清色恋慕 〜溺れた先は異世界でした〜

月峰

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第一章

5  〜私は、どのぐらい寝てたんでしょうか…

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 智美が考えに耽っていると、補佐官タンザが話し出した。

『過去の記述を調べましたが、今までにも青神泉から来た別盤者は数百年に何名かおりましたが、いつも一人でしたので、今回の二人というのも過去に例がないです』

 補佐官タンザの言葉に、アル皇子はミエル総代に問いかける。

『ミエル、青龍様はなんと』

『朝の禊の時に啓示された時は、清き乙女が来るとの事のみだけ…』

 ミエルはそう言った後、まだ何か言いたそうだったが、何も言わなかった。

『さて、どちらかが乙女なのか、はたまたどちらも乙女の資格があるのか、これで判断がつくかはわかませんが、こちらへ来た時の状況を、お話し願えますか?サトミ様』

「だからそれは!!愛が話し──」

『お前の話しは昨日聞いている』

 何も言いださないミエルに痺れをきらした、タンザが状況を聞こうと智美に向かって話を聞こうとしてるのに、愛子があせったように口出してきたが、そこに更に遮るように、強い口調のカイ皇子の言葉に愛子は押し黙った。

「私は、どのぐらい寝てたんでしょうか…」

『サトミ様は、一晩気が付かれませんでした。アイコ様は先にお目覚めになられたので、皇家の秘宝の水入り水晶にて、先にお話をうかがってはおりますが、サトミ様のお話も聞きませんと』

 智美の問いにタンザが答えると、タンザは愛子を見ながら困ったように言った。

『アイコ様、先ほども言いましたが、そちらの秘宝はお貸ししただけのものですので、差し上げたものでは無いのですよ。カイ王子から青魔晶セイマショウをお貸ししていただけたからいい様なものの、こちらの言い分を聞いていただけないのは困ります』

「えー、話せ無いのは愛子が困るし~」

 タンザは、最初に言い合いをしていた事の結論に納得していなかったことを、愛子に言い募るが、どこ吹く風のような態度の愛子に、タンザの顔が怖くなる。

「私も、申し訳ありませんが話すのに必要なので、こちらを借りさせていただきます。あ、あの、私がこちらに来た時の話ですよね」

 なんとなく気まずい雰囲気にいたたまれなかったので、智美は話の内容から察して耳に着けてもらったピアスが話すために必要な青魔晶なのだろうと思い、貰ったとは思っていない借りましたよ発言をして話し出した。

「船旅で、甲板で月見をしていたら、同じ場所で手塚さんが…ご同伴の方と言い争いをしておりまして、相手方が強引な事をしようとしたのでつい声をかけたら、バランスを崩した手塚さんが私にぶつかって、私ごと海に落ちて、彼女にしがみつかれて溺れそうになったところを、カイ皇子に助けられたと思うのですが、水中で気を失ったので、最後はちょっとあやふやですが、あの時は助けて頂きありがとうございます」

 智美は、愛子が男性と言い争ってたとは言いずらく、其処は濁した言い方になったが、愛子のせいで溺れそうになった事はまでは言わずにはおれず、つい嫌味のように言ってしまった。
話してる途中で助けてもらったという事を思い出したが、キスされた事も思い出して、つい恥ずかしさのあまり記憶が曖昧だと言ってしまったが、お礼は言わないといけないと思いなおし礼を口にした。

『ああ、あれは俺だ。龍泉リュウセンを大量に飲んでしまいそうだったから、閉じさせて呼吸コキの魔法を使った』

 こともなげに、さらりとカイ皇子は言った。

 その言葉に反応したのは、意外にも魔法医局長のジーサっだった。

『龍泉飲んだのか!!カイ皇子そんな事言ってなかったじゃないか!』

『少しだ、俺が処置したから大丈夫だ』

 何事もないと涼しげに言うカイ皇子をベジャミジーサは眉をひそめて見た。

『カイ皇子が?…まあ、いい…サトミ様手を拝借願えるか』

『ジーサ』

 椅子を回って、智美に近付きながら手をとろうとするジーサに、なぜか咎める様にカイ皇子が名を呼ぶ。
『必要なことです。良いかな。』

「え、ええ」

 ジーサは魔法医局長という事だから、脈でもとるのかとなんら不思議に思わずに、智美は差し出された手にそっと自分の手を置いた。

「えー、愛は~」

『アイコ様は昨日みましたので、大丈夫ですよ』

「愛子じゃなくて、愛って呼んで欲しいのに~」

 愛子の横槍にも、気にせず返事はしていたが、最後の愛子の言葉には苦笑いをする。
ジーサの目線は手のままだ、手を見てるというより、何かを探っている様にどこも見ている訳ではないようだ。

『大丈夫の様です。何の影響も残ってませんから』

 しばらくして安堵したように、ジーサが言うと、アル皇子が困った様に話し出した。

『お聞きする限り、お二方とも女神の啓示があったようではないので、判断が付きませんね』

「あの、ためしに二人ともあいの泉に御加護だかをやってみるわけにはいかないのですか?」

 疑問に思った智美は素直にそう聞いてみた。

 その智美の質問に第一王子は言葉に詰まる。聞いちゃいけなかったかなと思ったとき、返事は青神泉使総代ミエルから発せられた。

『ご加護は、言祝ぎなのでこちらの言葉が話せないとできません。
 別盤の方々はこちらの言葉の全てを聞き取ることも、発声することも出来ないようですので、…ある物を使って儀式をしてもらえばこちらの言葉を話せ、聞く事は出来ますが、言祝ぎの加護までもを使えるようにするのに使うある物が一つしかありませんので、使えばなくなるものですから、試しはできないのですよ』

「え、話せてるじゃん。意味わかんないこと多いけど」

 あっけらかんと、愛子が言うが、困ったように眉を寄せながらミエルは説明する。

『話せてはいません。魔法で言葉の意味が通じ合ってるだけですので、私も貴方のおっしゃってる事が分からない事が多いですよ』

 たぶん嫌味なんだろうなと、智美は思ったが通じてないのか愛子はきょとんとしている。

 初めに比べて、愛子があまり言葉をはさんでこないと思っていたが、意味が分かってなかったのかと納得する。

『青龍様におうかがいを当てた方がいいのでしょうが、女神様の元へ参られてしまいましたので今おうかがいを立ててもご返事いただけなく…』

 ミエルの言葉に、アル皇子は、ちょっと考えてから言葉をつないだ。

『いま、国皇も地方の視察に出ていてしばらく戻らないので、国皇にもおうかがいもたてられない、あいの泉は見た限りでは、まだ何の兆しもないと報告が上がっている。仕方がない事だが、青龍様のご返事を気長に待つしかない様だ』





──────────
後書き

すみません(?)しばらく、エロは有りません。
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