パーティーから追放された中年狙撃手の物語

武田コウ

文字の大きさ
78 / 83

プロテクション

しおりを挟む
「ギュルォオオ!!」




 石で出来た尻尾がしなり、鞭のようにして女騎士アンネの頭上に迫り来る。その身体の大きさ故攻撃の範囲が広く、そして以上なスピードで繰り出されたその一撃はどうやら回避が間に合いそうに無い。




(どうする? 一か八か尻尾を切断してみるか・・・)




 先ほどのストーンゴーレムも強敵だった。その上位の存在だとしたら尻尾を切断するのは難しいかもしれない。




 そう考えながらも剣を構えたその瞬間、背後からカテリーナの声が聞こえた。




「”プロテクション”」




 プロテクションの奇跡がアンネの目の前に展開される。




 ストーンドラゴンの尻尾はその透明な防壁に衝突して止まった。




「ありがとうカテリーナ!」




 アンネはサポートをしてくれたカテリーナに礼を言うと、剣を構えて攻撃後の隙だらけなストーンドラゴンに向けてかけだした。




(まずはその足を切り落として機動力を削ぐ!)




 この場所は十分広く作られているとはいえ屋内である。故にいかにドラゴンを模して作られたゴーレムとはいえ、飛ぶことが出来ないとみたのだ。




 素早く踏み込んだアンネは構えた剣を横薙ぎに振り払い・・・ストーンドラゴンの足に刃が触れる直前に、何も無い空間にその刃が阻まれた。




「・・・これは!?」




 見覚えのある現象。




 そう、それは先ほどカテリーナが行使したプロテクションの奇跡・・・。




 ストーンドラゴンがその巨大な前足で立ち尽くしたアンネを殴りつける。アンネは咄嗟に剣で防御の姿勢を取るが、数トンもの体重が乗せられたドラゴンの一撃である。もの凄い勢いで吹き飛ばされたアンネは壁に激突してモウモウと土煙があがる。




 追撃に出ようとしたストーンドラゴンの気を引くように、タケルが剣を取ってその背後から斬りかかる。




 しかしやはりと言うべきか、先ほどのアンネの一撃と同じようにドラゴンの身体の手前で剣は阻まれてしまう。




「・・・っと、やっかいな。常にプロテクションの奇跡を展開しているのかい?」




 困ったような声を出してタケルはひょいとバックステップで距離を取った。先ほどまでタケルがいた空間を、ストーンドラゴンの尻尾が通り過ぎる。




 タケルがストーンドラゴンの気を引いている間に、カテリーナは壁に叩きつけられたアンネの元に駆け寄って治療を開始する。




「ぐっ・・・カテリーナ、奇跡に精通しているお前にこそ聞きたいんだが・・・プロテクションはどうやれば攻略できる? 何か弱点は無いのか?」




 アンネの言葉に、カテリーナは眉をひそめて考えた。




「・・・プロテクションは上位の奇跡です・・・これを物理的な攻撃で破る事は不可能に近いでしょう。・・・・・・弱点と言えるかはわかりませんが、プロテクションの奇跡を行使する為にはかなりのエネルギーが必要な筈です。大司教様とて長時間プロテクションを維持する事はできません。それほど消耗の激しい奇跡なので、あの石のドラゴンもいつまでもプロテクションを張り続ける事はできない筈ですが・・・」




 しかしカテリーナの言葉は、自信なさげに尻すぼみに小さくなっていく。




 そもそも教会にのみ伝わる神聖なる奇跡を、魔術の産物であるゴーレムが行使できる事が異常なのだ。そんな異常な相手を常識で計ったところでどうなるというのだろう。




「・・・ふう。治療ありがとうカテリーナ。つまりはプロテクションが切れるまで攻撃し続けるしか無いって事か・・・・・・ゴーレム相手に持久戦とは笑ってしまうほど分が悪いな」




 そう言って立ち上がったアンネの顔は、腹をくくった戦士のソレだった。

























 長い長い死闘。




 その末にアンネの鋭い剣撃がやっとストーンドラゴンの胴体を捕らえる。




 致命傷にはなり得ない浅い傷をつけただけだったが、それでもアンネの一撃がプロテクションの防護を突破したのだ。




「タケル! 奴のプロテクションが剥がれかかっているぞ!」




「ほいさ! やっとオイラたちの番だぜい!」




 アンネの言葉に嬉しそうな声を上げたタケルは、左手を上方に掲げる。




「”破魔の法其の一 竜滅の矢”」




 タケルの身体を囲むように展開された紫色に発光する矢が十本。振り下ろされた左手を合図に一斉にストーンドラゴンへと襲いかかる。




 矢はプロテクションに阻まれる事も無くドラゴンの石の身体に突きささり、ストーンドラゴンはその巨体をふらりとよろめかせた。




「トドメだ!」




 ドラゴンの頭上まで跳躍したアンネが剣を高々と振り上げる。




 狙うは首。一刀両断して確実に仕留めて見せる。




 振り上げられた刃が下ろされようとしたまさにその瞬間、よろめいていたドラゴンの顔がアンネの方を向き、その巨大なアギトをカパリと開いた。




 そこからバチバチと音を立ててスパークが巻き起こり、次の瞬間にはアンネにめがけて一直線に電撃が放たれる。




「ッギャァア!!」




 空中で避ける事もできずにその攻撃をまともに受けたアンネは苦悶の声を上げて地に落ちる。




 黒焦げたその身体からはプスプスと煙が出ていた。




「アンネさん!?」




 すぐに治療をせんと駆け寄るカテリーナ。




 タケルは悠然と佇むドラゴンを見上げて呆然と呟いた。




「・・・馬鹿な、今のはサンダーボルトの魔法だ」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

異世界配信〜幼馴染みに捨てられた俺を導く神々の声(視聴者)

葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。 だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。 突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。 これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?

サクラ近衛将監
ファンタジー
 会社員の俺が交通事故に遭いました。二か月後、病院で目覚めた時、ほぼ全身不随。瞼と瞳が動かせるものの、手足も首も動かない。でも、病院で寝ると異世界の別人の身体で憑依し、五体満足で生活している。また、異世界で寝ると現代世界に目が覚めるが体の自由は利かない。  睡眠の度に異世界と現代世界を行ったり来たり、果たして、現代社会の俺は、元の身体に戻れる方法があるのだろうか?  そんな男の二重生活の冒険譚です。  毎週水曜日午後8時に投稿予定です。

七億円当たったので異世界買ってみた!

コンビニ
ファンタジー
 三十四歳、独身、家電量販店勤務の平凡な俺。  ある日、スポーツくじで7億円を当てた──と思ったら、突如現れた“自称・神様”に言われた。 「異世界を買ってみないか?」  そんなわけで購入した異世界は、荒れ果てて疫病まみれ、赤字経営まっしぐら。  でも天使の助けを借りて、街づくり・人材スカウト・ダンジョン建設に挑む日々が始まった。  一方、現実世界でもスローライフと東北の田舎に引っ越してみたが、近所の小学生に絡まれたり、ドタバタに巻き込まれていく。  異世界と現実を往復しながら、癒やされて、ときどき婚活。 チートはないけど、地に足つけたスローライフ(たまに労働)を始めます。

ハイエルフ少女と三十路弱者男の冒険者ワークライフ ~最初は弱いが、努力ガチャを引くたびに強くなる~

スィグトーネ
ファンタジー
 年収が低く、非正規として働いているため、決してモテない男。  それが、この物語の主人公である【東龍之介】だ。  そんな30歳の弱者男は、飲み会の帰りに偶然立ち寄った神社で、異世界へと移動することになってしまう。  異世界へ行った男が、まず出逢ったのは、美しい紫髪のエルフ少女だった。  彼女はエルフの中でも珍しい、2柱以上の精霊から加護を受けるハイエルフだ。  どうして、それほどの人物が単独で旅をしているのか。彼女の口から秘密が明かされることで、2人のワークライフがはじまろうとしている。 ※この物語で使用しているイラストは、AIイラストさんのものを使用しています。 ※なかには過激なシーンもありますので、外出先等でご覧になる場合は、くれぐれもご注意ください。

処理中です...