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奇襲
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「おぉおお!!」
バースと名乗った大男は、手にした大斧を怒濤の勢いで振り回した。
一見めちゃくちゃに見えるその動きも一撃一撃が必殺の威力を秘めており、巨体故のリーチの長さも相まって反撃の隙が無い。
しかしアルフレートは微笑を浮かべながら、その嵐のような攻撃を丁寧に捌いていき、攻撃の切れ目に一気に距離を詰めて聖剣を突き出した。
鋭いその一突きは勢いに乗り、まさに攻撃後の隙だらけなバースの腹部を貫かんとしたが彼はその巨体に似合わぬ身軽な動きでひょいと後方にステップを踏むと、アルフレートの一撃を回避する。
全力の一撃を空振りした後にあの突きを回避する事は不可能。
即ち先ほどの連打はわざと手を抜いていたという事になる。
アルフレートが静かにバースを睨み付けると、彼はニヤリと漢臭い笑みを浮かべて何故かくるりと身体を反転させる。
呆気にとられるアルフレートを余所に、バースはその巨体に似合わぬ素早さで脱兎のごとく逃走を始めた。
「・・・・・・逃げた?」
周囲を見回すとこちらの騎士団と戦っていた奇襲部隊の兵達も、戦いながら少しずつ撤退を始めている。
明らかにおかしい。
これでは奇襲をする意味が無いではないか。
(追撃を誘っているのか? しかし行動があからさま過ぎる・・・これでは罠がありますよと敵に教えているようなモノではないか)
アルフレートは考える。
追撃を行うべきか、それとも罠を警戒して放っておくべきか・・・。
やがて決心をしたアルフレートは顔を上げると、部下達に指示を飛ばした。
「逃げる兵は追わなくてもいい。そのままドロア帝国に向けて進軍するぞ」
そして聖剣を腰の鞘に納刀し、愛馬まで駆け寄ってひらりとその背に飛び乗った。
(・・・問題ない。例え先ほどの伏兵達に背後から強襲されようが挟撃されようが対応できるだけの訓練は積んでいるのだから)
◇
「・・・どうやら追撃は無しか。その判断力は流石だな・・・追撃してくれりゃあこちらとしては楽だったんだが」
バース・アロガンシアは額の汗を拭いながら大きく息を吐いた。
腰の雑嚢から革袋で出来た水筒を取り出し、がぶがぶと中身を飲み込む。先の戦闘で火照った身体にぬるくなった水が染みいるようだった。
「・・・隊長、どうしましょうか」
騎士団が追撃してきた時に備えた罠の準備をしていた工作兵が、バースの話しかけてきた。
「あー、そうだな。とりあえずアイツらが国に着くまでの間にあと二、三回はぶつかるつもりだ。適当にちょっかいをかけて奴らを適度に消耗させる。その間にしびれを切らして追撃してきてくれりゃあ御の字なんだがな・・・」
そうは言いながらもバースには、騎士団が追撃してくるような事は無いだろうとわかっていた。
世界最強の軍団。
話には聞いていたが何ともやりづらい相手だ。
完璧に統制の取れた軍というものはこうも強くなれるのかと、敵ながら舌を巻いた。
そして・・・・・・。
バースは未だにしびれの残る己の両手を見下ろす。
先のアルフレートとの戦闘では適当に相手をしてすぐ逃げるつもりだったので、大斧を振るう力も七分程度であった。
しかしかの最強の騎士に攻撃を聖剣で捌かれた瞬間に感じたあの底知れぬ膂力。巨人の血を引くバースの半分ほどしか無いあの体躯の、どこにあんな力があるというのだろうか。
史上最強。
攻撃を捌かれただけで未だにしびれが止まらぬ手を握り締め、バースは一人ニヤリと笑った。
(おもしれえ、史上最強の名に偽りなしってわけか。・・・だからこそ俺が出張った甲斐があったってもんだぜ)
◇
バースと名乗った大男は、手にした大斧を怒濤の勢いで振り回した。
一見めちゃくちゃに見えるその動きも一撃一撃が必殺の威力を秘めており、巨体故のリーチの長さも相まって反撃の隙が無い。
しかしアルフレートは微笑を浮かべながら、その嵐のような攻撃を丁寧に捌いていき、攻撃の切れ目に一気に距離を詰めて聖剣を突き出した。
鋭いその一突きは勢いに乗り、まさに攻撃後の隙だらけなバースの腹部を貫かんとしたが彼はその巨体に似合わぬ身軽な動きでひょいと後方にステップを踏むと、アルフレートの一撃を回避する。
全力の一撃を空振りした後にあの突きを回避する事は不可能。
即ち先ほどの連打はわざと手を抜いていたという事になる。
アルフレートが静かにバースを睨み付けると、彼はニヤリと漢臭い笑みを浮かべて何故かくるりと身体を反転させる。
呆気にとられるアルフレートを余所に、バースはその巨体に似合わぬ素早さで脱兎のごとく逃走を始めた。
「・・・・・・逃げた?」
周囲を見回すとこちらの騎士団と戦っていた奇襲部隊の兵達も、戦いながら少しずつ撤退を始めている。
明らかにおかしい。
これでは奇襲をする意味が無いではないか。
(追撃を誘っているのか? しかし行動があからさま過ぎる・・・これでは罠がありますよと敵に教えているようなモノではないか)
アルフレートは考える。
追撃を行うべきか、それとも罠を警戒して放っておくべきか・・・。
やがて決心をしたアルフレートは顔を上げると、部下達に指示を飛ばした。
「逃げる兵は追わなくてもいい。そのままドロア帝国に向けて進軍するぞ」
そして聖剣を腰の鞘に納刀し、愛馬まで駆け寄ってひらりとその背に飛び乗った。
(・・・問題ない。例え先ほどの伏兵達に背後から強襲されようが挟撃されようが対応できるだけの訓練は積んでいるのだから)
◇
「・・・どうやら追撃は無しか。その判断力は流石だな・・・追撃してくれりゃあこちらとしては楽だったんだが」
バース・アロガンシアは額の汗を拭いながら大きく息を吐いた。
腰の雑嚢から革袋で出来た水筒を取り出し、がぶがぶと中身を飲み込む。先の戦闘で火照った身体にぬるくなった水が染みいるようだった。
「・・・隊長、どうしましょうか」
騎士団が追撃してきた時に備えた罠の準備をしていた工作兵が、バースの話しかけてきた。
「あー、そうだな。とりあえずアイツらが国に着くまでの間にあと二、三回はぶつかるつもりだ。適当にちょっかいをかけて奴らを適度に消耗させる。その間にしびれを切らして追撃してきてくれりゃあ御の字なんだがな・・・」
そうは言いながらもバースには、騎士団が追撃してくるような事は無いだろうとわかっていた。
世界最強の軍団。
話には聞いていたが何ともやりづらい相手だ。
完璧に統制の取れた軍というものはこうも強くなれるのかと、敵ながら舌を巻いた。
そして・・・・・・。
バースは未だにしびれの残る己の両手を見下ろす。
先のアルフレートとの戦闘では適当に相手をしてすぐ逃げるつもりだったので、大斧を振るう力も七分程度であった。
しかしかの最強の騎士に攻撃を聖剣で捌かれた瞬間に感じたあの底知れぬ膂力。巨人の血を引くバースの半分ほどしか無いあの体躯の、どこにあんな力があるというのだろうか。
史上最強。
攻撃を捌かれただけで未だにしびれが止まらぬ手を握り締め、バースは一人ニヤリと笑った。
(おもしれえ、史上最強の名に偽りなしってわけか。・・・だからこそ俺が出張った甲斐があったってもんだぜ)
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