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「・・・・・・エーヌ王国が?」
とある依頼を終えた勇者パーティ一同が、ギルドに併設されている居酒屋で祝勝会を行っている時、やってきたギルドの受付嬢によってその報告はなされた。
先日どこからかやってきた魔物の大群によってエーヌ王国が滅ぼされ、今栄えあるエーヌ王国の王城は、その魔物達の住処になっているとの事だ。
「馬鹿な・・・我が王・・・姫様」
エーヌ王国の騎士長を勤めていた女騎士アンネ・アムレットはその場で崩れ落ちる。
信じたくなかった。
信じられなかった。
自分の命を捧げた偉大なる祖国が魔物によって滅ぼされたなんて。
「・・・・そんな、あんまりだよ」
ショウもその報告に衝撃を受けている。
勇者としてこの世界に彼が召還された地がエーヌ王国だ。何も知らぬショウに優しくこの世界の事を教えてくれた姫様や、自分を信じて送り出した国王様の姿が脳裏に浮かぶ。
「王国を滅ぼした後にその城を占拠・・・ですか。・・・・・・・不謹慎とは思いますが、ただの魔物にそんな知恵があるものなのですか?」
落ち込む二人を気遣わしげに見ながら、聖女カテリーナは疑問を口にした。
そもそも魔物が一国を滅ぼすほどの群をなす事なんて常識的にありえない。どんなに多くの群を形成する魔物でも、国を滅ぼすほどに数を増やすなんて無いのだ。
つまりこれは自然に発生した群では無く、外的要因により国を滅ぼすために集められた集団。
カテリーナの言わんとしたことを理解したのか、ギルドの受付嬢はこくりと静かに頷いた。
「ええ、その通りです。これは確定した情報では無いですが・・・・・・このエーヌ王国襲撃は、新たな魔王によるものだという噂が流れています」
「・・・・・・魔王」
ごくりと、静かに話を聞いていた魔法使いの少女シャルロッテはツバを飲み込んだ。彼女の脳裏に浮かぶのは先日相対した魔王、カプリコーンの圧倒的な姿。
パーティ全員で掛かってもまるで歯が立たず、あの時は死を覚悟したものだ。
その時の恐怖が蘇り、シャルロッテはぶるりと身を震わせた。周囲を見るとショウやカテリーナも苦い顔をしている。
自信家のショウがこんな表情をする程、魔王カプリコーンとの戦いは凄まじいものだった。神の加護によって勝てたんだと後にショウは言っていたが、言い換えれば神の加護が無ければ全滅していたのだ。良い思い出の筈が無い。
「・・・・・・自分勝手ですいませんが勇者様。私はどうしてもエーヌ王国に行かねばなりません」
ずっと黙って膝をついていたアンネがぽつりと言葉を発した。その口調には静かながら言いようのない圧倒的な気迫が込められている。
「・・・私はエーヌ王国の騎士です。王国の危機に駆けつけられなかった不届き者ですが・・・・・それでも、国の敵くらいは打たねば気が収まらない・・・」
たとえ一人でも彼女は行くつもりだろう。そんな思い詰めたような顔をしたアンネの肩にぽんと手を置き、ショウは彼女にニコリと笑いかけた。
「水くさいこと言わないでアンネ。もちろん俺も一緒に行くよ。・・・エーヌ王国のみんなには俺もお世話になったからね」
「・・・・・・勇者様」
感動した様子のアンネを、いつの間にか側まで来ていた聖女カテリーナが微笑みながらその身体を抱きしめる。
「もちろん私も行きます。・・・それに相手が魔王ともなれば世界を救うために避けては通れない道ですしね」
「・・・ぐすっ。ありがとうカテリーナ」
そんな感動的なワンシーンが繰り広げられる中、一人乗り遅れたシャルロッテはおろおろとしながら助けを求めるようにギルトの受付嬢に視線を送るが、彼女は我関せずといったようにそっと目線を外してきた。
「・・・ええと。も、もちろん私もついて行きます!」
とりあえず何も言わないのも変かと思ったのでみんなに近づいて参加の意思だけ伝えるシャルロッテであった。
◇
「おや速見殿、まだこちらに居たのか。魔神様の警護をしなくていいのか?」
血塗られた玉座に座った魔王ヴァルゴは、ドアを開けて入室してきた速見の存在に気がつき眼を丸くした。
速見はあくまで魔神クレアの側近であり、先の戦に参加したのはクレアの好意によるものだった。
戦が終わった今、当然速見はクレアの元へ帰っているものだとばかり思っていたのだが・・・・・・。
「ああすまんな。ご主人様の命令でもう少しばかりこの城に滞在させてもらう。寝床や食事は心配しなくてもいい、こっちで適当にやるさ」
ニヒルな口調でそう言ってヴァルゴに背を向ける速見。自分がしばらく滞在するという事を伝えるためだけにこの部屋に来たらしい。
「少し待たれよ速見殿」
「ん? 何だい?」
振り向いた速見に魔王ヴァルゴは問いかける。
「しばらく滞在するという事だが・・・魔神様は何が狙いなのだ? 妾が住居を決める時にこの国を進めてきたのも魔神様だったが・・・」
「ああ、なるほど。確かにアンタには伝えてなかったな。・・・そうだな簡単にいうと釣り、かな?」
「釣り?」
速見は面倒くさそうに後頭部をボリボリと掻きながら答える。
「アンタがこの国を落としたという事が餌なのさ。とある人物をここに呼び寄せるためのな。そんで呼び寄せたソイツを仕留めるのが俺の役割って訳さ」
「・・・それで? その人物とは誰だ」
ヴァルゴの問いに、速見は一呼吸置いてから答える。
「勇者ショウ・カンザキ。魔王カプリコーンを倒した男さ。・・・まあソイツには個人的に聞きたい事もあるんでね」
そう言って頭の軍帽を一撫でする。
(もし勇者が日本人なら聞きたいことがある・・・否、聞かねばならない事がある)
その眼光は鋭く遠くを見つめていた。
◇
とある依頼を終えた勇者パーティ一同が、ギルドに併設されている居酒屋で祝勝会を行っている時、やってきたギルドの受付嬢によってその報告はなされた。
先日どこからかやってきた魔物の大群によってエーヌ王国が滅ぼされ、今栄えあるエーヌ王国の王城は、その魔物達の住処になっているとの事だ。
「馬鹿な・・・我が王・・・姫様」
エーヌ王国の騎士長を勤めていた女騎士アンネ・アムレットはその場で崩れ落ちる。
信じたくなかった。
信じられなかった。
自分の命を捧げた偉大なる祖国が魔物によって滅ぼされたなんて。
「・・・・そんな、あんまりだよ」
ショウもその報告に衝撃を受けている。
勇者としてこの世界に彼が召還された地がエーヌ王国だ。何も知らぬショウに優しくこの世界の事を教えてくれた姫様や、自分を信じて送り出した国王様の姿が脳裏に浮かぶ。
「王国を滅ぼした後にその城を占拠・・・ですか。・・・・・・・不謹慎とは思いますが、ただの魔物にそんな知恵があるものなのですか?」
落ち込む二人を気遣わしげに見ながら、聖女カテリーナは疑問を口にした。
そもそも魔物が一国を滅ぼすほどの群をなす事なんて常識的にありえない。どんなに多くの群を形成する魔物でも、国を滅ぼすほどに数を増やすなんて無いのだ。
つまりこれは自然に発生した群では無く、外的要因により国を滅ぼすために集められた集団。
カテリーナの言わんとしたことを理解したのか、ギルドの受付嬢はこくりと静かに頷いた。
「ええ、その通りです。これは確定した情報では無いですが・・・・・・このエーヌ王国襲撃は、新たな魔王によるものだという噂が流れています」
「・・・・・・魔王」
ごくりと、静かに話を聞いていた魔法使いの少女シャルロッテはツバを飲み込んだ。彼女の脳裏に浮かぶのは先日相対した魔王、カプリコーンの圧倒的な姿。
パーティ全員で掛かってもまるで歯が立たず、あの時は死を覚悟したものだ。
その時の恐怖が蘇り、シャルロッテはぶるりと身を震わせた。周囲を見るとショウやカテリーナも苦い顔をしている。
自信家のショウがこんな表情をする程、魔王カプリコーンとの戦いは凄まじいものだった。神の加護によって勝てたんだと後にショウは言っていたが、言い換えれば神の加護が無ければ全滅していたのだ。良い思い出の筈が無い。
「・・・・・・自分勝手ですいませんが勇者様。私はどうしてもエーヌ王国に行かねばなりません」
ずっと黙って膝をついていたアンネがぽつりと言葉を発した。その口調には静かながら言いようのない圧倒的な気迫が込められている。
「・・・私はエーヌ王国の騎士です。王国の危機に駆けつけられなかった不届き者ですが・・・・・それでも、国の敵くらいは打たねば気が収まらない・・・」
たとえ一人でも彼女は行くつもりだろう。そんな思い詰めたような顔をしたアンネの肩にぽんと手を置き、ショウは彼女にニコリと笑いかけた。
「水くさいこと言わないでアンネ。もちろん俺も一緒に行くよ。・・・エーヌ王国のみんなには俺もお世話になったからね」
「・・・・・・勇者様」
感動した様子のアンネを、いつの間にか側まで来ていた聖女カテリーナが微笑みながらその身体を抱きしめる。
「もちろん私も行きます。・・・それに相手が魔王ともなれば世界を救うために避けては通れない道ですしね」
「・・・ぐすっ。ありがとうカテリーナ」
そんな感動的なワンシーンが繰り広げられる中、一人乗り遅れたシャルロッテはおろおろとしながら助けを求めるようにギルトの受付嬢に視線を送るが、彼女は我関せずといったようにそっと目線を外してきた。
「・・・ええと。も、もちろん私もついて行きます!」
とりあえず何も言わないのも変かと思ったのでみんなに近づいて参加の意思だけ伝えるシャルロッテであった。
◇
「おや速見殿、まだこちらに居たのか。魔神様の警護をしなくていいのか?」
血塗られた玉座に座った魔王ヴァルゴは、ドアを開けて入室してきた速見の存在に気がつき眼を丸くした。
速見はあくまで魔神クレアの側近であり、先の戦に参加したのはクレアの好意によるものだった。
戦が終わった今、当然速見はクレアの元へ帰っているものだとばかり思っていたのだが・・・・・・。
「ああすまんな。ご主人様の命令でもう少しばかりこの城に滞在させてもらう。寝床や食事は心配しなくてもいい、こっちで適当にやるさ」
ニヒルな口調でそう言ってヴァルゴに背を向ける速見。自分がしばらく滞在するという事を伝えるためだけにこの部屋に来たらしい。
「少し待たれよ速見殿」
「ん? 何だい?」
振り向いた速見に魔王ヴァルゴは問いかける。
「しばらく滞在するという事だが・・・魔神様は何が狙いなのだ? 妾が住居を決める時にこの国を進めてきたのも魔神様だったが・・・」
「ああ、なるほど。確かにアンタには伝えてなかったな。・・・そうだな簡単にいうと釣り、かな?」
「釣り?」
速見は面倒くさそうに後頭部をボリボリと掻きながら答える。
「アンタがこの国を落としたという事が餌なのさ。とある人物をここに呼び寄せるためのな。そんで呼び寄せたソイツを仕留めるのが俺の役割って訳さ」
「・・・それで? その人物とは誰だ」
ヴァルゴの問いに、速見は一呼吸置いてから答える。
「勇者ショウ・カンザキ。魔王カプリコーンを倒した男さ。・・・まあソイツには個人的に聞きたい事もあるんでね」
そう言って頭の軍帽を一撫でする。
(もし勇者が日本人なら聞きたいことがある・・・否、聞かねばならない事がある)
その眼光は鋭く遠くを見つめていた。
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