パーティーから追放された中年狙撃手の物語

武田コウ

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クレアVS魔王

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『”ダーク・インパクト”』




 パイシスが闇の魔法を展開する。




 前方に放たれた闇の衝撃波が敵を吹き飛ばさんと襲いかかるが、クレアは両手を前で交差させ片足を地面に突き刺して固定する。がっちりと固めたガードで衝撃波を耐えきった。




「キシャァ!!」




 パイシスの魔法を耐えきったクレアは、人とは思えない奇声を発しながら襲いかかる。




 その動きは素早く、変化した両手の鋭い爪がギラリと怪しく光った。




 しかしパイシスも自身の魔法が防がれる事なんてわかっていた。すでに発動していた防御魔法を前方に展開。




『”サンダーボルト・シャワー”』




 両者の間に現れるは金色の壁。




 絶え間なく上から下へ放たれる攻撃魔法 ”サンダーボルト”が敵を阻む壁となり、むやみに突っ込んできた敵を容赦なく焼き尽くす最強の攻撃にもなるパイシスのオリジナル魔法だ。




 当然猛スピードで突っ込んできたクレアが避けられる訳も無く、そのまま金色の壁に頭から突っ込んだ。




 バリバリと放電する壁と肉の焼ける嫌な臭い。




 決着はついたかと思われたそのとき、金色の壁から黒く焼け焦げた右腕がにゅっと伸びてパイシスの頭蓋骨を鷲掴みにした。




「つかまえたぁ」




 その顔は雷に焼かれ、皮膚がとけて肉が見えているがクレアは気にした様子も無くパイシスの顔を万力で締め付けるとそのまま地面に叩きつけた。




(・・・凄まじい力だ。接近戦は私が不利か)




 地面に横たわるパイシスに、クレアの握り締められた右拳が振り下ろされる。




 必殺の威力を誇るその一撃は、しかし見えていたパイシスの身体を通り抜けて地面を殴りつけるに終わった。




「・・・テレポーテーション?」




『ご名答。流石の私もお前と接近戦でやり合うのは分が悪いのでな』




 聞こえてきた声はクレアの遙か後方。距離をとったパイシスは骨の掌を上空に向けて詠唱を開始する。




『”メガ・グラビティ”』




 同時に地面が震動を始める。




 否。




 地面だけではない。このダンジョン全体が揺れている・・・そしてその振動はだんだん激しく大きくなってゆく。




「・・・まさかダンジョンごと潰す気?」




『その通り。お前はここで潰れて死ぬがいい』




 そしてダンジョンは崩壊した。崩れた天井の瓦礫が二人の対峙する空間を埋め尽くしてゆく・・・。































『・・・ふう、久しぶりの戦闘で骨が軋むわ』




 テレポーテーションの魔法でダンジョンの外へ脱出したパイシスは首の骨をパキリと鳴らした。




 目の前には崩壊したダンジョンがある。




 先ほどの戦いはこのダンジョンの最奥で行っていたモノ。いかにクレアが強者だろうがこんな短時間で脱出する事は不可能だろう。




『しかし私の家が無くなってしまったな』




 気の遠くなるような年月をこのダンジョンで過ごしてきたパイシス。




 これは良い機会だ。外の世界を見て回るのも良いかもしれない。




「ハロー魔王パイシス?」




 突如背後から聞こえる、耳にこびりつくような粘ついた声。




 振り返るとそこには、高速で迫る巨大なこぶしが視界いっぱいに見えた。




 呆気なく砕かれるパイシスの頭蓋。さらさらと白い砂になって崩れゆく魔王の身体を見下ろしながらクレア・マグノリアは右拳に付着した骨の欠片を払った。




「ダンジョンを崩す発想は良かったけど・・・転移魔法を仕えるのが自分だけだと慢心したのがアナタの敗因よ」




 クレアはそう言い捨てて戦闘態勢を解く。




 隆起していた筋肉はしぼみ、骨は再びメキメキと音を立てて組み直される。焼け爛れた肌は剥がれ落ち、中から傷一つ無い柔肌が姿を現した。




「やっぱり自分で戦うのは面倒だわ」




 そう言いながら魔神クレアは帰路につくのであった。










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