パーティーから追放された中年狙撃手の物語

武田コウ

文字の大きさ
31 / 83

竜殺し

しおりを挟む
 宙に描かれる深紅の剣線、ショウの剣撃が無数にたたき込まれるも斬撃はその新緑の鱗に阻まれ致命傷に達しない。




「”ウォーターキャノン”」




 シャルロッテが上級魔法”ウォーターキャノン”を展開。




 圧縮された水の大砲が放たれるも、相手はゆうゆうとそれを回避する。




 ドラゴン




 ファンタジーの定番である異形。




 巨大なトカゲにも例えられるその姿は、しかし実際に見てみるとトカゲとは姿は似ていても全く別物であると感じさせる覇気を纏っていた。




 艶やかに光る新緑の鱗。




 鋭い爪と牙。




 その巨大なアギトからは、時折炎の息が漏れている。




 強いモンスターの代名詞と言っても過言で無いその存在と、勇者一同は対峙していた。




「うぉおおぉお!!」




 女騎士アンネが鋭い踏み込みからの渾身の一撃をドラゴンに見舞う。




 しかしドラゴンはその巨体に似合わぬ機敏さで翼を広げると、空中へ飛んで回避をした。そして空中でホバリングしながら吐き出すは、必殺のファイアブレス。




 アンネめがけて吐き出された灼熱のブレス。当たれば即死であろうそれを攻撃後の隙だらけなアンネには避けるすべがない。




 しかし後方で控えていた聖女カテリーナが、防護の奇跡を唱える。




「”プロテクション”」




 奇跡の行使により展開された薄青色の防護膜がアンネの身体を包み込む。遅れてアンネを飲み込んだファイアブレスは、プロテクションの防護によって阻まれ、アンネを傷つける事ができない。




「”ウィンドストーム”」




 シャルロッテが新たな魔法を展開。




 強大な魔力により練り上げられた暴風がドラゴンを襲う。




 直接的なダメージは見込めないが、空を飛ぶドラゴンはその暴風で一瞬身動きが取れなくなった。




 そしてその一瞬が命取りだ。




「煌めけ”暁の剣”」




 尋常ならざる脚力でショウはドラゴンの位置まで飛び上がりながら聖剣の真名を解放する。深紅に染まった聖剣の刀身がきらりと煌めき、そのままドラゴンの太首を切り落とした。




「俺たちの勝利だ!」




 華麗に着地したショウは聖剣を高らかに掲げ、ドラゴンの返り血に染まった顔をにこりと微笑ませるのであった。





































「竜殺しの栄誉に乾杯!」




 ドラゴンを倒した祝勝会。




 勇者一同はギルドの酒場に集まると、今日の大金星を祝って乾杯した。




 よほど腹が減っていたのか女騎士アンネは酒を一気に飲み干すと、目の前の料理をもの凄い勢いで食べ始める。




 それを苦笑いしながら見ていたシャルロッテは、ちびちびと自分のお酒を口に運んでいた。




「しかしドラゴンを倒せたとなると自分たちが強くなった実感がわくね」




 ショウの言葉に料理を口いっぱい頬張っていたアンネが力強く頷く。




「ほうふぇふねやふぁり」




「いやいやアンネ。口の中の食べ物は飲み込んでからしゃべろうよ」




 ショウに笑いながら注意され、もぐもぐと咀嚼をするアンネ。それを飲み込み終えると運ばれてきたおかわりの酒を一口飲んで口を潤してからしゃべり出す。




「そうですね、やはり竜殺しは騎士の栄誉・・・強さの象徴たる竜を倒す事は冒険者としても箔がつく事でしょう」




 うんうんと一人頷いているアンネ。




 騎士である彼女には竜殺しというものに特別な思い入れがあるのだろう。




「そうだね・・・俺的にはもうこのパーティの強さは十分整ったと思うんだ。そろそろ次のステージに進むべきだと思う」




 ショウの言葉にシャルロッテが恐る恐るといった風に尋ねた。




「あの・・・次のステージって何ですか?」




「ん? 決まってるでしょシャルロッテ。俺たちの目的は魔神の討伐。次のステージっていうのは魔神の手下たる魔王達の殲滅だよ」




 力強くそう言うショウの姿を見て、シャルロッテはぶるりと身を震わせた。




 ショウは・・・この勇者と自称する男は自分が負けるとはみじんも考えていないのだと悟ったのだ。




 魔王とは恐怖の象徴。




 力の最奥。




 たとえ単機でも国を滅ぼし得る脅威。




 魔神の手下であり、例え今複数の魔王が出現しているからといって侮って良い相手ではない。複数の魔王が出現し、未だ世界が滅んでいない事が奇跡に他ならないのだから。




「そうですね。勇者様、アナタが魔神を倒す運命にあるというなら必ずや神が魔王の元へとアナタを導くでしょう」




 柔らかい口調でそういうのは聖女カテリーナ。




 そしてシャルロッテは気がついた。




 勇者だけでない。 




 このパーティの自分以外の人間すべてが魔王など恐れていないのだ。




 シャルロッテは再び身体をぶるりと振るわせた。




(・・・私、生きて帰れるのかしら?)




 脳裏に浮かぶは幼なじみのマルクの顔。しかし彼はもうシャルロッテの側にはいない。




 そんな時、ギルドの受付嬢が勇者一同が座っている席に近寄ってきた。




「あっ、いたいた。ショウさん、ご指名の依頼が入ってますよ」




 名指しの依頼とは珍しい。




 ショウはその内容を受付嬢に尋ねる。




「えーとですね。えぇ!? これ、アヴァール王国の国王様からのご依頼です!!」




「国王様から!? どんな依頼なの?」




 嫌な予感がする。 




 シャルロッテはそう感じた。




「魔王カプリコーンの討伐依頼です!」




 勇者と魔王は戦う運命にある。




 それは抗いがたく、回避することが困難な世界の力によって二人は引き合うのだ。




 シャルロッテは誰にも聞こえない小さな声でその名を呼ぶのであった。




「・・・・・・マルク・・・」














しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

異世界配信〜幼馴染みに捨てられた俺を導く神々の声(視聴者)

葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。 だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。 突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。 これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?

サクラ近衛将監
ファンタジー
 会社員の俺が交通事故に遭いました。二か月後、病院で目覚めた時、ほぼ全身不随。瞼と瞳が動かせるものの、手足も首も動かない。でも、病院で寝ると異世界の別人の身体で憑依し、五体満足で生活している。また、異世界で寝ると現代世界に目が覚めるが体の自由は利かない。  睡眠の度に異世界と現代世界を行ったり来たり、果たして、現代社会の俺は、元の身体に戻れる方法があるのだろうか?  そんな男の二重生活の冒険譚です。  毎週水曜日午後8時に投稿予定です。

七億円当たったので異世界買ってみた!

コンビニ
ファンタジー
 三十四歳、独身、家電量販店勤務の平凡な俺。  ある日、スポーツくじで7億円を当てた──と思ったら、突如現れた“自称・神様”に言われた。 「異世界を買ってみないか?」  そんなわけで購入した異世界は、荒れ果てて疫病まみれ、赤字経営まっしぐら。  でも天使の助けを借りて、街づくり・人材スカウト・ダンジョン建設に挑む日々が始まった。  一方、現実世界でもスローライフと東北の田舎に引っ越してみたが、近所の小学生に絡まれたり、ドタバタに巻き込まれていく。  異世界と現実を往復しながら、癒やされて、ときどき婚活。 チートはないけど、地に足つけたスローライフ(たまに労働)を始めます。

ハイエルフ少女と三十路弱者男の冒険者ワークライフ ~最初は弱いが、努力ガチャを引くたびに強くなる~

スィグトーネ
ファンタジー
 年収が低く、非正規として働いているため、決してモテない男。  それが、この物語の主人公である【東龍之介】だ。  そんな30歳の弱者男は、飲み会の帰りに偶然立ち寄った神社で、異世界へと移動することになってしまう。  異世界へ行った男が、まず出逢ったのは、美しい紫髪のエルフ少女だった。  彼女はエルフの中でも珍しい、2柱以上の精霊から加護を受けるハイエルフだ。  どうして、それほどの人物が単独で旅をしているのか。彼女の口から秘密が明かされることで、2人のワークライフがはじまろうとしている。 ※この物語で使用しているイラストは、AIイラストさんのものを使用しています。 ※なかには過激なシーンもありますので、外出先等でご覧になる場合は、くれぐれもご注意ください。

処理中です...