神見習いになった俺は見聞を広める為に異世界に放り込まれる

夢幻成人

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勇者と魔王と勇者と聖女編

第15話 ゼニスの贈り物

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 王と謁見してから王宮の中を案内してもらい、

中庭から見た風景は、街を一望できた。

この国の素晴らしいところなどを延々と説明されたのは、

少々うんざりしたが、客人用の部屋を用意してもらったのは

本当に助かった。



 「ふぅ……やっと、終わったか……なんだか疲れた」

「まだ、こっちに来て初日なのに忙しすぎましたね」

「あぁ……そうだった! そういえば、まだ、異世界に来て一日目だったな」

「ところで、イノ、私が勇者で本当に良かったのですか?」

「何かと大臣が邪魔してくるし、向こうも勝手に思い込んでるんだから、

好きにさせておけば、良いんじゃないのかな?」

「イノが良いのでしたら、このまま勇者をやりますが、

あんまり、興味無さそうですね?」

「正直、歓声はうれしかったが、見え透いたお世辞が耳障りだったからね……

それに魔王倒せたのはティコアのおかげだし、間違ってはいないでしょ?」

「そうですか……」

会話が途切れて、二人の間に気まずい空気が流れた。

「少し眠いが、ゴンタに餌をやらないと……と言っても、あのサイズだからな……

大賢者に相談してみるか」

理由をつけて部屋を後にしようとする。

「私が餌をあげに行きますけど」

「大丈夫だよ、俺の飼い犬なんだから」

城から出ると街は、人々の往来でにぎわっていた。

悲しいことに、誰一人、イノに歓声を上げる者はいなかったが、

ティコアがあれだけ、目立ったのだからしょうがないだろ。



 外壁の門扉のすぐそばには、ゴンタが静かに眠っていた。

主人の足音を聞きつけ、顔あげてこちらを確認する。

「遅い! ワイお腹ぺこぺこ、早くご飯!」

「いや、まだ準備すらしてないんだな」

「ワイの今日のご飯抜きなのか?あんなに頑張ったのに……」

「違う違う、お前の食える量を確保できないんだよ!」

「お肉、ないのか?」

「ちょっと、考えがあるから、森まで乗せていってくれ」

「お散歩♪お散歩♪」

言葉が話せるようになっても、やっぱり、ゴンタは犬だな。



 ゴンタに揺られながら、森を目指していた。

外壁から魔王がいたところまでは、ティコアが爆撃で

きれいな平原へと変えていた。

「大賢者!」

ゼニスからの応答はなかった。

「大賢者!」

何度呼びかけても返事が返ってくることは無かった。

これは少々当てが外れたな……しかたがない、

第二プランとするか。

「ゴンタ!」

「何だ?ご主人」

「下を見てみなさい」

「下?」

ゴンタが見下ろすと、そこにはお肉が転がっていた。

「ご主人、お肉いっぱい!」

「食べていいぞ! ただし、死んでるのだけな」

「うん、うん」

地面にはティコアに銃撃された、怪物たちの無数の死体が転がってる。

爆撃されたあたりの死体は跡形も無く、残っていないかったが、

森にはまだ、オークやオーガーなどの死体が山ほどあった。

「ご主人!」

「どうした?もういいのか?」

「ワイ、歩きながら食べるの大変、一ヵ所に集めて!」

この犬は、言葉が通じるようになってから、生意気になったように

感じるが、これは言葉を覚えてしまった弊害だろうか……

「わかった、わかった」

イノは手をかざし、死体が一ヵ所に集まるのを想像する。

魔法陣が展開され、風が死体を巻き上げる。

ドサッ! ドサッ!

空から次々に振ってくる死体の前で、座りながら待つゴンタ。

「アタリ……アタリ……ハズレ」

オーク以外はハズレらしい。

森の清掃とゴンタの餌で一石二鳥である。

イノは、我ながら素晴らしい考えだと思っていた。

「ウォン、ウォン、フーフー」

「おい、ゴンタ! 何してるんだ?」

「穴掘ってるの」

「うん?何で穴なんか掘ってるんだ?」

「後で食べるから」

そういうと、ゴンタは残した死体を穴の中に埋葬……

いや、隠してしまった。

どうやら、神獣と言っても、犬に変わりはないらしい。

「もういいなら、帰るぞ!」

ゴンタに揺られながら、城を目指して進み始める。

今日は良いけど、明日しのいだら、ゴンタの飯どうしようかな?

イノの不安は旅の行き先よりも、ゴンタの飯の事で頭が一杯であった。



 ゴンタを外壁に待機させると、イノは城へと向かう。

自分の部屋に戻って来た時は、すでに日も暮れて夜になっていた。

イノはベッドに倒れこみ、身体を優しく包まれ、ホッとしていた。

疲れがどっと出て、意識が飛びかけた時、部屋をノックする音が聞こえてくる。

「どうぞ!開いてますよ」

「あの、イノ、今手がふさがってるのでドア開けて頂けませんか?」

出てみると、でかい箱を抱えたティコアが立っていた。

「どうしたんだ?」

「ゼニス様からお手紙と荷物が送られてきて、

イノにお渡ししろと」

「さっき呼んだけど、全然反応がなかったぞ」

「私が話した時は、何か忙しい感じでしたね」

荷物を受け取ると、ティコアは部屋に戻って行った。

受け取った荷物を床に置き、開封してみることに決める。

「人の呼び出しに出ないくせに、荷物だけ送ってきやがって」

ブツブツいいながら、箱を開けてみると、中から女子高生の制服が出てきた。

「はっ?」

紺色の上着とスカート、この白いのは何だ?

手に取ると、それは紛れもなく女性の下着だった。

そして、下には裸の赤ん坊が健やかに眠っている。

うん? あの爺は本当に何を考えているんだ?

「大賢者!」

やはり、応答がない。

とりあえず、この制服と下着を何とかしないと、

ティコアに変な誤解をされそうだ。

部屋の中で下着を持っていると、部屋のドアが開いた。

「あの、イノ、良かったら……」

「あっ……ティコア」

ドアを開けたティコアの視線が、イノの手のところで止まる。

「あの……その、イノにそんな趣味があったとは露知らず、

いきなり開けてごめんなさい」

壮大な勘違いをされ、勢いよくドアを閉められると

赤ん坊が泣きだしてしまった。

「あぁ、踏んだり蹴ったりだ……ごめんごめん。驚いちゃったね

大丈夫、大丈夫」

必死に泣き止まそうとするイノ。

よくよく見たら、この子、女の子か。

男としては、見慣れない股を凝視するイノであったが、

「ちょっと、いつまで、私の裸見続けてるのよ! この変態!」

赤ん坊が口を聞いてきた。

「えっ?えっ?えっ?喋った……」

生後半年程度に見える赤ん坊が、突然しゃべり始めたのだ。

それと同時に再度、勢いよく開くドア。

「イノ、やっぱり容認できません。我が主が、下着愛好家などと

知れたら、威厳が保てなくなります。先ほどの物は私があず…」

ティコアの視線が、今度は裸の赤ん坊をとらえる。

「イノ!!!!!」

俺は果たして弁解できるのだろうか?

そして、今日眠れるのだろうか?

あの爺は一体全体、何を考えているのだろうか?

この日イノは、必死に事情を説明する事になるのであった。
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