマに不意にメグはグイッと顔を近づけると、強い語気で言葉を放った。




「ヒーローのみが凶悪な犯罪者に立ち向かえる戦力であるという現状に、私たちは危機感を覚えています。法を改定すべきです・・・それが無理ならヒーローという仕組みをもう少し効率の良いモノに変えるべきなのです」




 その言葉には隠しきれない彼女の熱意が込められていた。




 民間の警備会社に所属している彼女だからこそ感じることもあるのだろう。




「・・・失礼しました。熱くなりすぎたようです」




「・・・・・・いえ、参考になる意見をありがとうございました」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...