パーティーから追放された中年狙撃手の物語

武田コウ

文字の大きさ
76 / 83

家族

しおりを挟む
「・・・何だ、久しぶりだなシャル」




 しばらく会っていなかった気恥ずかしさからか、もしくはこんな危険な場所でかつての仲間と再会するという数奇な運命を思っているのか。微妙なやりずらさを表情に出して、シャルロッテとの距離感を計りかねている速見の困り顔を見て、シャルロッテは思わず小さく笑ってしまった。




 暖かい感情が胸に溢れてくる。




 懐かしいその顔。しばらくの年月を経て、少し印象は変わってしまったようだがその深くシワが刻みつけられた強面は変わらない。




 シャルロッテは親のように慕っていた中年男に優しく声をかける。




「ええ、久しぶり。会えて嬉しいわハヤミ」




 彼女の心からの言葉に速見はその強面を緩めて微笑んだ。




 夢の為とはいえ、速見には酷い事をした。それは決して許される事では無いだろう。だけどこんな顔で笑ってくれるのなら、またマルクと速見と三人で笑い合える日が来るのかもしれない。




 シャルロッテはそう感じたのだった。




「しっかしシャル、何でこんな危ない所にいるんだ? 見たところ怪我してるみたいだし・・・マルクも一緒なのか?」




 そう心配そうに問いかけながらスッと回復のポーションを手渡してくれる速見。シャルロッテは速見の口から出た、マルクという名前に少し心が痛むのを感じながらポーションを受け取って一気に飲み干した。




「・・・ハヤミ、実はね」






















「・・・なるほどな。そんな事があったのか」




 速見は自分と二人が別れてからの話を聞いて静かに頷いた。




 シャルロッテは今、あの勇者のパーティに在籍しているという。勇者パーティというのなら、それは冒険者の中でも最高峰Sランクのパーティだ。




 そういう意味ではシャルロッテは自分の夢を叶えたとも言える。祝うべき事だ・・・例えそれがマルクと供に歩めなかったとしても。




 マルクを置いて、自分だけが勇者パーティに入った事に対して負い目があるのだろうか。その事を話すときのシャルロッテはえらく辛そうに見えた。




 全ての話を聞き終えた速見は、シャルロッテの細い肩に手を置いて優しくニコリと微笑む。




「頑張ったんだなシャル・・・マルクと別れて今は辛いだろうがな、人生ってのは長いもんだ。今生の別れってわけでも無いし、また会いに行けばいいさ・・・それにほら、俺ともこうして会えただろう?」




「・・・でもハヤミ、私はアナタにもマルクにもとても酷い事をしてしまったわ」




「俺は気にしてないが・・・まあマルクに謝りたいんならこの遺跡から帰ったらしばらく休みを貰ってマルクに会いに行くといい。・・・俺も一緒に行ってやるからさ」




「・・・本当に? ハヤミも一緒に行ってくれるの?」




 シャルロッテの言葉に深く頷く速見。




「ああ、俺の主様もそれくらいは許してくれるだろうしな・・・まあ、その為にはまずこの遺跡から生きて帰らないといけないわけだが」




 鋭い視線で周囲を見回す速見。




「一人じゃ危険だし、しばらくは俺たちと一緒に行動しようかシャル」




「ええ、お願いするわ。・・・それで、その人は?」




 先ほど自分に向けて矛を向けた、漆黒の鎧を纏った騎士を恐る恐る見るシャルロッテ。




「・・・ああ、コイツは俺の今の職場の後輩ってとこか・・・名前はフェアラートってんだ。お前に危害は加えさせないから安心しろ」




 今の職場・・・。




 そう語る速見には、これ以上聞いて欲しくないという雰囲気があった。




 シャルロッテは速見の服の袖をそっとつかむ。




「・・・ハヤミ、ここから無事に帰ってマルクと会えたなら、その時はアナタの事も聞かせてね?」





















しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ハイエルフ少女と三十路弱者男の冒険者ワークライフ ~最初は弱いが、努力ガチャを引くたびに強くなる~

スィグトーネ
ファンタジー
 年収が低く、非正規として働いているため、決してモテない男。  それが、この物語の主人公である【東龍之介】だ。  そんな30歳の弱者男は、飲み会の帰りに偶然立ち寄った神社で、異世界へと移動することになってしまう。  異世界へ行った男が、まず出逢ったのは、美しい紫髪のエルフ少女だった。  彼女はエルフの中でも珍しい、2柱以上の精霊から加護を受けるハイエルフだ。  どうして、それほどの人物が単独で旅をしているのか。彼女の口から秘密が明かされることで、2人のワークライフがはじまろうとしている。 ※この物語で使用しているイラストは、AIイラストさんのものを使用しています。 ※なかには過激なシーンもありますので、外出先等でご覧になる場合は、くれぐれもご注意ください。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

裏スキルで最強異世界攻略~異世界召喚されたのだが、勇者じゃないと追い出されたので新しい国を造りました~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
いつものようにヤンキーに絡まれて逃げていたら、いつの間にか異世界召喚されてました。でも、スキルが『農民』しかなかったから、いらないと追放されました。 エブリスタ、カクヨム、ノベリズム、ノベルアップ、小説家になろうにも掲載しています。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル 14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり 奥さんも少女もいなくなっていた 若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました いや~自炊をしていてよかったです

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...